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番外編

番外編『ごっこ遊び』

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ご無沙汰してます、番外編です。
本編後のおはなしです。


✳✳✳✳✳



 「ぁ……っ、くぅ…」

 息のかかりそうな距離にいる友達と目が合う。
赤みがかった顔にある口元を手で抑えながら震える友達は、うっすら涙を浮かべている気がする。


 “ごめん”


 そう何度も何度も心の中で謝りながら、自分自身も口に手を当てて声を必死で噛み殺す。
それでも、漏れ出てしまう声に羞恥を覚える。
恥ずかしい。恥ずかしい。恥ずかしい。


 どうしてこんなことになってしまったのか。


ああ、もう最悪だ。


✳✳✳✳✳

 「お~!おっはよー!ちっひー!」


 にこにこと人懐っこい笑みを浮かべながら、ぶんぶんと手を振る友達に向かってオレは挨拶をするように軽く片手を上へあげた。
同じ高校の制服だけど、着崩すようにしているオレの友達は明るい色の前髪をひとまとめにピンでとめ、毛先の少し伸びた後ろ髪をゴムでくくっている。一言で言えばチャラい。
だけど、不良というわけではなくどちらかといえば根は真面目。
コミュニケーション能力が高いだけで、ウェイウェイとパーティ開いてそうなリア充でもない。
まあ、それに気づいたのも高校に入ってからで、中学の頃は同じクラスにならなかったからというのもあり一方的に自分とは関わりがない人間だと決めつけていた。


 高校一年生の時に、コイツと同じクラスになり、同じ中学だったよな、と話しかけられたことがきっかけで、今まで持っていたイメージは誤解だとわかった。
そんなわけで、話も合うし、明るいやつだし、一緒に居ても楽しいから今では登校も一緒にするような仲だ。


 「なあ、ちっひー」


 少し声を潜ませて顔を近づけてくるそいつこと、ブンが今では慣れてしまったダサいオレのあだ名を呼んだ。


 「ん?」


 「あのさ、さっきからすっげーこっち見てるってゆーか、ちっひーを見てるスーツ着てるイケメンがいるんだけど」


 「あ、あぁ…」


 知ってる。
だって、玄関からずっとその調子だから。


 「なんかさ、常に一定の距離保ってるような気がするだけど…知り合い?」


 「知り合いっていうか…」


 オレは、さっきまであえて視界にいれてこなかった人物をちらりと横目で見ると、熱っぽいねっとりと見るような瞳と目が合い、ゾワッと背筋に嫌なものが走り、ぶんぶんと振り払うように顔を振った。


 「ちっひー?」


 「あ、いや…」


 弟です。
そう説明しようにも、口が拒否をする。


 「もしかして、ストーカーとか?」


 いや、弟です。
創立記念日なのをいいことに、何故かサラリーマン風コスプレを朝から楽しそうにしていた弟です。
あまりに機嫌が良すぎて、逆になんだか怖くなってまともに会話しなかったけど、玄関からずっと話しかけられるわけでもなく、一定距離を保ってついて来られて正直嫌な予感しかないけど、ソイツはストーカーでも他人でもなく、血の分けたオレの弟です。


 はあ、と思わず重いため息をついてからボソッと呟いた。


 「……弟」


 「は?」


 「だから、オレの弟」


 「え、ちっひーの弟働いてんの?」


 「いや、高校生だけど…あー、えっと、今日休みらしくて、んー、コスプレ?が、趣味?というか…」


 「こ、コスプレ??ちっひーの弟ってオタクなの?」


 「う、うーん…違うと、思う」


 「え!?どういうこと!?」


 「オレにもわかんない」


 と、いうかわかりたくない。
たぶんだけど、オレの気のせいだといいんだけど、あれってたぶん…アレだよな。


 また、ちらりとモモを盗み見ると、相変わらずねっとりとした視線が送られていた。
ダサめのおじさんっぽいスーツに、イケメンを隠すためか野暮ったい眼鏡をかけて、わざわざサラリーマンが通勤で使うようなカバンまで持っている。
少し猫背ぎみに歩き、パッと見ではいつものイケメンオーラは消えている。
まあ、まじまじと見ればイケメンだってわかるけど、こんな通勤通学の時間に一瞬で興味を持たない限りまじまじと見るような人はいないだろう。完全に擬態している。


 たぶん、アレだろ。
モブおじさんってやつだろ。



 以前、公園でモモが謎の不審者スタイルで現れた時に“モブおじさん”だと言っていた。
だから、あれがモブおじさんファッションなんだと思っていた。
だが、モモが朝から生き生きとして準備をしている姿を目撃して、よくわからないが“なりきってる感”が出ている今のモモ見れば嫌な予感しかない。
あれは、絶対にモブおじさんだ。


 公園でされた行為が頭をよぎり、ブルッとなったが、一定距離を保って近づいてくる様子もないし、話しかけてくるわけでもない。
正直、気持ち悪いことは気持ち悪いが、今のところ考えようによっては無害とも言えるから、とりあえず放置していた。


 オレは定期でサクッと改札を抜けると、学校へ向かう電車が来るホームへと足を運ぶ。
通勤と通学でそれなりに賑わうホームをゆっくりと人を避けながら歩く。
2、3人並んでいる列の最後尾に並んでブンと何でもない会話をする。
相変わらず気味が悪いほど、一定の距離を保っているモモからの視線を受けながら電車が来るのを待った。
雨の予報のせいか、いつもより人が多い気がするホームは賑やかだ。


 駅にアナウンスが流れ、電車が到着する。
いつも通り時間ぴったりにやってきた電車に乗り込む。やっぱりいつもより人が多いようで、運が良ければ座れる椅子も今日はしっかり埋まっていて、さらに満員電車らしいギュウギュウとした車内になっていた。


 「混んでんね」


 ブンが扉に背をもたれるようにしながら、やれやれと微笑む。
そうだな、と手すりを持って向かい合うように立った。
でもまあ、いつも座れるわけじゃないし、降りる駅までこちら側の扉は開かないので立っていてもそんな苦ではない。


 ………はず、だった。


 スルっと、尻の辺りに手が触れたような感触がしてゾワッと毛穴が開いた。
いや、まさかな。


 満員電車で誤タッチなんてよくあることだ。
それに女子高生ならまだしも、尻を触られたと騒ぐのもおかしい…と、思うのだが悪寒が去ってくれない。嫌な予感がする。
いや、でもいくらなんでもアイツが変態であろうとも、まさかこんな人混みで変態行為をしてこないだろう。
うん。いくらなんでもそれはないない。
例え、よくわからないコスプレをして、ストーカーみたいな気味が悪いことをしていようが、さすがにないだろう。
距離だって近くなかったはずだし、気のせいだ。


 そう思うのに、後ろを確認できない。


 「…っ、」


 スリスリと尻に円を描くように動く。
ぞわぞわとしたものが腰から背中にかけてこみあげてくる。
これは、気のせいじゃない。
どう考えてもわざと触られてる。
そう、思うのに…確認するのが怖い。
たぶんモモだと思う。
いや、モモだとしてもそれはそれでかなり恐ろしいが、万が一見知らぬ人がしていたとしてなんて言えばいいんだ?
やめてください、とか?
でも、勘違いだと言われるのも恥ずかしすぎるし、知らない人にそんなことされるのは恐怖しかない。いや、モモでも恐怖だけど!!


 でも、尻を触られてるだけだし…


 気持ち悪いことは、気持ち悪い。
だけど、ただ尻を撫でられるくらいで大騒ぎはしたくないし、それくらい我慢すればいいか。


 撫でまわすような手の動きが止まり、ホッとすると今度は両手でモミモミと揉まれる。


 「ひっ、」


 「ちっひー?」


 キョトンとした顔のブンに、なんでもないと笑顔を作って言う。
そう?と、言いながらも腑に落ちないのか納得いかないような目で見られたが、本当のことなど言えるはずもない。
とにかくブンにはバレたくない。
なんというか、男の沽券に関わる気がする。


 誤魔化すようにブンに他愛もない話を振ると、コミュ力高めのブンはあっさりと話にノッてくれた。よしよし、なんとか誤魔化せた。


 コレってでも、痴漢ってやつだよな。
いや、たぶん後ろにいるのはモモだと思うけど、でももしモモじゃなかったら…あ、もしかして女の子と間違ってる?
てか、尻をそんなに揉んで何が楽しいんだ…ん、でも…なんか、うぅ…変な、気分…。


 下から上へ持ち上げられるように揉まれたり、マッサージのような動きをしたかと思えば、孔を開くようにぱふぱふとされたして、普段尻なんてこんな執拗に触られることなどないから妙な気分になってくる。
ただの、尻なのに。


 体温が少し上がってきたのか、ほんのり汗がにじみ出てきた。
暑い。満員電車のせいかもしれないけど、妙に暑い。


 「ちっひー、ダイジョーブ?なんか、顔赤くない?」


 「だい、じょうぶ」


 へらっと、笑うと「ふーん」とブンは不思議そうに首を傾げた。
大丈夫。体が少しあついだけだし、まだ大丈夫。
尻を触られるくらいなんともない。
電車から降りたら終わるだろうし、我慢できる。我慢する。これくらいなんともない。


 「千裕くん」


 「ひゃっ」


 「うわあ!?ち、ちっひー??」


 耳元で息を吹きかけるように、低くて甘い声が鼓膜を揺らして、背筋に甘い疼きがゾクゾクとこみ上げて力が抜ける。
タイミングの悪いことに電車がグラリと揺れて、体制を崩すとブンに覆いかぶさるように壁ドンならぬ扉ドンをしてしまった。


 てか、やっぱりお前か!モモーーーっ!!!



 イラッとするような、でも違う人じゃなくて良かったと少し安心するような、なんだか複雑な心境だ。まあ、モモで良かった。いや、良くはないけど。
そんなことを考えていると「ちっひー?」と、いう声が聞こえてハッとした。


 「わ、悪い」


 「いや、いいけど。それよりマジで体調悪いんじゃないの??背中もたれる方が良かったら場所変わる?」


 「だ、だめ。あ、いや…えっと、大丈夫だから…はは」


 ごめん退くから、と言おうとしたところで背中からするりと手が侵入してきて、驚きのあまり体が硬直してしまった。


 うそ、だよな…


 上がった体温が一気に冷めた気がした。
まさかとは思うけど、前みたいなエロいことをこんな人がたくさんいるところでするはずないよな…?


 青ざめるオレを余所に、侵入してきた手は目的地が決まっているとでもいうように手慣れた様子で動き、そこにあるのがわかっていると言わんばかりに乳首をキュッとつまんだ。


 「…っ、」


 「ちっひー…?」


 近くにある真ん丸のガラス玉みたいなブンの瞳にオレが映っていた。
眉を少し下げて、心配そうにするブンにできれば何も知られたくない。


 「ごめん、ちょっとだけこのままでいいか?」


 「え、うん…大丈夫だけど…ちっひー、ほんとに大丈夫?変わるよ?」


 「だいじょうぶだから…」


 「そう?」


 クニクニと摘んだ指を動かされると、気持ちが良くて思わず声が出そうになる。
くそっ、だめだ…やめろって言わなきゃ。でも、協力するって約束してるし…いや、でもブンの目の前でこんな…っ、ぁ、気持ちいい…っ、いや、だめ。やめさせないと…っ


 「声、我慢しないと友達にバレちゃうよ?それとも、おじさんの手で気持ちよくなってるとこ見てもらいたい変態さんなのかな?」


 変態はお前だろうが!!!!!


 思わず叫びそうになるのをグッと堪えるように唇を噛みしめる。


 「ちっひー?」


 「…なんでもない」


 後ろにいるモモを睨みつけたいがそういうわけにもいかない。
こんな恥ずかしいめに遭ってるのもバレたくないし、弟であるモモが痴漢をしているなんてバレたらどうなるかわからないし。
あー、もうバカ。モモのバカ!!
後で覚えてろよ…っ


 「今日の数学の宿題なんだけど」


 「う、うん」


 バレないように、なんでもないような素振りで話をふるとブンは慌てたように返事をする。
そんな中でも、ない胸を手のひらで揉むようにされながら硬くなった乳首を指の腹で何度も弾くように動かされて、体が快楽にジワジワと染まっていく。
こんなところで、友達となんでもない会話をしながら、こんなこと、おかしいのに。


 「ふふっ、気持ちいい?乳首気持ち良さそうにピンピンになっちゃってるもんね。気持ちいいね、千裕くん…。息、上がってきたね。いいの?バレちゃうよ?電車の中で、友達の前で気持ちよくなっちゃうイケないエッチな子だってバレちゃうよ」


 「くっ、ぅ…」


 べろっと耳を舐められてゾクっとした刺激に肩を震わせた。
気持ちいい、だめ、気持ちいい、もっと、だめ
、だめ、でも気持ちいい…っ


 モモのムカつく言葉でさえ、快感を煽る材料になってしまうことが腹立たしい。
はぁはぁ、とあがる息に喉が乾く。
飢えるようなこの感情が求めているものが、水なのか、それとも何か違うものなのか、熱でぼんやりとしてきた思考では何がなんだかわからない。


 「……ちっひー、なんか、されてる?」


 「な、なにも…ぁっ、」


 されてない。そう、言おうと思っているのに与えられる快感のせいでうまく言葉が出せない。
そのせいで、不信が確信に変わったのか可愛らしいブンの目がキッと睨むようなキツイ目に変わって、今にも飛びかかりそうな勢いで背中を浮かした。
オレは慌てて、ブンの肩を抑えつけた。
ブンみたいないいやつを巻き込むのは良心が痛むけど、ここで騒ぎを起こすのは本意ではない。
悪いけど、巻き込まれてもらうしかない。


 「ごめん、ブン」


 「なに…」


 「ごめん。嫌だと、思うけど…我慢して、静かにしてて、言わないで」


 「でも」


 「お願い」


 「ち、」


 「お願い…だから」


 ごめん、と言うと動揺するようにブンの瞳がゆらゆらと揺れた。
納得してくれたのかはわからないけど、扉に背中を預けたまま俯いたブンが、小さな、本当に小さな声で「わかった」と言った。
本当にいいやつだ。オレの為に動こうとしてくれたのに、本当に申し訳ないし、こんなことに巻き込んでしまった。
きっと、電車を降りたらオレは友達を一人失うことになるだろう。
ああ、もう…最悪。ブンと一緒にいるの、結構楽しかったのになぁ…。



 「あ~ぁ、バレちゃったね…千裕くん。せっかく頑張ってたのにね。ピクピク体震わせながら一生懸命に声出さないように頑張ってたのにね。可愛いね…恥ずかしくてたまらないのに、千裕くんえっちだからおじさんの手が気持ちよくてえっちになっちゃうんだよね。こんな人がいっぱいのところなのに、えっちになっちゃうなんて千裕くん、悪い子だなぁ…」


 はぁはぁ、と興奮するような息をしながらオレの耳を舌でベロンベロンと舐める。
ぴちゃぴちゃと水音と舌のザラついた感触が興奮した体には、気持ち悪くて嫌だと思うのに、官能的に感じてしまう。
もう、やだ。気持ちいい…っ


 「モモ、もう…やめろよ。取り返し、つかなくなる、から…」


 ブンにバレてしまった今となっては、取り繕う必要もなくなったから、抗議の声をあげるとブンが俯いていた顔から軽く目線を上にあげた。


 「モモ?」



 「…っ、さっき言った弟」


 「え!?弟にされてんの?」


 「だ、だから…その、騒ぎは、困る、から……その、ごめん。巻き込んで」


 「え、えー…?」


 混乱するブンを目の前に、服の中では更にもう片方の手がするりと侵入してきた。
どうやらオレの懇願は聞き入れないらしい。
と、いうか更にエスカレートしている。
本当に性格悪い。
後ろから抱きつくように密着され、肩にはモモの顔があって、気持ちの悪い息遣いが絶えず聞こえてくる。


 あー、もう本当にオレの弟気持ち悪い。


 そう思うのに、動いているモモの手が気持ちよくて思考が溶けていく。
漏れ出てしまいそうな声を片手で抑えながら、崩れそうになる体をもう片方の手を扉に置いたままなんとか支える。
弄ばれているような手の動きなのに、どんどんと体が快楽に染まっていく。
だめなのに。こんなところで気持ちよくなんてなっちゃだめなのに。


 「んっ…ふ」


 「千裕くんの体熱いね…気持ちよくって興奮しちゃってるのかな?こんな人のいっぱいいるところでえっちになっちゃうなんて悪い子だなぁ…もしかして、人に見られるのが好きなのかな」


 「そんなわけ…っ」


 「あ。あそこにいるおじさん、千裕くんのえっちな顔に興奮してるんじゃない?」


 「えっ、うそ…」


 「ふふっ、どうだろうね」


 カプッと耳を噛まれて、小さく息を飲むとモモは楽しげに笑う。
それが悔しくて唇をグッと噛むと、右手がするすると下に降りてきて腹を撫でた。


 「千裕くんのえっちなおちんちんどうなってるのかな」


 「え」


 ゆっくりとゆっくりと蛇のように腹を撫でていた手が下へ下へと降りていく。
え、嘘だろ。こんなとこで、まさか…


 「やめ、やめて…やだ。モモ、やだ、やめて…」


 ふるふると緩く首を振っても、モモの手は下へと降りていく。


 「お願い、モモ…こんな、とこで…やだ」


 「お願いする時は、どうするのかな?」 


 「そ、それ…触らないで、ください」


 「“それ”ってなにかな?おじさんにわかるように教えてくれなきゃ」


 「…っ、う…」


 そんなの言えるはずがない。
目の前にブンが居るのに。聞いているのに。
そんな恥ずかしいこと、二人きりだとしても言いたくないのに…っ


 ブンの不安げな瞳がこちらを見ていた。
その瞳に羞恥が煽られる。ただでさえ痴態を晒しているのに…と、思うと言葉が出てこない。
フッ、とモモのあざ笑うような息が耳にかかり体がビクッと震えると、その一瞬でズボンに手を突っ込まれてギュッと手で握りこまれてしまい、声をあげそうになるのを息を止めて抑え込んだ。


 「はぁはぁ、ちひ、ろくん…ぬるぬる…っぁ、えっちだなぁ…えっちな子だよ。おちんちんこんなにおっきくして、えっちなお汁でぬるぬるにして…はぁ、きもちよかったんだね。ああ、もう…ちょっと触っただけでびくびくしてるよ。おじさんの手がぬるぬるですべっちゃうなぁ…あは、またおっきくなった。声出ちゃったら皆に千裕くんのえっちな姿見られちゃうよ?いいの?あ、千裕くんは見られた方がいいのかな?あそこにいるお兄さんに見てもらう?あはっ、泣かないで…ほら、いいこいいこ。ここ気持ちいいとこいっぱい触ってあげるからね…」


 ガタンゴトンと揺れる車内でガクガクと足が震える。立ってるのが精一杯で、涙で滲んだ視界にブンがいて、ブンの顔が真っ赤で、モモに何をされているかがきっとバレているんだとわかってしまう。
友達に痴態を晒してしまい、吐きそうな気分なのに体は気持ちよくて、本当にオレってやつはどうしようもない。
いやだいやだと頭では思っているのに、どこかでもっと、やだ、やめないでと卑しい考えが湧いてくる。
辛い。早く終われ。気持ちいい。やだ。もっと。これ以上はだめ。イきたい…っ


 頭の中がぐちゃぐちゃになりながら、はぁはぁと息があがる。
乳首がジンジンする。窮屈な服の中で触られるちんぽがピリピリとした刺激がくるのに、動きがもどかしい。もっとちゃんと触って欲しい。
朦朧とする意識の中、ガタッと揺れてふらついた体がブンにもたれかかってしまう。


 「ごめ…っ、ん、ぁ」


 体制を戻そうと体を動かすと、オレのガチガチのちんぽがブンの太ももに擦れて体が歓喜で震えた。


 「ち、ちっひー…」



 「う…っ、やだ…うぅ…こんな、うそ…ごめ、ごめん…ブン、ごめん…あっ、なんで、止まんない…っ、ごめ、ごめんなさい…っ」


 ポロポロと涙が溢れてくる。
ブンにすがるように抱きつくと、オレはズボン越しにブンの太ももにちんぽを擦りつけた。
どう考えても変態行為だし、殴られても文句は言えない。
でも、イきたくて、出したくて、しょうがなくて、本能のままに腰をふることしかできない。



 「…さすがにそれは妬いちゃうな、兄さん」


 ベリッと、オレとブンの体を引き剥がすと、ブンをモモの後方へと退かし、オレは扉へと追いやられた。


 「兄さんのお友達さん、そこで隠しといて。いいよね?」


 「え、あ…は、はい…」



 「どうも」



 不機嫌を隠すことなく、何故かブンに偉そうにモモは命令すると、ズボンのチャックを開けた。



 「うそ、だろ…」


 「兄さんが悪い」


 「は?」


 「わからなくていいよ。はい、そこに両手つこうね」


 「や、やだ…」


 「わがまま言わないで。今、結構頭にキテるから。言うこと聞いてくれないと何するかわかんないよ、僕」


 「う…っ」


 ヒヤリとするような視線がダサい眼鏡からのぞき体が震えた。
怒ってる。モモがすごく怒ってる。
前にうっかりモモのデジカメを壊してしまった時もすごく怒って、とんでもなく酷い目にあった記憶がある。
モモは変態だけど、普段割りと穏やかだし、あまり怒るということがないだけに怒ったり、キレたりしたらヤバいということがわかっている。
これは、ヤバい。


 下手に抵抗してもロクな目に遭わない気がする。と、いうか確実にこのまま従うよりも酷い目に遭う。これは絶対だ。


 オレは嫌な予感しかしないけど、大人しくモモの言うことを聞いて、扉に向かって両手をついた。


 「いいこだね」


 「くっ…」


 弟にいいこだと言われても馬鹿にされているとしか思えないけど、グッと堪えて我慢する。
カチャリとベルトの金属音が聞こえて、ズボンをおろされる。
パンツはおろされずに、パンツの中ににゅるりとしたモノが侵入してきて、尻にぬるぬると硬いけど柔らかいものがすべる。


 「千裕くんのパンツの中、濡れてるね…」


 怒っててもその設定続けるんだな、と心の中でツッコみながら冷たいガラスに置いた手をギュッと握りこむ。


 「おじさんのおちんちんが千裕くんのえっちな孔をスリスリしてるのわかるかな?欲しい欲しいっておねだりしてるみたいにヒクヒクしてるよ…」


 「そんなわけ…」


 ない、と反論しようとしたけど止めた。
ここは、無駄に抵抗しない方がモモの機嫌を損なわずに、むしろ機嫌よくなってくれたら酷いことにならずに済むのではないか、と頭によぎる。


 「えと、その…ほ、欲しい」


 「え?」


 「だから、その、ちん…えっと、おちんちん、挿れて、欲しいです…き、きもち、いいこと、して…あ、えっと…オレ、えっち、だから、その…」


 「え、え?に、兄さん…?」


 「い、挿れて…早くイかせて、ください」


 モモを見上げながら、ボソボソと言って尻を少し上にあげると、モモは顔を真っ赤にしていつものイケメン顔ではなく完全に崩れていた。
驚いた顔はなんだか、少し幼くて可愛くすら思えた。
なんだ、そんな顔もするんだな。と、なんだかホッとするような気持ちが出てきてはにかんでしまった。


 「~~~っ」


 「ん゛…ッ、ぐ」


 なんて、思ったのは一瞬で崩れた。
鼻息荒くモモは、片手をオレの腰に巻きつけて、体を密着させるとオレの体に侵入してきた。
本来はそんなものを突っ込むところではないところは、ろくにほぐしもせずに受け入れられるはずもない。無駄にデカイし。


 痛い、正直めっちゃくちゃ痛い。


 でも、そんなことは言えないし、痛みを逃すように叫ぶこともできない。ただ、耐えるしかない。
みちみちと肉棒をねじりこまれて、圧迫感でお腹が苦しい。
でも、不思議と尻は裂けて無さそうだし…あれ?思ったより、痛くない、かも。



 はじめの挿入時こそ痛くて泣きそうになったけど、先っぽを飲み込んでしまうと思っていた痛みもなくスルスルと受け入れてしまう。
いや、もちろんお腹は苦しいけど、なんか、その苦しさも、気持ちいいような…あ、あれ?


 「はっ…、ぁ…千裕くんのなか…千裕くんのなか…、あつくて、おじさんのおちんちんをぎゅっぎゅってして離さないよ…ぁ、だめ、とけそ…」


 「ふっ、ぁふ…、ん」


 耳元で気持ちの悪いことを言われても不快に思うどころか、興奮を煽られて下半身の昂りが増していく。
おかしい、嫌なのに、気持ちよくて気持ちよくてたまらない。
尻に弟の腹立つくらいデカイちんぽを挿れられて、腹の中をぐちゅぐちゅとかき混ぜられて、嫌で嫌でしょうがないのに、苦痛なはずなのに、ぐちゅぐちゅと肉棒がなかで擦れるたびに悦びで体が震えてしまう。
やだ、気持ちいい、ぐちゅぐちゅにかき混ぜられるの気持ちいい、やだ、やだ、おかしい、やだ、嫌なのに…っ、ぁ、気持ちいい…っ



 「も、モモ…っ、で、でる…でちゃう…」


 「いっしょに、いこっか…千裕く、ん…っ」


 「むぐっ!?」


 モモはオレの口を手で塞いで、腰の動きを速くする。激しい抽挿に目の前がチカチカとしてまるで星が舞っているようだ。
二人が繋がり合う卑猥な水音が、ガタンゴトンと揺れる電車の音と人の声に紛れて隠れる。
見られているかもしれない、と頭の中では考えるのに、それでもふわふわの真っ白な頭ではもうイきたいとしか思えない。


 「ん゛ン…ッ」


 「ん…っ、」


 短く唸る声をほぼ同時に発して、腹にあたたかいものが広がる。
ズルリとモモのモノがオレのナカからいなくなり、なんだか少し寂しさを感じてしまう。
倦怠感で体を動かすのも億劫だけど、とりあえずパンツとズボンを元に戻して、あがる息をそのままにズルズルとその場で座り込んだ。
パンツの中がぐちょぐちょで気持ちが悪い。最悪だ。


 涙で濡れた顔を手でグッと拭くと、降りる予定駅に着くというアナウンスが聞こえ、立ち上がろうとしたけど、うまく力が入らない。まずい。


 パサッと何かがかけられたと思うと、そのままふわりと体が浮いた。
気づけばモモの整った顔が目の前にあり、体にはモモのダサいスーツのジャケットがかけられていた。
どうやら抱き上げられているらしい。
しかも、あれだ。お姫様だっこ。


 「え、な、なんで」


 「立ち上がれないんでしょ、兄さん」


 「あ、うん」


 「だからだよ。我慢して」


 別にお姫様だっこじゃなくていいんじゃないかと思ったけど、今降ろされてもこの駅で降りる人たちの邪魔になるし、なによりオレもこの駅で降りないといけない。
だから、しょうがないので何も言わずに従うことにした。


 扉が開いて、流れるような人の中オレたちもホームへと降りた。


 「兄さんの友達の人」


 モモがそう言うと、ブンはビクッと体を震わせて恐る恐る振り返った。
怯えてる。すごく怯えてる。
悪いことしたなぁ…。


 「な、なに?」


 「兄さん、今日学校休むから」


 「え?」


 オレが思わず声をあげてモモを見ると、ダサい眼鏡越しに目が合った。


 「行けるの?学校。こんな状態で」


 そうだった。オレ、今モモにお姫様だっこされてるんだった。


 「い、いけない…」


 正直休憩すれば普通に歩けると思うけど、パンツの中も、腹の中もぐちょぐちょだ。無理だ。


 オレがふるふると頭を振ると、モモは満足そうに微笑んだ。
このやろう、誰のせいだと思ってんだ…っ、ムカつくな。


 「まあ、そういうわけだから。体調崩して休みますって言っといて。兄さんの友達の人」


 「こら、モモ。ブンの方が年上なんだから敬語を使え」


 「じゃあ、言っといてください」


 「え、あ…はい」


 「悪い、ブン。ごめんな」


 「いや、いいよ」


 じゃあ、とブンはオレと目も合わさずに行ってしまった。
そりゃそうか。あんなもの見せられて、普通でいれるわけないよな…あ~ぁ、せっかく気が合うし、楽しかったのになぁ…。


 「さぁ、帰ろっか。兄さん」


 語尾にハートがついているようなご機嫌な口調で言うモモに内心イラッとしたものの、正直疲れすぎてどうでもいい。
オレは返事をせずにモモに体を預けると、モモはニコニコと笑ってからホームを出た。
当たり前のようにタクシーを拾うモモに「オレ、そんな金ないぞ」と言うと「僕が払うから」と言われたので、何も言わず甘えることにした。正直早くシャワー浴びたいし、服も着替えたい。


 家に到着すると、オレの気持ちを察していたのか風呂場に直行する。
脱衣場で、オレが服を脱ごうとネクタイを外すと、モモがオレのシャツのボタンに触れた。


 「服ぐらい自分で脱げる。ってゆーか、もう大丈夫だから」


 そうグイッとつっぱねると、モモは心底不満そうな表情をしながら自分の服を脱ぎはじめた。


 「…モモまでなんで脱いでんの」


 「いいでしょ?僕だってシャワー浴びたい。それに、兄さん一人で入って、万が一動けなくなったりしたら困るでしょ」


 「大丈夫だと思うけど…まあ、いっか」


 一応心配してくれているみたいだし、と心の中で頷いて、ボタンを一つずつ外していく。
少し汗でくっついた服を無理矢理脱ぎ捨ててから立ち上がる。


 うん、大丈夫。


 少しだるい気はするけど、問題なく立ち上がれたことにホッとしてから、ベルトをカチャリと外す、が


 「あのさ、そんなじっと見るなよ…」


 食い入るように見てくるモモの視線が気になって仕方がない。
ぶっちゃけ気持ちが悪い。


 「見てないよ」


 「………」


 どう考えてもガッツリ見ているようにしか思えないけど、それ以上は何も言う気にはなれず仕方なくズボンをおろした。


 うっわぁ…やっぱりぐちょぐちょ…気持ち悪いはずだ…


 自分で出したものだから仕方がないけど、精液で汚したパンツなんて嫌なものでしかない。
はぁ、とため息をついてモモを見ると、気味が悪いくらいにガン見されてて、ドン引きした。
き、気持ちが悪いな…


 「あのさ、モモ」


 「……なに、兄さん」


 「今日みたいなこと、もうやめろよ。人を巻き込むのはだめだろ。お、オレは…その、お前のそういうことに付き合ってやるって言ったけど、他人を巻き込むのはもうやめろよ。迷惑かけるの嫌だし」


 「そうだね。人がいるところではもうやめるよ」


 「そ、そっか」


 あっさりとモモが了承してくれてホッと顔が思わず緩んだ。


 「うん、だって思っていたよりもずっと僕って嫉妬深いんだってわかったし」


 「ん?」


 「怯えたり、恥ずかしがってる兄さんはすごく可愛かったけど…ほんと、殺したいって思っちゃったもんね」


 「んん??」


 「だから、人前ではもうしないよ」


 「あ、うん…それなら、良かった」


 なんかすごく不穏な感じの台詞がきこえた気がするけど、モモがあまりにも穏やかに微笑んでいたからオレもつられてへらっ、と笑った。


 「でも、人前じゃないならいいよね」


 「え」


 ガシッと腰を掴まれたかと思うと、膝立ちになったモモがオレの股間にスリスリと顔を埋めるようにしながら、何故か深呼吸をした。


 「わわぁ!?な、ななななな…何してんだモモぉ!?」


 「ハァハァ…何って、千裕くんの、えっちなお汁でドロドロ汚したパンツを…はぁ、堪能してるんだよ」


 汚れたダサい眼鏡がぽとっ、と落ちて、べたべたのモモの顔が見上げるようにこちらを向くと、にたぁと口の端をあげた。
びっくりするくらい気持ちが悪い。


 「も、も…」


 「汚したものは綺麗にしないといけないね」


 手首で頬を拭って、それを舐めとるように舌を這わせるモモの目が猛禽類のそれを思い出させて思わず「ヒッ」と声が出てしまった。


 「怖くないよ、綺麗にするだけだから」


 「ふっ、ぁ」


 履いたままのパンツを、モモがパクッと口で食む。ぐちゅっとしたパンツごとオレの柔らかいちんぽをチューチューと吸い上げられ、あまりの刺激に背中を反ると風呂場のドアにぶつかった。


 「や、やだ…っ、モモ、それ、やだぁ」


 やめてほしくて頭を掴むけど、退けてくれない。


 「っはぁはぁ、ち、千裕くんの、んっ、えっちなにおい…っ、んっ、はぁ、おいしっ、おいしいよぅ…千裕くんの、えっちなお汁、おいしっ…んむ」


 濡れたパンツに更に染みが広がっていく。
いやいやと首を振っても、モモはじゅるじゅると音を立てるだけでやめてくれるどころか返事すらしてくれない。
腰が抜けてそのまま座り込むと、モモはまるで犬のように這いつくばって、パンツを吸い続けた。
気持ちが悪い、気持ちが悪すぎる、オレの弟。


 そう、思うのに…快感で体がおかしくなりそうだった。
むくむくと成長して、ガチガチになったちんぽがパンツからはみ出してきた。
外の空気に触れたかと思うと、今度はにゅるりとしたものが触れ、ピリピリと下腹部に刺激が走り驚いてドアで頭を打ってしまった。


 「…っ、あっあっ!!?や、やぁ…っ、はっ、きもち、よすぎるから…っ、やっ、だめ…だめぇ!」


 パンツを剥ぎ取られ、ベロンベロンとちんぽを舐め回される。
精液とよだれでべたべたのそこをまるで甘い飴でも舐めるかのように恍惚とした表情で舐めるモモが怖い。
怖い、けど…それ以上に気持ちよすぎて頭がおかしくなりそうだった。
息が上がって、喘ぐはしからよだれが垂れてくる。
ちんぽからも、口からもだらだらとだらしなく垂れ流し、情けない姿に違いない。


 「はっ、ぁ…、ぁ、あ!や、ふぅ…んんっ、きもちい、きもちいい…っ、ももぉ…っ、やめて、きもち、よすぎて、イけない…っ、イきたい…っ、それ、だめぇ」


 「むぐっ、ぁ…っ、ちひろくん…っはぁ、きもち、いいの?おじさん、おそうじしてるだけなのに…んっ、きもちいいんだ…えっち、だね…舐めても、舐めても、えっちなお汁が出てくるから、おじさん、ずっと舐めてないと、んっ、いけないね…!」


 「やだぁ…やだ、むりぃ…っ、あっ、それ、だめぇ…おねがい、イきたい…っ、なめるの、やめ、て…っ」


 「でも、まだお腹のなかもきれいに出来てないし…」


 「もう、でも…っ、なめないでぇ…きもち、よすぎて、おかしくなるぅ…っ、ぁ、あっ」


 「わかったよ。じゃあ、舐めるのはやめるね」


 「っ、はぁはぁ…っふ」


 モモの舌からちんぽが解放されて、くたっと体から力が抜ける。
ガチガチになったちんぽにノロノロと手をのばすと、モモに止められた。


 「だめだよ、千裕くん」


 「な、なんでぇ…?」


 早くイきたい。早く擦って出したいのに、なんでそんな意地悪を言うんだ。
泣きそうになりながらモモを見ると、モモは何も言わずにオレを抱き抱えると、風呂場のドアを開けて中に連れて行かれた。


 「先にお腹にあるのをおそうじしなきゃだめだよ。お腹いたくなっちゃうよ?」


 「そう、なのか?」



 前はそのまま寝込んじゃったから全く記憶にないが、そういうものなのか。
でも、出来るなら早くイきたい。


 「おじさん出してあげようか?指でじゅぼじゅぼ掻き出してたげるよ…?」


 よだれでべたべたの顔にある口元をにたぁとあげて笑う。
き、気持ち悪い…。本当に気持ち悪いな。


 「い、いや…いい。じ、自分でするから」


 「千裕くん、お尻に指入れるなんてできるの?おじさん、やってあげるのにぃ」


 指を動かしてにやにやとするモモが気持ち悪くてゾッとする。
ふるふると頭を振って「できる」と、言うとモモは浴槽の縁に腰をかけた。


 「どうぞ?」


 「あ、あっちいけよ」


 「ほら、お尻から垂れてきてるよ?」


 「えっ」


 とろりとしたものが太ももを伝って床にぽたぽたと溢れていく。
自分の中からモモの出したものがこぼれ落ちるさまを見てしまい、一気に自覚してしまう。
どうにもならない恥ずかしさがこみ上げてきて、体温が上昇する。


 オレ、モモと体が繋がってたんだ。


 「千裕くん、どうかした?」


 「なん、でもない」


 自分の中にモモが居たこと、モモにぐちゃぐちゃにかき乱されたこと、そして精液を……


 「千裕くん?」


 「え」


 考えに沈みそうになったところをモモの声にハッとなった。
さっきされた行為に上乗せするように、電車での記憶が心臓をバクバクとさせ、体が疼く。


 ああ、もう…っ、くそ


 シャワーを出して、落ち着かない体を冷たい鏡に押し当てる。
ひやりとした鏡が乳首に当たり、体が反応するようにビクッとなってしまった。
尻を突き出すようにして、恐る恐る右手を尻に持っていく。
ゴクッと喉を鳴らし、はぁ…と、深いため息をついてから深呼吸をした。
大丈夫、できる。やらないと、だめだし…うん。


 孔にゆっくりと人差し指を入れる。違和感はあるものの、痛くはない。ホッとしてから2本目の指を入れた。
違和感に少し戸惑いながらも、ゆっくりと指をすすめていく。
ドロッとしたぬめり気と胎内の熱さになんとも言えない気持ちを抱きながら浅い息を繰り返して、なんとか奥へと進む。
水かきのあるところまでしっかり飲み込んでから、ゆっくりと指を折る。
肉壁を擦りながら、指を引き抜くとドロッとしたものが一緒に流れてきた。


 「上手だね、えらいよ千裕くん。その調子でがんばろうね」


 「んっ」


 指をまた挿入して、出してを繰り返す。
ゾクゾクとしたものがこみ上げてきて、肉壁を擦るたびに甘い息が溢れた。
先程の興奮のせいで、ちんぽはガチガチで指を抜き差ししているととろとろと先走りが垂れてきて、お尻から溢れる精液と混じり合うように床に垂れては、シャワーのお湯で流れていく。
くちゅくちゅとかきまぜるように、指を動かすと気持ちがよくて、体が揺れる。
揺れた体が鏡を滑り、乳首に刺激が走った。


 「ぁ…っ、ふ」


 お腹の中のものを出しているだけのはずなのに、なんだか自慰をしているようなそんな気持ちになってくる。
早く、出さなきゃ…早く、イきたい、ちんぽ触りたい…っ


 はっはっ、と荒い息が風呂場に反響して、恥ずかしくて耳を塞ぎたくなる。
そんなはしたない自分が映る鏡に、こちらをじっと見つめるモモの目と合ってしまって、恥ずかしさのあまり目を反らした。


 「モモ、やだ…っ、そんな、見るな…っ」


 「千裕くんのえっちな姿を見ないなんてできないよ…」


 「えっちって…っ」


 「えっちだよ。すごくえっち。ほら、見てごらん」


 モモは立ち上がり、オレの背後から鏡を手でキュッとなぞり、曇を晴らす。


 「ほら、見て。千裕くんのとろけたえっちな顔に、ピンピンの可愛らしい乳首。それにおちんちんだってパンパンに膨れ上がって、とろとろとヨダレをこぼしてるよ。こんなえっちな姿、見ないでって言われても無理だよ」


 「うっ、ぁ…」


 鏡に映った自分がだらしなく、淫らで、恥ずかしくて顔があつくなる。


 「あはっ、千裕くん…自分のえっちな姿に興奮しちゃったのかな。おちんちんピクピク動いたよ。可愛いね、えっちだね。お尻の孔もヒクヒクして、もう全部食べちゃいたい…」


 ペロッと背中を舐められて「ひぅっ」と妙な声が出てしまう。
そのままベロンベロンと背中を舐め回されて、それすらも快感に変換される。


 「やめっ、ぁ…っ、モモ、こら…んっ」


 「はぁっはぁ…っ、千裕くんの、におい…っ、ん…はぁ、汗の味がする…」


 「ば、ばか…っ、汚い…っ」


 「千裕くんに汚いところなんてないよ…はぁ、ずっと舐めていたい…」


 「き、キモいこと言うなっ…」


 「お腹の中綺麗になったか見てあげるね」


 「へ」


 尻を割られるようにひろげられ、ぬるっとした感触に体が震えた。
じゃなくて、え?まさか… 


 「や、やだ…そんなとこ、やだ、絶対舐めたら嫌だ…」


 尻孔を手でガードするようにすると、今度は指をぺろぺろと舐められた。


 「だめ?」


 「だ、だめぇ…ぁ」


 しゃぶるように指をじゅぶじゅぶと舐められて、さっきの脱衣場での出来事を嫌でも思い出してしまう。正直、興奮しきった体には毒でしかない。


 「しょうがないなぁ…千裕くんがそう言うなら、千裕くんに協力してもらおっかな」


 「ふへ?はっ、ぁ…ッ」



 掴まれたオレの手の指を、モモに導かれるままに強引に後孔に突っ込まれる。
自分の指なのに、モモに操られるままぐちゅぐちゅとかき混ぜられて、読めない動きに翻弄される。


 「あぁっ、ん…っぅ」


 ぐにっ、と押しつぶすようにされたところは、モモに散々教えこまれた気持ちがいいところで、さっきは自分では触れることはなかった。


 「やっ、モモ、だめ、そこ…っ」


 「どうしたの?そこって、ここ?」


 「ひぅっ、そ、そこぉ…っ」


 「ここがどうしたのかな?」


 絶対にわかっていてわざとやっているに違いない。オレの反応を楽しむようにあえてそこばかり狙うように執拗にグリグリと指を動かしだ。


 「あっあっ、やっ、ぁ、そこばっかり、やだ…っ、きもちいい…っ、あ、きもちいいからだめ…っ」


 「気持ちいいの?そっかぁ、だから腰が揺れて、おちんちんをぷるぷると揺らしてるんだね。おじさん、千裕くんのえっちな動きに興奮しちゃったよ」


 「えっ、やだ、うそ…やめっ」


 「おじさんのおちんちんで奥のところまで見てあげるから、ね…っ」


 「やだやだ…っ、あっ、もう、むりむりむり…っぁ、あ゛」


 指のかわりに、一気にモモのちんぽに貫かれて、オレは頭の中が真っ白になった。


 「っあは、挿れただけでイっちゃったの?すごくえっち…えっちだねぇ、千裕くんはそんなにおじさんのおちんちんが欲しく待っててくれたのかな?はぁっ、はぁ、えっちな千裕くん、たまらないね…はぁ、いっぱい、いっぱい、おじさんのおちんちんで気持ちよくさせてあげるね」


 「やっ、激し…っ、やぁ…っ、イったとこばっかりで、やめ…っ、あっ、あ゛っ、やだぁ…むり、やだ、抜いて、抜いてぇ…っ」


 ぱちゅんぱちゅんと腰を打ち付ける音が風呂場に反響する。泣いてやめてと言っても、やめてくれず、卑猥なエロオヤジみたいな台詞ばかりを延々と聞かされ、何度かの射精のあと、またぷっつりと糸が切れたように意識を失った。




✳✳✳✳✳✳✳✳✳


 「もう、あんなに無茶するなら協力なんてしない」


 目が覚めたらオレはオレの部屋のベッドで、しっかりとパジャマを着て寝ていた。
夕焼け小焼けの音楽が似合いそうなオレンジ色の光が窓から差し込む部屋で、オレはモモが持ってきたスポーツドリンクで喉を潤しながら、キッとモモを睨んだ。


 しゅんと、まるでしょげた犬のように背中を丸めてうなだれるモモに少しだけチクリと良心が傷んだけど、ここは引くわけにはいかない。
だって、今日は散々な目に遭ったんだから。


 「無茶って…どういうのが、無茶?」


 「それは、その…人前であんなことをするとか」


 「あんなこと?」


 「だ、だから!人前でエロいこととかすんなってことだ!人に迷惑をかけるようなことはだめ!絶対だめ!!」


 「うん、それは約束した通りしないよ」


 うんうん、と頷きながらモモはしっかりと同意した。



 「そ、それと…風呂場で、その…」


 「いっぱいえっちしたこと?」


 「そうだよ!い、いっぱい…しすぎだ」


 「でも、あれは兄さんがエロいから興奮しちゃってやめられなかったし、兄さんだって僕にしがみついて離してくれなかったよね?」


 「し、してない!してないだろ!?」


 「してたよ。僕のペニスを兄さんのお尻がキュッと掴んで離してくれなかったもん」


 「ば、ばかか!?それはどう考えてもモモの勘違い…っ」


 「それに“きもちいい”ってえっろい声でいっぱい言ってたよね?」


 「そ、それは…」


 素直に言わないとやめないってお前が言ったからだろうが…!いや、気持ち良かったから、気持ちいいって言ったけど!嘘じゃないけど!!!



 ぐっ、と反論できずに唇を噛むとモモがオレの唇に指で触れて、ビクッと肩が揺れた。


 「兄さんが悪いんだから責任とってもらっただけだよ?僕だって男なんだから、えっちな気分になったら止められないくらい兄さんもわかるよね?」


 「わ、わかるけど…」


 そもそもはモモのせいじゃないか?とは、モモのあまりにも堂々とした態度のせいで言葉を飲み込んでしまった。


 「じゃあ、いいよね?しょうがないもんね」


 「しょうがない、かも」


 確かにエロいスイッチが入ると止まらないよな。うん、男ってそういうもんだよな。


 「わかってくれた?」


 「わ、わかった」


 オレが頷くと、モモはイケメンには似合わない顔で、ニタァと口角をあげた。


 「じゃあ、これも合意だよね」


 「え?」


 そう言った瞬間、オレは天井を向いていた。
モモに覆いかぶさられて。


 「も、モモ?」


 「勃っちゃった」


 「はあ!?」


 にっこりと笑うモモに手を掴まれて、モモの股間にピトッと当てられた。


 た、勃ってるーーーー!!!


 わっか!若いな!?2つしか違わないし、オレも性欲は普通にある健康的な男子高校生だけども!!!


 …って、そういうことじゃない!!


 「た、た、勃ったって、オレのせいじゃないだろ!?オレ、なにもしてな…っ」


 「してるよ。兄さんが存在してるってだけでエロいことしたくなるから」


 「はあ!?」


 「責任とってね、千裕くん」


 「ちょっ、まっ、む、ムリーーーっ!!!」


 そんなオレの願いは聞き入れられず、結局その後も散々喘ぐはめになり、オレはまた倒れ込んだ。
怒ったオレは、しばらくモモと口を聞かずにいたら、モモはご飯もろくに食べずにヘロヘロのボロボロになってしまったので、あまりに見ていられなくて、仕方なくまた折れることになった。


 本当にオレの弟は、こんな気持ち悪くて、めんどうで仕方ないというのに、オレはそんな弟になんて甘いんだと、自分で自分に呆れてしまうのだった。


 終わり
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