上 下
19 / 89
魔法のある世界で

018.ラーラの親権争い?01

しおりを挟む
「ラーラ、あ~その、何だ。良ければおじさんの子にならないか?」
 考古学者で魔法使いだというおじ様が、そう言った。

「あっっ!ルゼルジュ様!ずるいですっ!ラーラは我が伯爵家で保護しようと思ったのに!」
 と、サラさんがおじ様に抗議した。

「何をいう!年頃のお前がこんな小さな子供をいきなり迎え入れればそれこそ、変な噂がたつぞ!未婚の母とかなんとか!」

「そんな事は一向に構いませんわっ!何だったら、そういう事にしてもっ!」

「馬鹿者、サンキス伯爵おやを泣かす気か!」

「孫ができたって大喜びですわよっっ!」

「んな訳ないだろうっっ!」

 いきなりのサラさんとおじ様の二人が口論を始めた。
 私をどちらが引き取るかで争っている。

 …ありがたい事である。

 いかんせん、この三歳児のナリでは、働くこともままならない…。
 誰か大人の庇護は不本意ながら絶対的に不可欠だ。

「そ、それに、それで言ったらルゼルジュ様だって!隠し子だと言われかね…」

「それだっっ!」

「「えええええ~っ!」」
 サラさんとメイドさんが叫んだ。

 私も内心、びっくりだ。
 奥さんとか怒るよね?

「いやいやいや!よく聞け!わたしも養女という事は頭に浮かんだんだが、まず養女にしたいと言ってもラーラには、もともと戸籍とかこの国この世界での足跡そくせきが全くないんだぞ!どうやって周りを納得させる?」

「そ、それは!」

「それにだ!こんなにも超絶見目麗しい子供がいきなり遺跡から、ましてや遺跡の中の卵から出たなど言ってみろ!良くも悪くもたちまち人々の噂や憶測にまみれまくるに違いない!ひいては役人やら何やらがこの子の事を探りまくり手続きはいつまでたっても進まず、その間、この子のこの国での所在は不確かで、どんな扱いになるかもわからん!」

「そ!それはっ!」「た…確かに…」サラさんとメイドさんは悔しそうに納得の言葉をもらした。

「サ、サラお嬢様、ルゼルジュ様のおっしゃる事にも一理ありますわ!この神聖なる髪色に紫水晶の瞳、これだけでも、よからぬ輩は狙うでしょうし、よほど手厚い護り手がないと!」

 おおお、『可愛い』は正義で最強だと思っていたのにまさかの綺麗可すぎるせいでの弊害が?

 銀色の髪ってそんな珍しいのか…?
 綺麗可愛いと喜んだものの…なるほど…何事もほどほどが一番だったようである。

 …タマチャン、髪色とかは標準指定にできなかったのか…と今さらなことを思っていた。

 とは言え、まさかまた試験管に戻って染色体調整の上、細胞分裂からやりなおしてという訳にもいかないだろう…。
 染めるっていうのもありか?
 でも、今更か?と私なりに色々悩んでみるが、やっぱり今更だと思う。

「ぐぬぬ…」と、サラさんが、うなっている。

 どうも私の親権争いに関しては、おじ様が優勢のようだ。
 取りあえず、私は黙って傍観していた。

「つまりだ、私が遺跡巡りで各国で旅していた先、遠い遠い異国で恋に落ち出来た子だとでも言えば、万事解決なわけだ!」

 自身満々にそう言うおじ様に私は、まさかの三歳児らしからぬ発言をした。

「おじしゃま?おくしゃん、怒らない?『不倫』とおもわれりゅよ?」

「「「えっっ!」」」

 あ、いっせいに振り向かれた。

 すごい目を見開いてる。
 あ、三歳児が”不倫”なんて言ったら驚くか!やばい?

「い、一体どうして、”不倫”だなどとそんな下世話な言葉を…」

「はっ!もしかして、失われし文明国にも不埒な殿方がいたのですかね?あっ!ラーラはもしかして側室の子供との跡継ぎ争いの末に命を狙われたのでは?そして、それを案じた宮廷魔導士によってこの魔道具で生き延びさせたとか!」

 おお、サラさん、新たなる脚本ストーリィが!壮大な…題して”失われし王国サスペンス”???みたいな?
 想像力たくましいね!すごいよ!うん!
 でもまぁ、実際は中身が三十二歳のおばさんだとは、さすがに思いつかないよね。ははははは(←心の中の乾いた笑い)

「いやいや、もしかしたら、悪者が、この卵に閉じ込めたのかも分からんぞ!」
 あ、おじ様まで…。

 何か話がそれてきた…。
 私は一体どうなるのかな…。
 まさかの脱線状態に、ちょっと不安になる私だった。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……

踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです (カクヨム、小説家になろうでも公開中です)

幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。

秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚 13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。 歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。 そしてエリーゼは大人へと成長していく。 ※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。 小説家になろう様にも掲載しています。

異世界で生きていく。

モネ
ファンタジー
目が覚めたら異世界。 素敵な女神様と出会い、魔力があったから選ばれた主人公。 魔法と調合スキルを使って成長していく。 小さな可愛い生き物と旅をしながら新しい世界で生きていく。 旅の中で出会う人々、訪れる土地で色々な経験をしていく。 3/8申し訳ありません。 章の編集をしました。

私は逃げます

恵葉
恋愛
ブラック企業で社畜なんてやっていたら、23歳で血反吐を吐いて、死んじゃった…と思ったら、異世界へ転生してしまったOLです。 そしてこれまたありがちな、貴族令嬢として転生してしまったのですが、運命から…ではなく、文字通り物理的に逃げます。 貴族のあれやこれやなんて、構っていられません! 今度こそ好きなように生きます!

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

お飾り公爵夫人の憂鬱

初瀬 叶
恋愛
空は澄み渡った雲1つない快晴。まるで今の私の心のようだわ。空を見上げた私はそう思った。 私の名前はステラ。ステラ・オーネット。夫の名前はディーン・オーネット……いえ、夫だった?と言った方が良いのかしら?だって、その夫だった人はたった今、私の足元に埋葬されようとしているのだから。 やっと!やっと私は自由よ!叫び出したい気分をグッと堪え、私は沈痛な面持ちで、黒い棺を見つめた。 そう自由……自由になるはずだったのに…… ※ 中世ヨーロッパ風ですが、私の頭の中の架空の異世界のお話です ※相変わらずのゆるふわ設定です。細かい事は気にしないよ!という読者の方向けかもしれません ※直接的な描写はありませんが、性的な表現が出てくる可能性があります

ラフィリアード家の恐るべき子供たち

秋吉美寿
ファンタジー
英雄と女神と呼ばれるラフィリアード家の子として生まれたジーンとリミアの双子たちと彼らと関わる人間たちとの物語。 「転生」「生まれ変わり」「誓い」「魔法」「精霊の宿りし”月の石”」 類い稀なる美貌と知性!そして膨大な魔力を身に秘めた双子たちの憧れ、『普通の学園生活』を過ごさんと自分達のことを知る人もいないような異国へ留学を決意する。 二人は身分もその姿さへ偽り学園生活を始めるのだった。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

処理中です...