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プロローグ
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僕は夢を見ていた。亡くなった母さんと幼い僕との思い出の夢を。
「有希…。あなたは弟の面倒を見て偉いわね。」
母さんは彼の頭を撫でた。
「うん!僕、将来面倒を見る仕事をするんだ!」
大きくなった僕は今そんな夢を見ている。小さい僕と母さんを数歩離れた所から見ている。
「叶ったらいいね。」
ぼんやりと視界が濁ってきた。…目覚めの時だ。
「うん!僕は絶対ーーー!」
最後の言葉を聞く前に、僕の意識は消えるのだった。
「…ん。…さん。…姉さん!」
「うわっ!っと。なんだサツキか…。おやすみ。」
僕は弟を見るや否や再び眠ろうとする。しかし、
『バチンッ!』
「痛ったぁ!!!」
頬を叩かれて目が覚めてしまった。
「何するんだよ!?サツキ!」
僕は痛む頬を擦りながら弟に抗議をする。
「姉さんが眠ろうとするのが悪いんだろ!」
弟は目を吊り上げて僕を睨む。こ、怖いぞ弟よ。
「…すみません。」
僕は素直に謝った。
「ほら、朝ごはん出来てるから。先食べとくよ。」
そう言って弟は台所に行った。僕はタンスから服を取って着替え、洗面所に向かった。
僕の名前は双沢 有希(ふたさわ ゆうき)。男だ。今、不思議に思った人もいるだろう。何故お前の弟は『姉さん』と呼んでいるんだ、と。サツキ曰く、
「女の子っぽいから。」
だそうだ。失礼な話だ、とも言えない。なんせ街を歩いていたらナンパに会うことも珍しくない。もちろん相手は男。学校でも他クラスの男の奴に告られたこともある。その告白は丁重にお断りしたが…。そしてもう1つ。誰にも言えない秘密がある。この秘密は母さんしか知らない。弟も知らないのだ。ふ~と息をつく。鏡の前の自分を見る。
「さて、今日から仕事…だな。頑張るぞ。」
鏡の自分に言う。僕の父さんは僕が生まれたすぐに亡くなったらしい。そして母さんも僕が10歳の時に死んでしまった。そして僕は今日から高校1年生だ。何とか僕は推薦を取り、学費を免除してもらう感じになった。でもバイトをしなきゃ生きれない。これまでは親戚がお金を送ってくれたが、今日から高校生。自分で稼げという手紙が先週届いたばかりだった。サツキには言ってない。心配をかけさせたくない。僕はサツキの面倒を見る。幼い僕の夢でもあるのだから。
「有希…。あなたは弟の面倒を見て偉いわね。」
母さんは彼の頭を撫でた。
「うん!僕、将来面倒を見る仕事をするんだ!」
大きくなった僕は今そんな夢を見ている。小さい僕と母さんを数歩離れた所から見ている。
「叶ったらいいね。」
ぼんやりと視界が濁ってきた。…目覚めの時だ。
「うん!僕は絶対ーーー!」
最後の言葉を聞く前に、僕の意識は消えるのだった。
「…ん。…さん。…姉さん!」
「うわっ!っと。なんだサツキか…。おやすみ。」
僕は弟を見るや否や再び眠ろうとする。しかし、
『バチンッ!』
「痛ったぁ!!!」
頬を叩かれて目が覚めてしまった。
「何するんだよ!?サツキ!」
僕は痛む頬を擦りながら弟に抗議をする。
「姉さんが眠ろうとするのが悪いんだろ!」
弟は目を吊り上げて僕を睨む。こ、怖いぞ弟よ。
「…すみません。」
僕は素直に謝った。
「ほら、朝ごはん出来てるから。先食べとくよ。」
そう言って弟は台所に行った。僕はタンスから服を取って着替え、洗面所に向かった。
僕の名前は双沢 有希(ふたさわ ゆうき)。男だ。今、不思議に思った人もいるだろう。何故お前の弟は『姉さん』と呼んでいるんだ、と。サツキ曰く、
「女の子っぽいから。」
だそうだ。失礼な話だ、とも言えない。なんせ街を歩いていたらナンパに会うことも珍しくない。もちろん相手は男。学校でも他クラスの男の奴に告られたこともある。その告白は丁重にお断りしたが…。そしてもう1つ。誰にも言えない秘密がある。この秘密は母さんしか知らない。弟も知らないのだ。ふ~と息をつく。鏡の前の自分を見る。
「さて、今日から仕事…だな。頑張るぞ。」
鏡の自分に言う。僕の父さんは僕が生まれたすぐに亡くなったらしい。そして母さんも僕が10歳の時に死んでしまった。そして僕は今日から高校1年生だ。何とか僕は推薦を取り、学費を免除してもらう感じになった。でもバイトをしなきゃ生きれない。これまでは親戚がお金を送ってくれたが、今日から高校生。自分で稼げという手紙が先週届いたばかりだった。サツキには言ってない。心配をかけさせたくない。僕はサツキの面倒を見る。幼い僕の夢でもあるのだから。
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