上 下
16 / 89
魔法のある世界で

015.新しい名前

しおりを挟む
 ルゼルジュさんは、背が高くて三歳児サイズの私から見たら見上げると首が痛くなりそうなくらい大きい。
 それを考慮してくれての事か、膝をついてかがむようにして私に目線をあわせてくれた。
 よかった。
 このおじ様も優しい良い人みたいだ。

「恐がらなくていいぞ、わたしは、ルゼルジュ、考古学者で魔法使いだ」
 ほう、考古学者…魔法がある世界でも学者はいるようだ。なるほどなるほど…。

「ところで、記憶がないという事だけど自分の名前はわかるかい?」

 ふむ、名前くらいは本当の事を言っても大丈夫か!と私は思い、その名を口にした。

「えと…桐生きりゅう綺羅きら

「「「え?」」」

っていうの。きりゅうきら」

「「「キリィ・キラ?」」」

 三人が一斉に強張ったように叫んだ。
 あれ?なんでだ!?

「えと…きら…が名前で、きりゅうが苗字…」

「ミョージ?」

 そうか、ここは、多分、名前が前にくるんだな?でも、なんで、名前に驚いた声だしたんだろ?

「きら・きりゅう!といいましゅ!」

「「「キラ・キリィ?」」」

「キリィじゃなくて、きりゅうでしゅ!」

「「あわわわわ」」
 何故かサラさんとメイドさんが真っ青になっている。
 何、私の名前が何か???

「ははっ!まさか!!とはね」
 ルゼルジュさんが、意味ありげに笑った。
 何?その感じ??

「笑い事じゃございませんわ!こんな事、誰かに聞かれたら!」
 だから、何?

「そっ!そうですわ!」
 何事ぉぉぉぉ?

 私が名前を言った途端の不穏な空気…私は自分の名前がそんなに不吉なのか?
 全然、大丈夫じゃなかったみたいだ。

 まだ拙い言葉で頑張って聞いてみた。

「わたちの名前…何か…わりゅい?」

「いや、悪くはないんだが、この国の王家の王位継承者のみが名乗るセカンドネームがと言うんだ」

 うわ!なに?それ!すっごい

 でも、私の名前が先だと思うし…って、でもまずいよねぇ…百三十五億年前から私は綺羅きらですってのも言えないしね…。うむむ
 私が困った顔をしているとサラさんやメイドさんはもっと困った顔をして呟いていた。

「ファーストネームがでセカンドネームがだなんて!」
「そうよね…王位継承権のみに与えられる称号に、それ以外の王族のみに使われるだなんて…」

「キリィちがゆの!なにょ!」どうやら、ここの国の言葉では桐生きりゅうというのは発音しずらいらしい。

「銀色の卵から現れた女の子…本物の伝説の…?いや、いくらなんでも…」ルゼルジュがぼそりと呟いた。

「え?何ですかルゼルジュ様?」

「い、いや、何でもない」

「とっ!取りあえず、その呼び名は呼びずらいですわ!何か別の呼び名を考えましょう!」

「うむ、そうだな」

「じゃあ、新しいお名前ほしいの」

 三人の様子から、王族と名前が被るのは、相当、宜しくないらしいと悟り、私は自分から名前を変える事を提案した。
 もめ事になりそうな事は出来るだけ回避したい!


「「「そ、そうね(だな)」」」
 三人の大人達は、ほっとしたように、そう言った。

「可愛いお名前がいいの!」

 そう!新しい人生のはじまりだし、新たに名前をつけるのもいいかも?せっかくだから、可愛い名前がいい。

「じ、じゃあ、とりあえず、”ラーラ”でどうだろう?娘ができたらラーラという名を付けようとおもっていたんだが、うちには息子しかできなかったんだ」

 ルゼルジュさんがそう言って、ラーラとめ言う名を提案してくれた。
 私も凄くその名前が気にいった。
 可愛し何より簡単で発音しやすい!

「はい!可愛い名前っ!ラーラ!」

「おお、気にいったか!」

「はいっ!とっても!」

 私はにっこりとほほ笑んだ。

 可愛く笑えただろうか?笑顔!大事!この世界でも、きっとね!

 そして私のこの世界、この国での名前は”ラーラ”に決まった。


 と、思ったが…。
 あれ?どうしたのかな?
 三人の大人たちが、ぷるぷると口を押さえて小刻みに震えている。
 何やら顔まで赤いし…。

 まさか、また失敗?私の笑顔、吐きそうなほど気持ちが悪かった?
 怒っている訳では無さそうだけど。ううっ!

 いやいや、めげるな私!
 前向き思考ポジティブシンキングで行くんだ!
 とにかく今の私は三歳児!
 多少の失敗は、この優しい大人達なら許してくれるに違いない!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

あ、出ていって差し上げましょうか?許可してくださるなら喜んで出ていきますわ!

リーゼロッタ
ファンタジー
生まれてすぐ、国からの命令で神殿へ取られ十二年間。 聖女として真面目に働いてきたけれど、ある日婚約者でありこの国の王子は爆弾発言をする。 「お前は本当の聖女ではなかった!笑わないお前など、聖女足り得ない!本来の聖女は、このマルセリナだ。」 裏方の聖女としてそこから三年間働いたけれど、また王子はこう言う。 「この度の大火、それから天変地異は、お前がマルセリナの祈りを邪魔したせいだ!出ていけ!二度と帰ってくるな!」 あ、そうですか?許可が降りましたわ!やった! 、、、ただし責任は取っていただきますわよ? ◆◇◆◇◆◇ 誤字・脱字等のご指摘・感想・お気に入り・しおり等をくださると、作者が喜びます。 100話以内で終わらせる予定ですが、分かりません。あくまで予定です。 更新は、夕方から夜、もしくは朝七時ごろが多いと思います。割と忙しいので。 また、更新は亀ではなくカタツムリレベルのトロさですので、ご承知おきください。 更新停止なども長期の期間に渡ってあることもありますが、お許しください。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

とある元令嬢の選択

こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。

虐げられた令嬢、ペネロペの場合

キムラましゅろう
ファンタジー
ペネロペは世に言う虐げられた令嬢だ。 幼い頃に母を亡くし、突然やってきた継母とその後生まれた異母妹にこき使われる毎日。 父は無関心。洋服は使用人と同じくお仕着せしか持っていない。 まぁ元々婚約者はいないから異母妹に横取りされる事はないけれど。 可哀想なペネロペ。でもきっといつか、彼女にもここから救い出してくれる運命の王子様が……なんて現れるわけないし、現れなくてもいいとペネロペは思っていた。何故なら彼女はちっとも困っていなかったから。 1話完結のショートショートです。 虐げられた令嬢達も裏でちゃっかり仕返しをしていて欲しい…… という願望から生まれたお話です。 ゆるゆる設定なのでゆるゆるとお読みいただければ幸いです。 R15は念のため。

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...