僕の周りの人達には秘密がある

第7章 時の思い出

主の願い

｢ば、爆発！？｣
私は仰向けに倒れたため、ビルが爆発した瞬間を見た。バリバリバリッ！と言う凄まじい窓ガラスが割れる音が辺りに響き、ガラスの雨が降ってきた。その雨はどれも先が尖っていて私を押し倒した霊也に続々と刺さっていった。サクッという音が私の耳に響いた。
｢霊也！｣
私はガラスの雨から守ってくれた霊也を抱きしめた。
｢…私のために無理しないでよ…。｣
霊也の背中には大量にガラスが刺さっていて、血は止まることなく流れていた。この血の量…私には分かる。早く処置しないと…霊也が死ぬ…。幸い、ビルが爆発した直後からパトカーと救急車のサイレンはなっていた。ここに来るのもあと少しだ。
｢霊也！？絶対に目を瞑っちゃダメよ！｣
霊也はかろうじて意識はあった。抱きついた私の手を離して握った。
｢おい…せ、なか…にてを…まわ…すな…。ガラス、が…ささる…、ぞ。｣
荒々しい呼吸をする霊也。その手を私は更に強く握り返した。
｢バカッ！貴方が助かる方法を選びなさいよ！主人を守るのも大事だけど、貴方が大怪我を負ったらその間、誰が私を守るのよ！｣
涙腺は脆く、涙は溢れた。そんな私を霊也は見て、
｢大丈夫…だよ。これ、くらい…。銃で撃たれる…よりマシだ。｣
今にも壊れそうな笑顔を必死に浮かべて、彼は言った。
｢主人が、無傷で…本当に良かった。｣
そして目を瞑ろうとする霊也に私は大声で叫んだ。
｢目を瞑るな！私を見て！｣
私が叫んだと同時に、救急車が来た。
｢大丈夫ですか！？車に乗せます！貴女は彼の知人ですか？｣
｢はい！私も連れていってください！彼の彼女です！彼の恋人です！｣
ここで主従関係なんて言ったら困惑を招いてしまう…そう思った私は恋人を名乗ることにしたのだった。





｢怪我人の関係者の方ですか？｣
手術室から治療を担当した先生が出てきた。
｢はい！霊也は大丈夫ですか！？｣
先生は汗を拭って言った。
｢後数秒処置が遅れてたら後遺症が残ってましたよ。後頭部にも小さなガラスの破片が刺さっていました。｣
先生は力を抜いてニッコリと笑って言った。
｢にしても…彼は余程あなたの事が好きなのでしょうね。あなたが無傷ということは、彼はあなたを庇ったのでしょう。良い彼氏を持ちましたね。｣
その先生の言葉に、私は恥ずかしくなって下を向くのだった。








それから私はずっと霊也の傍にいた。寝ている霊也の手をずっと握っていた。


｢…未咲紀。…未咲紀っ。｣
そんな声が聞こえたと同時に私は目を覚ました。どうやら寝てしまっていたようだ。
｢…よく眠れたかい？お嬢様。｣
前を向いた。そこには笑顔の彼がいた。私は何故か涙が止まらなかった。
｢ど、どうした未咲紀？｣
｢バカッ！どれだけ心配したと思ってるの！主の許可なく勝手に自分だけ犠牲になるな！｣
私はグイッと霊也を近付けた。
｢私は霊也が大好きなの！主としても、1人の女としても！だから…｣





未咲紀の顔は真っ赤で、目には涙が溢れていた。
｢1人にしないで！1人で解決しようとしないで！自分だけが不幸になる選択をしないで！｣
一息に吐き出す未咲紀の魂の叫びを僕は無言で受け止めた。はぁはぁ、と荒々しい息をついた。未咲紀は深呼吸をして、心を落ち着かせていた。僕はその様子を黙って見ていた。


そして未咲紀は再び息を吸って言った。
｢ずっと傍にいて…。





私と…付き合ってください。｣