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四の巻~平成美女は平安(ぽい?)世界で~
106.定近の想いの強さ
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定近は皆が見守る中、亜里沙の前に跪き、乞い願った。
「儂は気の利いた和歌のひとつも読めぬ朴念仁だ。しかし亜里沙殿を想う気持ちならばあの隆などに負けはせぬ。皆の前で誓おう。儂は亜里沙殿の一番が扶久子姫でもかまわぬ。前世からの忠臣を引き離そうとも思わぬ。そんなところも愛おしくてたまらぬ。唯々、亜里沙殿の幸せを願う。そして生涯、其方の幸せのために持てる力のすべてを注ごう。だからどうかこの世界にとどまってほしい。そして私の妻になり儂を其方の夫として側にいさせてはくれまいか?」
そして言いにくそうに言葉をつづけた。
「隆が御仏が遣わした亜里沙殿の相手だったとしても儂は…儂は…あの者よりもっと其方を大切にする!どうか先ほど儂の部屋で交わした想いをなかったことにはしないでほしい」
その言葉に亜里沙は胸が詰まった。
自分も定近様の事をお慕いしている。
そんなことはわかっていたし定近様がこんな醜女でも望んでくれるならば妻となりたいとおもったし妻になると返事もした。
でも、この世界で不細工とされる自分がまさか、こんなにも想ってもらえるなど夢にも思っていないことだった。
前世の記憶を持ち続けていた亜里沙だが平成での15年の人生の記憶もあり、正直、美醜のこだわり等、無きに等しい。
要は中身である。
そして譲れないもの…それは前世は主、平成の世界では親友で幼馴染の扶久子の存在である。
自分は一番でなくとも良いなどと、まったくもって何と都合の良き事をいうのかと亜里沙は、驚いた。
そして、定近ほどの人物が自分如きにそこまでの想いを…と改めて感極まった。
定近はただ黙って、頭を下げて亜里沙の返答をまった。
例えその返事が自分の望みに沿わぬものだったとしても亜里沙の幸せだけを願って生きていこうと意を決していた。
「定近様…なんともったいなきお言葉でしょう…」
「っ!亜里沙殿っ!では、儂を選んでくれると思ってよいのか?」と定近が頭を上げ亜里沙との距離を詰め確かめるように、その両の手を握った。
亜里沙はこくりと頷いた。
その顔を耳まで真っ赤に染めながら…。
「もとより、先ほど定近様のお部屋でお返事はしたではありませぬか…たとえあの隆が御仏の選びし運命の相手だったとしても私は定近様と添い遂げたいと思います」
「亜里沙殿!」「定近様!」
二人は周りが見守る中、すっかり二人だけの世界で盛り上がり、気が付けば抱きしめあっていた。
そして周りもそれを生温かい目で見守っていたが、扶久子がそっと義鷹と是成の背を押し、その場に恋しあう二人を残し外に出たのだった。
「儂は気の利いた和歌のひとつも読めぬ朴念仁だ。しかし亜里沙殿を想う気持ちならばあの隆などに負けはせぬ。皆の前で誓おう。儂は亜里沙殿の一番が扶久子姫でもかまわぬ。前世からの忠臣を引き離そうとも思わぬ。そんなところも愛おしくてたまらぬ。唯々、亜里沙殿の幸せを願う。そして生涯、其方の幸せのために持てる力のすべてを注ごう。だからどうかこの世界にとどまってほしい。そして私の妻になり儂を其方の夫として側にいさせてはくれまいか?」
そして言いにくそうに言葉をつづけた。
「隆が御仏が遣わした亜里沙殿の相手だったとしても儂は…儂は…あの者よりもっと其方を大切にする!どうか先ほど儂の部屋で交わした想いをなかったことにはしないでほしい」
その言葉に亜里沙は胸が詰まった。
自分も定近様の事をお慕いしている。
そんなことはわかっていたし定近様がこんな醜女でも望んでくれるならば妻となりたいとおもったし妻になると返事もした。
でも、この世界で不細工とされる自分がまさか、こんなにも想ってもらえるなど夢にも思っていないことだった。
前世の記憶を持ち続けていた亜里沙だが平成での15年の人生の記憶もあり、正直、美醜のこだわり等、無きに等しい。
要は中身である。
そして譲れないもの…それは前世は主、平成の世界では親友で幼馴染の扶久子の存在である。
自分は一番でなくとも良いなどと、まったくもって何と都合の良き事をいうのかと亜里沙は、驚いた。
そして、定近ほどの人物が自分如きにそこまでの想いを…と改めて感極まった。
定近はただ黙って、頭を下げて亜里沙の返答をまった。
例えその返事が自分の望みに沿わぬものだったとしても亜里沙の幸せだけを願って生きていこうと意を決していた。
「定近様…なんともったいなきお言葉でしょう…」
「っ!亜里沙殿っ!では、儂を選んでくれると思ってよいのか?」と定近が頭を上げ亜里沙との距離を詰め確かめるように、その両の手を握った。
亜里沙はこくりと頷いた。
その顔を耳まで真っ赤に染めながら…。
「もとより、先ほど定近様のお部屋でお返事はしたではありませぬか…たとえあの隆が御仏の選びし運命の相手だったとしても私は定近様と添い遂げたいと思います」
「亜里沙殿!」「定近様!」
二人は周りが見守る中、すっかり二人だけの世界で盛り上がり、気が付けば抱きしめあっていた。
そして周りもそれを生温かい目で見守っていたが、扶久子がそっと義鷹と是成の背を押し、その場に恋しあう二人を残し外に出たのだった。
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