61 / 107
参の巻~平安美女と平成美男の恋話~
61 かぐや姫を想って(壱) By帝 (ストーリー再開いたしました!)
しおりを挟む
長らくお待たせいたしました。
偶々、私生活の方もトラブルが多かったことと読者様の少数ではありますがこの作品への批判めいたコメントに心弱く太刀打ちできず、一旦、筆をおいた私ですが…。
今回、自粛自粛と騒がれる中、図らずも時間が出来たので、気持ちを新たに切り替えて小説を書くことを再開しようと思いました。
前話にて、一旦、無理やり最終回としておりましたが、時を経て、ようやくお話を再開する心持になれました。
今更とは思いますが、励まして下さった読者の方々ありがとうございます。
つたないお話ではありますがハッピーエンドだけは確約の物語です。
宜しければ、続きをお楽しみください。 令和4月16日 秋吉美寿
下記より本編↓
----------------------------------------------------------------------------------
かの姫は、まるで余が心に描いた理想そのものような姫だった。
そう…永遠に手には入らぬ理想の…。
まさに物語の「かぐや姫」の如く。
鬼神の君が姫を早々に連れ帰った後、控えていた『暁の尚侍』が余に声をかけてきた。
暁の尚侍とは、私がまだ東宮の頃より使えしの古参の尚侍である。
古参とは言っても私より十ほど年上なだけの姉のような存在でだ。
ちなみに尚侍とは天皇の側仕えであり臣下が天皇に対して提出する文書を取り次いだり、天皇の命令を臣下に伝えること(内侍宣)などもし、准位は従五位のち従三位。定員は二名だが、現在の尚侍は暁の君一人である。
「主上、あの姫を尚侍として召されませ」
「な、暁の尚侍…何を」
「主上に仕える尚侍は現在、私一人でございますが、もう一人信頼できる尚侍を迎えたいと常々、申し上げておりましたではないですか」
「しかし、かの姫は鬼神の君の…」
「いいえ!もしかしたら凛麗の君の言う通り、かの姫は自分を救ってくれたという鬼神の君への恩返しのつもりで鬼神の君の嫁になろうとしているのやもしれませぬ」
「いや、しかし、かの姫はああも、きっぱりと言い放っていたではないか?義孝様ただ一人をお慕いしている…と!」
「それとて、恩返しする方法がそれしかないとお考えだったからではないでしょうか?自分を救ってくれた恩人に女子の身では、出来る事などそれしか思いつかなかったのでは?」
「な、なるほど…ありえなくはないが…」
そんな尚侍の多少、妄想も入り混じった考えに、若干呆れつつも余は話を聞いた。
その可能性が全くないとは言い切れないからだ。
そして、そうであれば…と思ってしまった。
「確かに鬼神の君…義鷹殿は大変、お人柄の優れた御方ではございますが、正直、数多の女性たちに好まれるとは言えませぬ…正直、私も御簾ごしにお声を聞く位ならともかく正面から向き合うのは憚れまする」
「そ…それは、あまりの言いようではないか?」
「申し訳ありませぬ。しかし、普通の女性ならばそうなのです」
…それは、もうきっぱりはっきりと、いっそ清々しいくらいの言い切りようであった。
そんな容赦のない尚侍の言葉にかなり引いたが、この見た目至上主義な貴族の社会においては正直、尚侍の言う事も『あり得る』と納得せざるをえなかった。
「私はあの姫が哀れで…かの姫がもし職もありある程度の地位もあれば何も嫁にまでならずとも鬼神の君へ助けてくれた事の恩返しが出来るのでは?と思ったのです」
そして自分の考え(妄想?)にどんどん勝手に確信していく尚侍はさらに言葉を続けた。
「尚侍であれば、それなりのお給金も頂けますし、代理に住まいを用意もできまする。何も右大臣家に間借りせずとも暮らせますし義鷹殿がご担当の代理での内向きのお仕事上の事のお力にもなれまする」
「何より、尚侍ともなれば、主上が望めば女御にお迎えする事とてできますし、あのように心清らかな姫君なれば上様の女御としてお迎えするのに何の不足もございませぬ」
「な、何を!」
「主上!私の目は誤魔化せませんよ」
「な、何を…?」
「主上はあの姫をいたく気に入られたのでござりましょう?幼き頃よりお仕えしてきたこの暁には隠せませぬぞ!」
「そ、それは…」
「お優しい主上はあの姫が真に義鷹殿が好きなのならばと敢えて身を引こうとお考えになった!違いますか?」
…違わない。
違わないが…そんな姫が本当は義鷹の事は好きではないなどと、そんなにこちらに都合の良い事があり得るのか?と訝しんだ。
だが、もしも暁の尚侍の言う事があたっているならば?
姫をお救いすることにもなるのでは?とも思えた。
い、いやいや、それこそあの愚かなる従弟(凛麗の君)と一緒になっえしまうではないか。
そんな考えを払拭するように余はぶんぶんと首を左右に振った。
「暁の尚侍が言うような可能性がないとは言えぬが、すべて憶測…ましてや姫君は、自らのご意思で鬼神の君を選んだのだ。余が女御に迎えたい等と申せばかの姫をこそお苦しめしてしまうではないか」
余は、自分に言い聞かせるように尚侍にそう言った。
ざわめく心を抑えつつ…。
「では、こうしましょう!主上!まずは、女御云々は言わず尚侍への伺いをたてましょう。何も直ぐに女御になれと言っている訳でもないのですから」
「いや、しかし尚侍の宣旨をしてしまえば、姫の心がどこにあろうが、断れまい。それこそ姫が望んでおらずとも右大臣家の体面を考えれば…」
「ですから、内々に伺いを立てるのですわ。右大臣家のご当主、園近様もご正室様もそれはそれはお人好しでいらっしゃいますれば、姫君の気持ちを一番に汲んで下さるに違いありません」
「そ…そうだろうか?」
図らずも余はこの尚侍の提案にのってしまったのだった。
所詮、私もあの愚かな従弟と同じ穴のムジナだったというところだろうか。
偶々、私生活の方もトラブルが多かったことと読者様の少数ではありますがこの作品への批判めいたコメントに心弱く太刀打ちできず、一旦、筆をおいた私ですが…。
今回、自粛自粛と騒がれる中、図らずも時間が出来たので、気持ちを新たに切り替えて小説を書くことを再開しようと思いました。
前話にて、一旦、無理やり最終回としておりましたが、時を経て、ようやくお話を再開する心持になれました。
今更とは思いますが、励まして下さった読者の方々ありがとうございます。
つたないお話ではありますがハッピーエンドだけは確約の物語です。
宜しければ、続きをお楽しみください。 令和4月16日 秋吉美寿
下記より本編↓
----------------------------------------------------------------------------------
かの姫は、まるで余が心に描いた理想そのものような姫だった。
そう…永遠に手には入らぬ理想の…。
まさに物語の「かぐや姫」の如く。
鬼神の君が姫を早々に連れ帰った後、控えていた『暁の尚侍』が余に声をかけてきた。
暁の尚侍とは、私がまだ東宮の頃より使えしの古参の尚侍である。
古参とは言っても私より十ほど年上なだけの姉のような存在でだ。
ちなみに尚侍とは天皇の側仕えであり臣下が天皇に対して提出する文書を取り次いだり、天皇の命令を臣下に伝えること(内侍宣)などもし、准位は従五位のち従三位。定員は二名だが、現在の尚侍は暁の君一人である。
「主上、あの姫を尚侍として召されませ」
「な、暁の尚侍…何を」
「主上に仕える尚侍は現在、私一人でございますが、もう一人信頼できる尚侍を迎えたいと常々、申し上げておりましたではないですか」
「しかし、かの姫は鬼神の君の…」
「いいえ!もしかしたら凛麗の君の言う通り、かの姫は自分を救ってくれたという鬼神の君への恩返しのつもりで鬼神の君の嫁になろうとしているのやもしれませぬ」
「いや、しかし、かの姫はああも、きっぱりと言い放っていたではないか?義孝様ただ一人をお慕いしている…と!」
「それとて、恩返しする方法がそれしかないとお考えだったからではないでしょうか?自分を救ってくれた恩人に女子の身では、出来る事などそれしか思いつかなかったのでは?」
「な、なるほど…ありえなくはないが…」
そんな尚侍の多少、妄想も入り混じった考えに、若干呆れつつも余は話を聞いた。
その可能性が全くないとは言い切れないからだ。
そして、そうであれば…と思ってしまった。
「確かに鬼神の君…義鷹殿は大変、お人柄の優れた御方ではございますが、正直、数多の女性たちに好まれるとは言えませぬ…正直、私も御簾ごしにお声を聞く位ならともかく正面から向き合うのは憚れまする」
「そ…それは、あまりの言いようではないか?」
「申し訳ありませぬ。しかし、普通の女性ならばそうなのです」
…それは、もうきっぱりはっきりと、いっそ清々しいくらいの言い切りようであった。
そんな容赦のない尚侍の言葉にかなり引いたが、この見た目至上主義な貴族の社会においては正直、尚侍の言う事も『あり得る』と納得せざるをえなかった。
「私はあの姫が哀れで…かの姫がもし職もありある程度の地位もあれば何も嫁にまでならずとも鬼神の君へ助けてくれた事の恩返しが出来るのでは?と思ったのです」
そして自分の考え(妄想?)にどんどん勝手に確信していく尚侍はさらに言葉を続けた。
「尚侍であれば、それなりのお給金も頂けますし、代理に住まいを用意もできまする。何も右大臣家に間借りせずとも暮らせますし義鷹殿がご担当の代理での内向きのお仕事上の事のお力にもなれまする」
「何より、尚侍ともなれば、主上が望めば女御にお迎えする事とてできますし、あのように心清らかな姫君なれば上様の女御としてお迎えするのに何の不足もございませぬ」
「な、何を!」
「主上!私の目は誤魔化せませんよ」
「な、何を…?」
「主上はあの姫をいたく気に入られたのでござりましょう?幼き頃よりお仕えしてきたこの暁には隠せませぬぞ!」
「そ、それは…」
「お優しい主上はあの姫が真に義鷹殿が好きなのならばと敢えて身を引こうとお考えになった!違いますか?」
…違わない。
違わないが…そんな姫が本当は義鷹の事は好きではないなどと、そんなにこちらに都合の良い事があり得るのか?と訝しんだ。
だが、もしも暁の尚侍の言う事があたっているならば?
姫をお救いすることにもなるのでは?とも思えた。
い、いやいや、それこそあの愚かなる従弟(凛麗の君)と一緒になっえしまうではないか。
そんな考えを払拭するように余はぶんぶんと首を左右に振った。
「暁の尚侍が言うような可能性がないとは言えぬが、すべて憶測…ましてや姫君は、自らのご意思で鬼神の君を選んだのだ。余が女御に迎えたい等と申せばかの姫をこそお苦しめしてしまうではないか」
余は、自分に言い聞かせるように尚侍にそう言った。
ざわめく心を抑えつつ…。
「では、こうしましょう!主上!まずは、女御云々は言わず尚侍への伺いをたてましょう。何も直ぐに女御になれと言っている訳でもないのですから」
「いや、しかし尚侍の宣旨をしてしまえば、姫の心がどこにあろうが、断れまい。それこそ姫が望んでおらずとも右大臣家の体面を考えれば…」
「ですから、内々に伺いを立てるのですわ。右大臣家のご当主、園近様もご正室様もそれはそれはお人好しでいらっしゃいますれば、姫君の気持ちを一番に汲んで下さるに違いありません」
「そ…そうだろうか?」
図らずも余はこの尚侍の提案にのってしまったのだった。
所詮、私もあの愚かな従弟と同じ穴のムジナだったというところだろうか。
1
お気に入りに追加
335
あなたにおすすめの小説
【短編集】人間がロボットになるのも悪くないかも?
ジャン・幸田
大衆娯楽
人間を改造すればサイボーグになる作品とは違い、人間が機械服を着たり機械の中に閉じ込められることで、人間扱いされなくなる物語の作品集です。
二度目の勇者の美醜逆転世界ハーレムルート
猫丸
恋愛
全人類の悲願である魔王討伐を果たした地球の勇者。
彼を待っていたのは富でも名誉でもなく、ただ使い捨てられたという現実と別の次元への強制転移だった。
地球でもなく、勇者として召喚された世界でもない世界。
そこは美醜の価値観が逆転した歪な世界だった。
そうして少年と少女は出会い―――物語は始まる。
他のサイトでも投稿しているものに手を加えたものになります。
気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。
sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。
気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。
※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。
!直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。
※小説家になろうさんでも投稿しています。
何を言われようとこの方々と結婚致します!
おいも
恋愛
私は、ヴォルク帝国のハッシュベルト侯爵家の娘、フィオーレ・ハッシュベルトです。
ハッシュベルト侯爵家はヴォルク帝国でも大きな権力を持っていて、その現当主であるお父様にはとても可愛がられています。
そんな私にはある秘密があります。
それは、他人がかっこいいと言う男性がとても不細工に見え、醜いと言われる男性がとてもかっこよく見えるということです。
まあ、それもそのはず、私には日本という国で暮らしていた前世の記憶を持っています。
前世の美的感覚は、男性に限定して、現世とはまるで逆!
もちろん、私には前世での美的感覚が受け継がれました……。
そんな私は、特に問題もなく16年生きてきたのですが、ある問題が発生しました。
16歳の誕生日会で、おばあさまから、「そろそろ結婚相手を見つけなさい。エアリアル様なんてどう?今度、お茶会を開催するときエアリアル様をお呼びするから、あなたも参加しなさい。」
え?おばあさま?エアリアル様ってこの帝国の第二王子ですよね。
そして、帝国一美しいと言われている男性ですよね?
……うん!お断りします!
でもこのまんまじゃ、エアリアル様と結婚させられてしまいそうだし……よし!
自分で結婚相手を見つけることにしましょう!
6年後に戦地から帰ってきた夫が連れてきたのは妻という女だった
白雲八鈴
恋愛
私はウォルス侯爵家に15歳の時に嫁ぎ婚姻後、直ぐに夫は魔王討伐隊に出兵しました。6年後、戦地から夫が帰って来ました、妻という女を連れて。
もういいですか。私はただ好きな物を作って生きていいですか。この国になんて出ていってやる。
ただ、皆に喜ばれる物を作って生きたいと願う女性がその才能に目を付けられ周りに翻弄されていく。彼女は自由に物を作れる道を歩むことが出来るのでしょうか。
番外編
謎の少女強襲編
彼女が作り出した物は意外な形で人々を苦しめていた事を知り、彼女は再び帝国の地を踏むこととなる。
私が成した事への清算に行きましょう。
炎国への旅路編
望んでいた炎国への旅行に行く事が出来ない日々を送っていたが、色々な人々の手を借りながら炎国のにたどり着くも、そこにも帝国の影が・・・。
え?なんで私に誰も教えてくれなかったの?そこ大事ー!
*本編は完結済みです。
*誤字脱字は程々にあります。
*なろう様にも投稿させていただいております。
私を裏切った相手とは関わるつもりはありません
みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。
未来を変えるために行動をする
1度裏切った相手とは関わらないように過ごす
龍王陛下は最強魔術師の王配を溺愛する
秋月真鳥
BL
ヨシュアはラバン王国の王弟で、魔術師だ。
大陸で一番大きな国であり、国土の隅々まで水の加護が行き渡って、豊かに栄える志龍(ジーロン)王国の龍王と政略結婚をする。
結婚式前の顔合わせで龍王は言った。
「あなたを愛するつもりはない」
それに対して、ヨシュアの反応は冷ややかなものだった。
「アクセサリーを愛するなんて、あなたは変態なのですか?」
険悪に始まった結婚生活。
ヨシュアと龍王は打ち解けて、歩み寄り、平和な家庭を築けるのか。
政略結婚から始まる中華風ボーイズラブ。
一章はくっ付くまでの物語、二章からは甘々のラブラブ日常物語です。
※奇数話が龍王(攻め)視点、偶数話がヨシュア(受け)視点です。
※険悪から始まるのでなかなかエロには到達しません。
他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる