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スライムツイストドロー〜目指せ最速のその先へ〜

釣れたのは?

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湖にて釣りをすること30分、未だにヒットは無し。

「なかなか釣れないね。」

「大物は臆病なの。だから待って誘う、それが釣りのコツよ。」

「けど、何も釣れないとつまらないよ。」

やはり5歳児のロレンは少々飽きるのが早い時期であるため釣りでは獲物がかからないと直ぐにつまらなく感じてしまったようだ。

「じゃあロレンあっちの小川との合流地点でザリガニを釣るのはどう。ザリガニなら釣り上げるのが難しいけれどすぐにヒットするよ。」

ロレンか飽きてしまったためレナがロレンにザリガニ釣りを提案。

「じゃあそっちをやる!」

ロレンはすぐにそちらに興味を示す。

「ザリガニ釣りは木の棒を使ってやるからちょっと待ってね。」

「うん。」

レナは程よい木の棒と枝を見つけると余った糸を使いザリガニ釣りの仕掛けを作っていく。

「うん出来た。はい、ロレン。」

レナは二つほど竿を作ると一つをロレンに渡す。

「ロレン、今からお手本をお姉ちゃんが見せるからよく見ててね。」

「うん、レナ姉さん。」

レナは小川に竿を振りじっと静かにする。

ポチャ

それは幻聴にも思えるほど小さくささやかな音だった。次の瞬間レナは竿を上げると枝にザリガニが掛かっていた。

「レナ姉さんスゴイ!」

パチパチ

ファニも触手で拍手を送る。

「これはホタルザリガニって言うザリガニで夜になると光るハサミがザリガニで小川にたくさんいるザリガニだからロレンも取りやすいと思うからやってみて。」

ロレンもレナのように竿を振る。そしてじっと静かに待つ。

「ロレン今!」

ロレンはレナの合図で竿を上げる。しかし力が強すぎたのかザリガニは釣れたものの吹っ飛び地面に落ちた。

「ちょっと力み過ぎたね。」

「うん。次はもう少し弱くやってみる。」

「じゃあもう一匹釣ったらビアンカのところに戻ろうか。そしてお菓子を食べよう。」

「うんわかった。」

ロレンは再び竿を振る。

スー

(今だ!)

今度はレナの合図抜きで竿を上げる。

「やったあ釣れた!」

今度は力が強すぎるといったこともなく釣り上げられたロレン。

「じゃあこのバックの中に入れて。」

レナのバックにザリガニを入れるとすっと消えるように入った。

「レナ姉さんこのバックは?」

「このバックは父さんが冒険者時代に使っていた物の一つで一定の力を持たない物なら見た目以上に入る空間精霊に魔法をかけてもらったバックなんだって。」

「じゃあファニも入るのかな。」

ロレンがファニを掴みバックの中に入れようとする。しかしファニは必死に抵抗しロレンの手から抜け出し服の中を這いずり廻る。

「ファニくすぐったいよ。」

「今のはロレンが悪いよ。ロレンはまだ母さの授業で習ってないけれど主人となったモンスター一部の上位種を除いて主人から離れたがらないの。空間精霊の魔法で作られたものは遠く行ったような感覚になるらしいからファニはそれを嫌がったんだよ。」

「ファニ、そうなの?」

ファニは丸印を出しロレンをペチペチと叩く。その様子はまるで飼い主いじめられた猫が仕返しをするようで可愛らしかった。

「ファニごめんね。」

謝罪の意を込めてファニをぎゅっと抱きしめファニを撫でる。

「……ロレン、そろそろ行こう。」

少々ロレンとファニの様子を見てファニを羨ましいと思ってしまったレナだがグッと堪えてロレン達にビアンカ達のところに行こうと促す。

「うん、レナ姉さん。」

そう言いロレンは一足先にビアンカ達のところに戻って行った。

ポーン

「マッコリ?」

マッコリはレナに擦り寄ってまるで手で叩くようにレナの足にポンと身体を貼り付けた。

「ありがとう。」

そうこれはマッコリなりの慰めである。

「行こうマッコリ。」

レナとマッコリはロレン達を追いかけた。

◆◆◆

「ビアンカ姉さーん釣れたー?」

ロレンは大きな声でビアンカに向かって叫ぶ。

「そうねえロレンが入ってからは虹メダカとスライムスネークヘッドの小さいのが釣れたくらいよ。」

「スライムスネークヘッド?」

「そ、ほら実物がそこの魚籠に入っているから見てきなさい。」

ビアンカがすぐ脇を指差す。

ロレンが魚籠の中を見るとそこには2センチくらいの細長くスケスケな魚と虹色に光る体長3.5センチはある大きなメダカが泳いでいた。

「ロレン君この大きなのが虹メダカでスケスケのお魚がスライムスネークヘッドだよ。」

ロレンが覗き込んでいるとミーナが説明をしてくれた。

「なんでスケスケなの?」

「このスネークヘッドって種類のお魚は他のモンスターの特徴を真似たのが多いお魚で他のモンスターの特徴を用いてから外敵のモンスターから隠れたり威嚇したりするの。だから色んな種類があるんだけどその中でもスライムスネークヘッドはスケスケになって水と同じ色になることで他のモンスターから隠れるためだよ。」

「うーん。とりあえずスケスケには意味があるってこと?」

「うんそれであってるよ。ごめんねロレン君。お姉さんじゃちょっとロレン君に説明するには理解できてないみたいだから。」

「うん。けどためになったよミーナお姉さん。」

「うん、ありがとうロレン君。」

「ところでミーナお姉さん。スワンヌは?」

「スワンヌは湖の中だよ。そろそろ出てくると思うからロレン君は湖に入らないようにね。」

「はーい。」

「そういえばロレン。レナは?」

「レナ姉さんな…「ロレン置いてかないでよ。」…ごめんなさいレナ姉さん。」

ロレンが答えようとした時にはもうレナが戻ってきた。

「もうロレンったらレナを置いて先にこっちにきたの。ロレンはたださえここの場所は初めてなんだし迷子にでもなって私たちを困らせたらどうするの?」

「ごめんなさい。」

「ほら謝るだけじゃなくて次からはどうするの?」

「次からは姉さん達のことを待っています。」

「はいよろしい。ロレンが森の中迷子にでもなったら母さん達だけではなくて村のみんなにも迷惑がかかることになるから肝に命じて起きなさい。」

「はい…。」

ビアンカの言っていることは妙に現実性がありロレンの心にグサッと突き刺さる。

「ロレン君。実はねビアンカちゃんと私が実際に森で迷子になった時そうなったから言っているんだよ。だから本当に気をつけてね。」

(謎の声S:やはり自分の経験した辛い出来事などは身近な人には経験させたく無いと思うから自然と注意する口調が厳しくなる。この法則は法律の作り方にも当てはまることであり、学校の先生などの注意することも極端な例では死亡事故などが起きている場合も結構ある。故に先人の経験や世界的な取り組みに目を傾けるきっかけとするのはやはり親などの教育なのかもしない。

by思春期に親に逆らいまくった人)

「うん。」

「重い話はここまでにして釣りに戻ろうぜ!竿も揺れてるしよ。」

ラルが場を盛り上げようとロレン達の竿が揺れていることを告げる。

「え、ラルそれなら早く言いなさいよ。」

ビアンカは慌てて竿を取る。
 
「ロレンとミーナの竿もしなっているぜ。」

「ラル、ありがとう。」

「ラルちゃんありがとう。」

ロレン達はラルにお礼を言い竿を手に取る。

「よっと。」

ビアンカはロレン達が竿を取っている間に魚を釣り上げたようだ。

魚はどうやらカワハギの形をしたものが釣れたようだ。

「釣れた!」

続いてミーナが白色のスネークヘッドを釣っていた。

「とりゃ!」

ぷるぷるぷる

ロレンも無事に釣れたようだが、かかっていたのはなんとスライムだった。

ぷるぷるぷる     
スライムはぷるぷる震えている。

釣れたスライムは体長15センチのファニに対して倍近くある限りなく白色に近い薄紅色の半透明なスライムだった。

「ねえ、ビアンカ姉さん達の釣った魚はなんて言うの?」

自分がスライムを釣ったことに現実逃避をしながらビアンカ達の釣った魚に話題を晒すロレン。

「これはホースレザーっていうお魚で噛みごたえがあって美味しいわよ。」

「私が釣ったのは、ホワイトスネークヘッドってお魚だよ。」

「スライムスネークヘッドとは何が違うの?」

「スライムスネークヘッドは身が柔らかくてゼリーより固いくらいだけどホワイトスネークヘッドの身は普通のお魚と同じくらいで他にも皮を乾燥させてこの辺より上の方の土に撒くと植物が育ちやすくなるの。」

「そうなんだ。」

ぷるぷるぷる
スライムはぷるぷる震えている。

ロレン君現実逃避継続中。

スライムは未だに吊られたままぷるぷる震えている。

そんな状況の中レナは包丁を取り出し、魚を締めていく。

ズパッ ザク プシュッ

かなり手慣れた手つきである。あっという間に4匹全て締めるとロレンに聞いた。

「ロレンこのスライムどうする?」

「どうすればいいかな。」

ぷるぷるぷるスライムは仲間になりたそうにしている。

ロレンの思考は既に現実を見ていなかった。
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