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 ハルトヴィーツは倒れ込むようにベッドに寝転ぶ。


 「兄さま、お疲れ様でした。だいぶお辛いんじゃないですか?」


 ゴロンと寝転ぶハルトヴィーツは苦笑いしながら「さすがに体がだるい」と言った。


 「そうですよね…お風呂でも入りますか?疲れが多少マシになるかもしれません」


 「悪い、実はいうと起き上がる気力がない」


 「相当お疲れじゃないですか!なんで言わないんですか」


 エミリオがカッと目を見開くと、ハルトヴィーツは「キツイとは少し思ったが、そこまでとは思わなかったんだ。寝転がったら気が抜けた」と、情けない声で笑った。


 「ハル、動けないのであればこのまま寝てしまいますか?とりあえず靴を脱がせますね」


 失礼します、とアトラスは丁寧な手つきでブーツの紐を解いていく。


 「そうだな、どうせ動けないなら寝てしまうか。寝たら多少は回復するだろう」


 「では、服も着替えましょう。ついでにタオルで体を拭いてしまいましょう」


 ブーツを脱がすと、タオルを用意しますとアトラスは部屋を去った。


 服を脱いで待ってるか、とハルトヴィーツは服に手をかけるが、体がうまく動かせないせいか全然できない。


 「兄さま、アトラスが来るまで待てば良いと思いますが…っ」


 エミリオが笑いをこらえながら、ハルトヴィーツに言うと拗ねるように口を尖らせた。


 「無力だ」


 ハルトヴィーツが服を脱ぐのを諦めて、天を仰ぐと、エミリオが微笑みながらのぞきこんだ。


 「兄さまお着替え元々苦手ではないですか」


 クスッと、エミリオが言うと「そんなことはない」と、プイッと横を向いた。


 「仕方ないですね…」


 エミリオはベッドに腰をかけると、横を向くハルトヴィーツの顔を自分の方に向けた。


 「分けてあげますね」


 そう言うと、顔が近づいて唇と唇が触れた。
一緒何が起こったのかわからなくなったが、そんな思考さえを吹き飛んでしまった。
バクッと心臓が跳ね、全身に快感にも似た熱が駆け巡る。
その熱に体が飢えていたようで、欲しくて欲しくてたまらないと思考は『欲しい』という欲望に支配される。


 ねだるようにエミリオの背中に腕をまわすと、エミリオの体が一瞬ピクッと震えたが、すぐに応えるようにハルトヴィーツの後頭部に手をまわした。


 欲しい、欲しい、欲しくてたまらない。


 飢える乾きを満たすように、ちゅっちゅっ、とねだるように何度も吸いつくように唇を繰り返す。


 甘いとろけるような心地よさと満たされていく体に、他のことがわからないほどに夢中になった。


 ちゅぱっと唇を名残りおしそうに離すと、潤んだ瞳をとろんとさせながら、肩を上下に揺らす息をする。


 「そんなに僕の魔力が欲しかったんですか?」


 熱っぽい瞳でエミリオが見つめると、ハルトヴィーツはハッと我に返ると、全身が沸騰するようにカアアと熱くなった。


 「す、すまないエミリオ…っ!オレはなんてことを…っ」


 手で唇を抑えて、ハルトヴィーツは顔を真っ赤にさせながら混乱する頭で謝った。
そんなハルトヴィーツをエミリオは、堪能するように愛しそうに見つめた。


 「兄さま、謝ることなんてひとつもないんですよ。兄さまの体が僕の魔力でいっぱいになってるなんて最高です」


 うっとりするような表情でエミリオは、ハルトヴィーツの体を手でなぞるとハルトヴィーツはビクッと体を大きく反らした。


 「ひゃっ!あ、え…なんで」


 体がおかしい。
エミリオの手が少し触れただけなのに、怖いほどに過剰に体が反応してしまった。
困惑するハルトヴィーツに対して、エミリオは少し考えるような仕草をしてから口を開いた。


 「魔力を急激に満たしたから体が敏感になっているんでしょうか…それとも体質?いずれにせよ今、僕が触れるのはよくないですね。めちゃくちゃにしちゃいそうなので」


 「?めちゃくちゃ…?」


 きょとんとするハルトヴィーツに、エミリオは「なんでもありません」と優しく微笑む。


 「僕はとりあえずクリスタルに行ってから、執務室で仕事してきます」


 「オレも帰還の儀を…」


 「兄さまは今日はゆっくりしてください。帰還の儀なんて明日でいいです。アトラス、兄さまの介抱よろしくね」


 いつからそこに居たのか、アトラスはタオルを持って立っていた。
エミリオがアトラスのもとに歩いていく。


 「その顔やめろ、兄さまが怖がる。今はこれ以上触れるつもりはないよ。恋人のお前がなんとかしてあげて」


 アトラスにしか聞こえないような小さな声でエミリオが言うと、ひらひらと手を振って部屋を出て行った。
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