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先生と生徒【番外編 すばる×七瀬】

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番外編 すばる×七瀬です。

✴✴✴

「……台本?」

「ああ、うん。今度る連ドラのやつだよ」

「あれか。確か、高校生の役だったか?」

「うん」

 テーブルの上にある台本の表紙には、すばるくんのサインが書いてあった。
 タイトルは先日キャスティングが発表されたもので、すばるくんが主役の恋愛もののドラマのものだった。

「高校生役なんてできるか心配なんだけど」

 と、眉を下げながら微笑むすばるくんは可愛くて、絶対に大丈夫だと思った。

 すばるくんはすごい。

 ダンスだって、歌だって上手だし、微笑むだけで世界が輝いて見えるくらいのスーパーアイドルだ。

 SSRでは、ドラマとか映画っていえば葵のイメージだけど、すばるくんも時々こうしてドラマとかに出たりする。

 それもすごく上手い。

 俺は演技が全くだめだから、本当にすごいと思う。

 やっぱりすばるくんは天才だ。

「先生に恋する役だったか?」

「そう。禁断の恋だって」

「へえ……」

 ――禁断の恋

 きっとかっこいいんだろうなぁ……。

 普段の王子様みたいな……アイドルの鏡みたいなすばるくんもキラキラしててかっこいいけど、先生に迫る生徒役なんてギャップが凄そうだし、絶対にかっこいい。
 ドラマを観た人はすごくドキドキして、みんなすばるくんに夢中になりそうだ。

 ……高校生のすばるくんかぁ……。

 俺とすばるくんは3歳差だから、同じ学校だったらもしかしたらすばるくんと一緒に高校生活を送れていたかもしれない。
 あんまり学校行った記憶もないけど、ちょっと見たかったかも……。
 俺がそんなことを考えていると、ぼんやりとしすぎたのか、すばるくんは「ナナ?」と、顔を覗き込んできた。

 まぶっ、まぶしい……!

 急にすばるくんの近距離ドアップを浴びて、あまりの神々しさに思わず心臓がバクバクとする。
 慣れているはずなのに、こんなに俺を驚かせるなんてすばるくんはやっぱりすごい。
 ファンの子だったら卒倒してしまいそうだ。

「あ、えっと」

「どうかした?台本の表紙を見つめたまま動かなかったから」

「あ、ああ……悪い。いや、高校生だった頃のすばるくんってどんな感じだったのかなって。一応、グループでデビューした時とか、その前とか知っているといえば知っているけど……学生生活をしていたすばるくんを知らないから……ほら、学校も違ったし」

 俺がしどろもどろ言葉を紡ぐと、すばるくんは相づちを打ちながらしっかりと聞いてくれた。
 それから思案するように顎に手を当てると「待ってて」と、どこかに行ってしまった。

✴✴✴

「お待たせ」

「……!」

 俺は思わず息を飲む。

 目の前には、さっき“会いたい”と思っていた高校生時代のすばるくん。
 何度か現場に制服で来ていたことがあったから、見たことがある。
 ブレザーの品の良い仕立てが、王子様みたいなすばるくんには良く似合っていて、すごくかっこいい。

「制服を置いてあったのを思い出して……どうかな?やっぱりちょっと無理があるかな……」

 へにょっと笑って言うすばるくんに、俺はブンブンと顔を横に振った。

「すごく似合ってる!かっこいい」

「そう?」

「ああ」

 さっきとは反対に、今度はうんうんと頷くと、すばるくんはふわっと笑った。

 うっ………!まぶしい……!

 ステージの上じゃないのに、まるでステージの上みたいだ。
 すばるくんの圧倒的アイドルオーラに思わず目を細めると、すばるくんは俺の横にちょこんと座り、俺の手に触れた。

「せっかくだから、台本読み付き合って?」

「え、でも俺……本当に文字を読むことくらいしかできないぞ」

「いいよ」

「……それでいいなら、わかった」

 俺が了承するように頷くと、すばるくんは「ありがとう」と微笑んでから、スッと切なげな表情へと切り替える。
 触れた手がスルリと指を絡めるように動いて、ゆらゆらと揺れる瞳が今にも泣き出しそうなくらいに切なげななのに、うっすらと情欲を孕んでいるような熱も含んでいて思わずドキッとした。

「先生」

「……っ」

 迫るような色っぽい声が鼓膜を揺らす。
 ドキドキとうるさくなる心臓に我を見失いそうになるけれど、繋いだ手とは反対の手で開いた台本のセリフを声でなぞった。

「わたし は あなたを……せ、せいと と、して、しか みていない」

 ……棒読みすぎる。0点だ……恥ずかしい。酷すぎる。

 自分の出来の悪さにガックリと項垂れていると、握った手の方にすばるくんの指がスルスルと怪しげに動いて、思わずビクッと肩を揺らす。

「ん……っ、」

「嘘」

「う、うそじゃ、ない……っ」

 手から伝わってくる感触に、はぁ……と甘い息が思わず溢れると、すばるくんにギュッと力強く抱きしめられた。

「……っ、ぅ……」

「先生だって、こんなにドキドキしてるじゃん。僕の心臓も爆発しそうなくらいだけど、先生の心臓の音も、すごくドキドキしてるの伝わってくる」

「そ、そんなこと」

「心臓は嘘つかないよ、先生」

「……っ、……んっ」

 顎を掴まれて強引にキスをされる。
 奪われるような力強いキスに思わず台本を床へと落とす。
 しまった、と一瞬思ったけれど、舌を割り入れられて腰がゾクゾク……っ、と震えた。
 何度も何度も角度を変えるようにキスをされて、あまりの気持ちよさに頭が真っ白になってきた。

 やば……っ、ぁ……気持ち、いい………っ

 すばるくんの背中に腕を回してギュッとすると、そのままソファに押し倒された。

「……っ、ぅ………ふっ、……ン」

 気持ちいい、気持ちいい、きもち、いい……っ、はっ、ぁ……、………!

 息が上がるというのに、うまく息が吸えない。
 苦しい。
 苦しいのに、気持ちが良くてたまらない。

 俺が身をよじるように腰を動かすと、すばるくんは色っぽい吐息を吐きながら悪戯に微笑んだ。
 溢れる唾液に溺れそうになっていると、ふいに唇が離れて、耳元で「飲んで」と囁かれる。

「ん………っ」

 すばるくんの言葉のままに、口の中に溜まった唾液をゴクリと飲み込むと「上手」と、囁かれてから髪にキスを落とされた。
 とろんと頭も顔もとろけてしまいながらも、胸を上下させていると、俺に覆いかぶさっていたすばるくんの熱っぽい瞳に俺が映って、興奮するように微笑んだ。
 荒く、貪欲に息を繰り返す俺の唇に、すばるくんはそっとキスを落とす。

「はぁはぁ……っ、はぁ、……すばるく、ん……」

 えっちだ。

 あまりにもえっちだ。

 こ、こんなえっちなすばるくが全国放送に……?

 そう考えると、ドキドキがザワザワとしたものに変わって心臓を撫でる。

 な、なんだろう……なんか……

 そんな考えが浮かんできたところで「ナナ」と、呼ばれてハッとする。
 “先生”からいつもの呼び方に戻っていることに、なんだか妙に安心してしまった。

「ごめんね。せっかく台本読み手伝ってもらったのに、途中からナナが可愛くて……夢中になっちゃった」

「え?」

 じゃあ、あのキスは……?と、なったところでまた啄むようにキスをされる。
 何度も何度も繰り返されるキスに、さっきの熱が蘇ってくるかのように唇がジンと熱く痺れた。

「ん……っ、すばるくん……」

「ナナが可愛くて、えっちだから……えっちなことしたくなっちゃった」

「……っ、ぁ……」

 耳元で囁かれて、軽く食まれる。
 脳が痺れそうなくらいの甘い誘惑に俺がギュッと抱きつくと、すばるくんは嬉しそうに笑った。
 制服姿のすばるくんと……と、考えるとなんだかイケナイことをしているようで背徳感がすごい。

 ――だけど、興奮してしまった身体はそんな誘惑に勝てるはずなかったのだった。
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