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第二十四章 絶望と失意の花束を

神を鎖で繋ぐ施設

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 神という力を数字で覗き込み、その偉大さと恐ろしさに私たちの言葉はため息のように落ちっぱなしだ。
 その中で親父がフィナに尋ねてくる。

「サノアの力は記録されていないのかい、フィナの嬢ちゃん? ま、本当にそんな神様がいればだけど」
「残念だけど記録はない。サノアの存在は不確かのままね」


「いや、あの方はいらっしゃる」

 この声を出したのはもちろん私だ。
 フィナと親父は私にきょとんとした表情を見せている。
 彼らの顔をさらに驚きに満ちたものへ変えることはできるが、人があまり高貴な存在を語るようなものでもないだろう。
 だから私は、冗談めかした真実を口にする。


「最近、サノア様の御力を身近に感じるようになってな。あの方は私たちの身近にいて、見守って下さっている。私たちが一人で歩いて行けるかどうかをな」
「なにそれ、あんたって信心深かったっけ?」
「旦那、フィコンに毒されたんですか?」
「ふふふ、さてな。それでだ、少々フィナの紹介の順番が気になるのだが……」
「あ、気づいた」

 と、フィナが声を上げると、キサが私が言わんとしていたことを言葉に表した。
「古代の人たちをあとに持ってきて神様を先に持ってきたということは、あの六人は神様よりも強いってことだね~」


 キサの言葉に、皆の背中にはぞくりとしたものが走った。
 グーフィスとエクアは互いに言葉を掛け合う。
「だ、だって、数百万や数千万の力だぜ。それを超えるって。なぁ、エクアさん」
「ええ、めちゃくちゃじゃないですか……フィナさん、本当にキサちゃんの言った通り?」

 皆の視線がフィナに注がれる。
 そのフィナは軽く微笑み、片目を閉じる仕草を見せた。
「安心して、あの六人全員が滅茶苦茶強いってわけじゃないから」
「それでも、超える人物が混じっているんだな、フィナ?」
「それを今から見せるから、ま、楽しんで」


 そう言ってフィナはモニターの表面をさすり、神々を消して、六人の姿を呼び戻した。
「では、順番に数値を読み上げていくよ。まずは三人。爺さんと金髪のおっさんと肌の黒い女性ね」

 爺さん――2356・金髪のおっさん――3577
 黒い肌の女性――353849


 この数字の並びに私たちは拍子抜けして、カインが言葉を漏らす。

「たしかにお強いですが、神々と比べると……その黒い肌の女性だけが勇者並みですが」
「この三人はね。ちなみに古代人の平均値っぽいのはわかってる。1300前後」
「私たちの平均が100。かなりの強さですね。ですが、スカルペル人の強者であれば渡り合える程度」
「そうね。正直、ずば抜けている黒い肌の女性が敵となっても、私たちでも何とかなりそう……問題は残りの三人。いくよ……」


 黒髪の銀眼の美女――8000万
 銀髪の眠そうな少女――1億2000万
 黒髪の切れ長の目の男性――15億7000万


 突然の強さのインフレに誰もが言葉を閉ざす。
 それでも私は何とか言葉を生む。

「け、桁違いにもほどがあるだろう! 特にこの黒髪の男性は何者だ!?」
「さぁね。少なくとも三人とも人間っぽいけど、単独で神を蹴散らせる存在。そして、この男性は笑いも消えるくらいにヤバい存在」
「私なんぞ息を吹きかけられるだけで消されてしまうな……なるほど、ここまで来てようやく君が何を見せたくて、何を懸念しているのかわかってきた」


 私は彼女の後ろにある、王都が望める窓を見る。
 今は窓の向こうに王都はなく、トレンチコートを着たウサギがマフィアと銃撃戦を繰り広げる映像が映っているが。
 
 それはさておき、皆も気づいているらしく、私の視線に促されるように窓の向こう側を見つめる。
 私は窓へ視線を向けたまま、フィナへ話しかける。


「懸念はこの窓の映像の向こうに隠れている、水球に眠る金髪の男性のことだな。フィナ、彼の数値は?」
「現状では2800。ただし、目覚めた際にどの程度膨らむかわからない。彼にあんたの銀眼と同様ならば、ここから四・五倍程度。せいぜい一万数千程度。でも……」

「最悪、そんな計算を嘲笑う強さを持つ可能性があるわけか。億ともなれば私たちの手に負える存在ではない。親父さんの言うとおりかもしれん。ここは殺せるうちに殺したおいた方が」
「ケント、それは拙速よ」
「うん?」

「ここは古代人の遺跡。高位存在を知り、それを捕らえていた形跡がある」
「つまり?」
「この遺跡を使えば、相手の力を押さえた状態で拘束することが可能ってことよっ」
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