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参の巻~平安美女と平成美男の恋話~

61 かぐや姫を想って(壱) By帝 (ストーリー再開いたしました!)

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長らくお待たせいたしました。
偶々、私生活の方もトラブルが多かったことと読者様の少数ではありますがこの作品への批判めいたコメントに心弱く太刀打ちできず、一旦、筆をおいた私ですが…。
今回、自粛自粛と騒がれる中、図らずも時間が出来たので、気持ちを新たに切り替えて小説を書くことを再開しようと思いました。


前話にて、一旦、無理やり最終回としておりましたが、時を経て、ようやくお話を再開する心持になれました。
今更とは思いますが、励まして下さった読者の方々ありがとうございます。
つたないお話ではありますがハッピーエンドだけは確約の物語です。


宜しければ、続きをお楽しみください。                  令和4月16日 秋吉美寿


下記より本編↓
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  かの姫は、まるでが心に描いた理想そのものような姫だった。
 そう…永遠に手には入らぬ理想の…。
 まさに物語の「かぐや姫」の如く。

 鬼神の君義鷹が姫を早々に連れ帰った後、控えていた『あかつき尚侍ないしのかみ』が余に声をかけてきた。
 暁の尚侍とは、私がまだ東宮の頃より使えしの古参の尚侍である。
 古参とは言っても私より十ほど年上なだけの姉のような存在でだ。

 ちなみに尚侍とは天皇の側仕えであり臣下が天皇に対して提出する文書を取り次いだり、天皇の命令を臣下に伝えること(内侍宣)などもし、准位は従五位のち従三位。定員は二名だが、現在の尚侍は暁の君一人である。

主上おかみ、あの姫を尚侍として召されませ」

「な、暁の尚侍…何を」

主上おかみに仕える尚侍は現在、私一人でございますが、もう一人信頼できる尚侍を迎えたいと常々、申し上げておりましたではないですか」

「しかし、かの姫は鬼神の君義鷹の…」

「いいえ!もしかしたら凛麗の君の言う通り、かの姫は自分を救ってくれたという鬼神の君義鷹殿への恩返しのつもりで鬼神の君義鷹殿の嫁になろうとしているのやもしれませぬ」

「いや、しかし、かの姫はああも、きっぱりと言い放っていたではないか?義孝様ただ一人をお慕いしている…と!」

「それとて、恩返しする方法がそれしかないとお考えだったからではないでしょうか?自分を救ってくれた恩人に女子おなごの身では、出来る事などそれしか思いつかなかったのでは?」

「な、なるほど…ありえなくはないが…」

 そんな尚侍の多少、妄想も入り混じった考えに、若干呆れつつも余は話を聞いた。
 その可能性が全くないとは言い切れないからだ。
 そして、そうであれば…と思ってしまった。

「確かに鬼神の君義鷹…義鷹殿は大変、お人柄の優れた御方ではございますが、正直、数多あまた女性にょしょうたちに好まれるとは言えませぬ…正直、私も御簾みすごしにお声を聞く位ならともかく正面から向き合うのは憚れまする」

「そ…それは、あまりの言いようではないか?」

「申し訳ありませぬ。しかし、普通の女性にょしょうならばそうなのです」

 …それは、もうきっぱりはっきりと、いっそ清々しいくらいの言い切りようであった。
 そんな容赦のない尚侍の言葉にかなり引いたが、この見た目至上主義な貴族の社会においては正直、尚侍の言う事も『あり得る』と納得せざるをえなかった。

「私はあの姫が哀れで…かの姫がもし職もありある程度の地位もあれば何も嫁にまでならずとも鬼神の君義鷹へ助けてくれた事の恩返しが出来るのでは?と思ったのです」

 そして自分の考え(妄想?)にどんどん確信していく尚侍はさらに言葉を続けた。

「尚侍であれば、それなりのお給金も頂けますし、代理に住まいを用意もできまする。何も右大臣家に間借りせずとも暮らせますし義鷹殿がご担当の代理での内向きのお仕事上の事のお力にもなれまする」

「何より、尚侍ともなれば、主上おかみが望めば女御にお迎えする事とてできますし、あのように心清らかな姫君なれば上様の女御としてお迎えするのに何の不足もございませぬ」

「な、何を!」

主上おかみ!私の目は誤魔化せませんよ」

「な、何を…?」

主上おかみはあの姫をいたく気に入られたのでござりましょう?幼き頃よりお仕えしてきたこの暁には隠せませぬぞ!」

「そ、それは…」

「お優しい主上おかみはあの姫が真に義鷹殿が好きなのならばと敢えて身を引こうとお考えになった!違いますか?」

 …違わない。
 違わないが…そんな姫が本当は義鷹の事は好きではないなどと、そんなにこちらに都合の良い事があり得るのか?といぶかしんだ。

 だが、もしも暁の尚侍の言う事があたっているならば?
 姫をお救いすることにもなるのでは?とも思えた。

 い、いやいや、それこそあの愚かなる従弟(凛麗の君)と一緒になっえしまうではないか。
 そんな考えを払拭するように余はぶんぶんと首を左右に振った。

「暁の尚侍が言うような可能性がないとは言えぬが、すべて憶測…ましてや姫君は、自らのご意思で鬼神の君義鷹を選んだのだ。余が女御に迎えたい等と申せばかの姫をこそお苦しめしてしまうではないか」
 余は、自分に言い聞かせるように尚侍にそう言った。
 ざわめく心を抑えつつ…。

「では、こうしましょう!主上おかみ!まずは、女御云々は言わず尚侍への伺いをたてましょう。何も直ぐに女御になれと言っている訳でもないのですから」

「いや、しかし尚侍の宣旨をしてしまえば、姫の心がどこにあろうが、断れまい。それこそ姫が望んでおらずとも右大臣家の体面を考えれば…」

「ですから、内々に伺いを立てるのですわ。右大臣家のご当主、園近様もご正室様もそれはそれはお人好しでいらっしゃいますれば、姫君の気持ちを一番に汲んで下さるに違いありません」

「そ…そうだろうか?」
 図らずも余はこの尚侍の提案にのってしまったのだった。
 所詮、私もあの愚かな従弟と同じ穴のムジナだったというところだろうか。
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