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第4章 雨流射 霊夏の秘密
最悪の始まり 【第4章 完】
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夢を、見ていた。みんなを助けて、救って、最後には僕が死ぬ。そんな夢を。その夢の僕は、まるで何かを背負っているようだった。みんなを救うという使命感を持っていた。でも、それ以上のものも背負っていた。僕は夢の僕じゃない。でも、夢の僕と僕は同じだ。僕も夢の僕と同じで…背負っているものが確かにある。
夢の世界の僕は死んだ。死因は分からない。自殺か、他殺か。未来の暗示なのかもしれない。でも、だとしても、僕は死ぬ訳にはいかない。まだ、約束を果たせたとは言えない。霊夏を助けることが出来たのだろうか…。確か霊夏は深い秘密があったはず。まぁとりあえず起きよう。さぁ、目を覚ませ。何故寝ているのか、その理由は分からないが、そろそろ起きる時間だ。僕は夢の中、誰もいない空間で起きるために集中するのだった…。
目が覚めた。そこは僕の家じゃなくて、見慣れない部屋だった。
「病室か?」
何で病室にいるんだろう…。というか…。
「僕は…」
「お兄ちゃん!?起きたの!?」
僕が独り言を呟く前に、誰かの声で遮られた。
そこには、
お兄ちゃんは私を救ってくれた。あの男を倒し、そして私を庇って撃たれた。
私は、お兄ちゃんが搬送された後、警察に事情を全て話して、先生からお兄ちゃんの容態を聞いていた。
「左肩に銃弾。腹部にも銃弾が残っています。今から緊急手術を行いますが、出血が酷いため助かる確率は五分五分でしょう。」
それと、と先生は前置きを言って、
「倒れた時に頭を打ったようです。それが、記憶を司る場所なんです。だから…」
「彼はもう、雨流射霊也では無い可能性があります。彼に記憶は…残って無いかもしれません。」
私は、手術中のランプが着いた手術室の前の椅子に座っていた。
「お兄ちゃんが助かりますように…」
と、私は祈ったのである。
やがてランプは消え、中から先生が出てきた。
「先生!お兄ちゃんは…。」
私が涙混じりに聞くと、
「大丈夫、手術は成功したよ。それに、脳も検査したんだが、別に出血してる訳でもなかった。」
「良かったぁ。」
「でも、」
でも、と先生は言って
「何か、嫌な予感がするんだよね。長年手術や検査してるけど、こんなに胸騒ぎがするのは初めてだよ。霊夏さんも気をつけて。私の予感は当たるんだよ。良いことも、悪いことも。」
と、言い残して先生は廊下を歩いていった。何にせよ、お兄ちゃんが無事ならそれでいい。私はお兄ちゃんのスマホを使って隼歌さん達を呼ぶのだった。
皆が病院に来た。みんなパニックになっていた。お兄ちゃんは、私を救ったように、隼歌さん達も救ったのだろうか…。いや、きっと救われたのだろう。みんな、立ち直ったみたいな顔してるし、こんなにお兄ちゃんを心配しているのだから…。私は未だパニックになっている隼歌さん達に
「落ち着きましょう!」
と言った。
私は一通り説明したあと、
「今からみんなで看病しましょう!」
と言って病室に向かうのだった。
「お兄ちゃん!?起きたの!?」
「霊也君!大丈夫!?」
「雨流射君!痛くない!?」
「霊也君…生きてて良かった…。」
お兄ちゃんはキョトンとしていた。私は、胸騒ぎを感じた。嫌な予感がする。お兄ちゃんは誰が見ても愛想笑いだと思うような笑顔で、私達を順番に眺めた。そしてもう一度愛想笑いを浮かべて、言った。予想外の言葉を。私達が絶望する、そんな、最悪な言葉を。
「ごめんなさい。」
「貴女たちは…誰ですか?」
第4章 ~完~
次章 第5章 雨流射 霊也を取り戻せ
夢の世界の僕は死んだ。死因は分からない。自殺か、他殺か。未来の暗示なのかもしれない。でも、だとしても、僕は死ぬ訳にはいかない。まだ、約束を果たせたとは言えない。霊夏を助けることが出来たのだろうか…。確か霊夏は深い秘密があったはず。まぁとりあえず起きよう。さぁ、目を覚ませ。何故寝ているのか、その理由は分からないが、そろそろ起きる時間だ。僕は夢の中、誰もいない空間で起きるために集中するのだった…。
目が覚めた。そこは僕の家じゃなくて、見慣れない部屋だった。
「病室か?」
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「僕は…」
「お兄ちゃん!?起きたの!?」
僕が独り言を呟く前に、誰かの声で遮られた。
そこには、
お兄ちゃんは私を救ってくれた。あの男を倒し、そして私を庇って撃たれた。
私は、お兄ちゃんが搬送された後、警察に事情を全て話して、先生からお兄ちゃんの容態を聞いていた。
「左肩に銃弾。腹部にも銃弾が残っています。今から緊急手術を行いますが、出血が酷いため助かる確率は五分五分でしょう。」
それと、と先生は前置きを言って、
「倒れた時に頭を打ったようです。それが、記憶を司る場所なんです。だから…」
「彼はもう、雨流射霊也では無い可能性があります。彼に記憶は…残って無いかもしれません。」
私は、手術中のランプが着いた手術室の前の椅子に座っていた。
「お兄ちゃんが助かりますように…」
と、私は祈ったのである。
やがてランプは消え、中から先生が出てきた。
「先生!お兄ちゃんは…。」
私が涙混じりに聞くと、
「大丈夫、手術は成功したよ。それに、脳も検査したんだが、別に出血してる訳でもなかった。」
「良かったぁ。」
「でも、」
でも、と先生は言って
「何か、嫌な予感がするんだよね。長年手術や検査してるけど、こんなに胸騒ぎがするのは初めてだよ。霊夏さんも気をつけて。私の予感は当たるんだよ。良いことも、悪いことも。」
と、言い残して先生は廊下を歩いていった。何にせよ、お兄ちゃんが無事ならそれでいい。私はお兄ちゃんのスマホを使って隼歌さん達を呼ぶのだった。
皆が病院に来た。みんなパニックになっていた。お兄ちゃんは、私を救ったように、隼歌さん達も救ったのだろうか…。いや、きっと救われたのだろう。みんな、立ち直ったみたいな顔してるし、こんなにお兄ちゃんを心配しているのだから…。私は未だパニックになっている隼歌さん達に
「落ち着きましょう!」
と言った。
私は一通り説明したあと、
「今からみんなで看病しましょう!」
と言って病室に向かうのだった。
「お兄ちゃん!?起きたの!?」
「霊也君!大丈夫!?」
「雨流射君!痛くない!?」
「霊也君…生きてて良かった…。」
お兄ちゃんはキョトンとしていた。私は、胸騒ぎを感じた。嫌な予感がする。お兄ちゃんは誰が見ても愛想笑いだと思うような笑顔で、私達を順番に眺めた。そしてもう一度愛想笑いを浮かべて、言った。予想外の言葉を。私達が絶望する、そんな、最悪な言葉を。
「ごめんなさい。」
「貴女たちは…誰ですか?」
第4章 ~完~
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