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四の巻~平成美女は平安(ぽい?)世界で~

70 ある日隠れ屋に迷い込み…③ By隆

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「何じゃこりゃあ!こっこれは鉄の塊か!」と、おっさんは手でばしばしと車をたたいた。

「何って車ですよ。普通のワンボックス!」

「わん…ぼ?何じゃそりゃ」と不思議そうにしながらも窓をバンバンたたく。

「ちょっと!壊さないでくださいよ!会社の車なんですからっ!」

「かいしゃ?何じゃ。さっきからお主の言う事は、さっぱりじゃの~。じゃがしかし、お主が別世界からの迷い人らしき事は分かったぞ?」

「はぁ?別世界?それこそ何ですか?」

「ふむ、まず、この世界にこのわんぼ?ナントカという物はない。少なくとも儂は見たことが無いし聞いたこともない」

「なっ!何言ってるんですか?ここは日本でしょう?」

「はぁ?ニホン?ここは京の都から離れた山奥ぞ!」

「京の都って、じゃあやっぱり日本じゃないですか!」

「お主の言う事はさっぱりわからん!」

「こっちこそ!よくわかんないですよ」

 そう言ってまたしばらくの間、問答が続いたが、結局のところ、最終的にわかったのは、この世界での日本での呼び名はヤマトで日本とは呼ばないこと。
 そして、どうも平安時代っぽいこと。(歴史にそこまで詳しい訳ではないが、建築物には少し興味があって建物が奈良とか平安の時代の作りであることがうかがわれた)

 そして、落ち着いた答えは結局のところおっさんの言うとおり、別世界(異世界)からの迷い人であるという事だった。
 そして聞けばおっさんは、隠居した右大臣家の元総領、藤原ふじわらの定近さだちかだと言うではないか!
 右大臣家って!右大臣家って!
 これってやっぱりタイムスリップ?なのか?それとも平安風の異世界なのか、そこまでは歴史に詳しくない自分は只々、困惑するのだった。
  唯、ひとつ言える確かな事は、ここは昨日までいた世界では無いという事だった。

 そして、イケ渋で太っ腹な定近さだちか様は、行くところのない僕を屋敷に住まわせてくれるという。
 行く当てのない僕はこの有り難い申し出を受けて、一緒に暮らす事になったのだが…。


 さて!外から見た美しい外観の御屋敷は中へ入ると『ゴミ屋敷』だった!

「な・ん・す・か!こりゃあ~!」
 僕は思わず定近様に詰め寄った。
「は…ははは!」
「あんた、前の右大臣家の総領で偉いんだろう?大殿おおとの様なんだろう?身の回りの世話をしてくれる人はどうしたんだよ?召使は?」

「いや~、面倒くさいんで全部、追い払った!」

「何ですと?何でそんな事!」

「いや、儂、人嫌いじゃから」

「え?何で?じゃあ何で僕を住まわせてくれる気に?」

「は、ははっ!そうじゃのう。しいて言えば其方が儂を恐れた感じが無かったからかのう?」

「はぁ?何で?定近様、なんだかんだ言って優しいじゃん。イケオジ(イケてるおじさん)だし」

「イケ…なんじゃソレ?」

「いや、カッコいいおじ様っつうことだよ」

「なっっ!何を嘘くさい!そんな見え透いたお世辞を言わずとも、おいてやるわ!」と、定近様は、何やら顔を真っ赤にして怒って?いや?照れてるのかな?何このおっさん、純情か?

「いや、お世辞じゃないって!けど、僕、こんなゴミ屋敷嫌だなぁ」と思わず本音で言うと定近様は、分かりやすくしゅんとした。

 え?何々?このおっさん、ちょっと可愛いんですけど…と何だか可笑しくて笑ってしまった。

「ぷっ!何、がっかりしてんの?出て行ったりしないよ。行く当てもないし!ただ、勝手に片づけさせてもらうからね」と、居候させてもらうのになぜか強気な僕の上から発言だったが、定近様はそんな事、気にもしない様子で…。

「お?おおぅ。助かる」そう言って、それはそれは良い笑顔になったのだった。

 うわぁ~、モテそう…それが、俺のその時の感想だった。
 そして、僕は、それ以来、この屋敷の管理を一手に引き受ける事となったのだった。
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