27 / 52
零れてしまった思い出、ふたつ。
しおりを挟む
彼と私は、互いに趣味が合う、ということでだんだん仲良くなっていった。放課後は毎日彼の家の近くにある公園に集まり、ブランコやベンチに座りながら最近読んだ本についての感想を言いあったり、本を貸したり借りたり。
六年生、雪融けの春に出会った私たちは、夏になると一緒にどこかに出かけるくらい親密な関係になっていた。
夏休みには、一緒にさっぽろテレビ塔に出かけたり、科学館に行ったりと、最後の夏を堪能していた。
夏休みの最後には、彼と映画館にも行った。お互いが好きな作品が映画化された、ということもあり、僅かなお小遣いを使って見に行った。
大きいスクリーンで見る映画はまさに圧巻そのもので、終わった後に入ったファストフード店ではお互い醒めない夢の感想を漏らし続けた。「あのシーン凄かったね」「あの小説のクライマックスの場面、映画だと小説以上に盛り上がっていて鳥肌立った」とか。
彼の他にも私は何人か友達はいたけど、こんなふうに小説や映画について話の合う友達は彼しかいなかった。
だから、かな。いつしか私は、彼のことをもっと知りたいと思うようになった。パッと見同じクラスに友達がいないように見える彼のことを。
どうして真っすぐ家に帰って、この公園で本を読んでいるのか、とか。
私以外に友達はいるのか、とか。
……一人でいるのに、困った人を見ると助けているのは、どうして? とか。
六年生、雪融けの春に出会った私たちは、夏になると一緒にどこかに出かけるくらい親密な関係になっていた。
夏休みには、一緒にさっぽろテレビ塔に出かけたり、科学館に行ったりと、最後の夏を堪能していた。
夏休みの最後には、彼と映画館にも行った。お互いが好きな作品が映画化された、ということもあり、僅かなお小遣いを使って見に行った。
大きいスクリーンで見る映画はまさに圧巻そのもので、終わった後に入ったファストフード店ではお互い醒めない夢の感想を漏らし続けた。「あのシーン凄かったね」「あの小説のクライマックスの場面、映画だと小説以上に盛り上がっていて鳥肌立った」とか。
彼の他にも私は何人か友達はいたけど、こんなふうに小説や映画について話の合う友達は彼しかいなかった。
だから、かな。いつしか私は、彼のことをもっと知りたいと思うようになった。パッと見同じクラスに友達がいないように見える彼のことを。
どうして真っすぐ家に帰って、この公園で本を読んでいるのか、とか。
私以外に友達はいるのか、とか。
……一人でいるのに、困った人を見ると助けているのは、どうして? とか。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
運命の番?棄てたのは貴方です
ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。
番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。
※自己設定満載ですので気を付けてください。
※性描写はないですが、一線を越える個所もあります
※多少の残酷表現あります。
以上2点からセルフレイティング
王妃の手習い
桃井すもも
恋愛
オフィーリアは王太子の婚約者候補である。しかしそれは、国内貴族の勢力バランスを鑑みて、解消が前提の予定調和のものであった。
真の婚約者は既に内定している。
近い将来、オフィーリアは候補から外される。
❇妄想の産物につき史実と100%異なります。
❇知らない事は書けないをモットーに完結まで頑張ります。
❇妄想スイマーと共に遠泳下さる方にお楽しみ頂けますと泳ぎ甲斐があります。
行き場を失った恋の終わらせ方
当麻月菜
恋愛
「君との婚約を白紙に戻してほしい」
自分の全てだったアイザックから別れを切り出されたエステルは、どうしてもこの恋を終わらすことができなかった。
避け続ける彼を求めて、復縁を願って、あの日聞けなかった答えを得るために、エステルは王城の夜会に出席する。
しかしやっと再会できた、そこには見たくない現実が待っていて……
恋の終わりを見届ける貴族青年と、行き場を失った恋の中をさ迷う令嬢の終わりと始まりの物語。
※他のサイトにも重複投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる