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参の巻~平安美女と平成美男の恋話~
57 かぐや姫の凱旋?(四)
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帝は扶久子をみて驚きを隠せず、食い入るように扶久子を見ていた。
そう、これまで見たどんな美姫よりも、噂のかぐや姫(扶久子)は美しく可愛らしかったのだ。
尼のように短い髪すらも清々しく逆に好ましく見えた。
扶久子はその強い眼差しに狼狽えた。
(こわっ!怖い怖い怖い~っ!何なに何なのぉぉぉぉ~!)扶久子は心の中で叫びまくっていた。
その視線から思わず目をそらせばその隣には白いカバ…もとい凛麗の君が青い顔をして立っていた。
扶久子はそのカバ…いや、凛麗の君をみると怒りがふつふつとよみがえり(帝に凝視された恐怖も忘れて)
愛しい義鷹と自分の婚儀を邪魔したにっくき敵ではないかとガチでにらみつけた。
その視線に気づいた帝がふっと笑った。
「かのかぐや姫は我が従弟殿に大層ご立腹のご様子…これでは義鷹との婚儀が伸びたところで、其方に一縷の望みもないように思うがな」と笑いながら凛麗の君の顔をみた。
「なっ!なななっ…帝、何をおっしゃっているのですか?わ…私は何も…姫君が望みもしない婚姻を迫られているのではとご心配申し上げただけで…」と、凛麗の君の慌ててとりつくろうその様は、それはもうみっともなかった。
「恐れながら申し上げまする!私は、義鷹様の妻となれる事を心から望んでおりました!それをいくら言っても聞きもせず望みもしないのに右大臣家に忍び込み私を攫おうとした御方に良い印象など持てよう筈もございません」
扶久子は、もしも帝にあったなら絶対に、言いつけてやろうと考えていた台詞を言い放ったのだった。
「なんと…」帝は呆れたように凛麗の君をみて眉をひそめた。
情けない者を見るような帝の目に凛麗の君は取り繕うようにしどろもどろにいい訳をつらつらと言い始めた。
「あ…いや…その…。ひ…姫君は、きっと恩人の義鷹に気を使って…」
そんな男らしくない凛麗の君の態度に苛立った扶久子はかぶせるように言葉を放った。
「私は自分が嫌なら例え恩人であろうが自分より身分の高い相手であろうがはっきりとお断りいたします。私は凛麗の君にもはっきりと申し上げました!私のお慕いするのは義鷹様だけだと!」
扶久子のそのきっぱりとした態度に帝は大きな声をあげて笑いだした。
今まで(この世界では)美しい凛麗の君をこうもきっぱりと袖にした女性など見た事も聞いた事もなかったからである。
正直、凛麗の君の節操の無さに身内として頭を悩ませていた帝にとってこの扶久子の凛麗の君へのきっぱりとした態度は小気味が良かった。
「ははははっ!なんと!虫も殺さぬような可愛らしきお顔で中々に小気味の良い物言いの姫君じゃ!いや、あっぱれぞ!」
後ろでハラハラとしていた亜里沙や紅葉、楓の三人は青くなったり白くなったり変な汗を掻き通しだったが、帝が本当に楽しそうに笑った事でほっと胸をなでおろしていた。
そして義鷹は?といえば、いつでも姫をつれて駆け落ちする覚悟は出来ていたので一人、どんと構えて、姫の暴走さえも愛しさが込み上げると言う大物っぷりを発揮していた。
帝は言った。
「時盛(凛麗の君)、其方には蟄居を申し付ける!身を慎めと言うておったのに、またもや友と呼ぶ者の許嫁を掻っ攫おうなどと…そんな男になびくのは所詮、その程度の女性よ。かぐや姫は其方の見た目にも揺るがぬ素晴らしき姫君じゃ。其方程度の男にはなびかぬという事じゃ。あきらめよ!」
そう、義鷹の父、園近が言っていたように帝は、なかなかに賢き良き天下人であった。
************************************
(解説※蟄居:自宅の一室に謹慎させる事)
そう、これまで見たどんな美姫よりも、噂のかぐや姫(扶久子)は美しく可愛らしかったのだ。
尼のように短い髪すらも清々しく逆に好ましく見えた。
扶久子はその強い眼差しに狼狽えた。
(こわっ!怖い怖い怖い~っ!何なに何なのぉぉぉぉ~!)扶久子は心の中で叫びまくっていた。
その視線から思わず目をそらせばその隣には白いカバ…もとい凛麗の君が青い顔をして立っていた。
扶久子はそのカバ…いや、凛麗の君をみると怒りがふつふつとよみがえり(帝に凝視された恐怖も忘れて)
愛しい義鷹と自分の婚儀を邪魔したにっくき敵ではないかとガチでにらみつけた。
その視線に気づいた帝がふっと笑った。
「かのかぐや姫は我が従弟殿に大層ご立腹のご様子…これでは義鷹との婚儀が伸びたところで、其方に一縷の望みもないように思うがな」と笑いながら凛麗の君の顔をみた。
「なっ!なななっ…帝、何をおっしゃっているのですか?わ…私は何も…姫君が望みもしない婚姻を迫られているのではとご心配申し上げただけで…」と、凛麗の君の慌ててとりつくろうその様は、それはもうみっともなかった。
「恐れながら申し上げまする!私は、義鷹様の妻となれる事を心から望んでおりました!それをいくら言っても聞きもせず望みもしないのに右大臣家に忍び込み私を攫おうとした御方に良い印象など持てよう筈もございません」
扶久子は、もしも帝にあったなら絶対に、言いつけてやろうと考えていた台詞を言い放ったのだった。
「なんと…」帝は呆れたように凛麗の君をみて眉をひそめた。
情けない者を見るような帝の目に凛麗の君は取り繕うようにしどろもどろにいい訳をつらつらと言い始めた。
「あ…いや…その…。ひ…姫君は、きっと恩人の義鷹に気を使って…」
そんな男らしくない凛麗の君の態度に苛立った扶久子はかぶせるように言葉を放った。
「私は自分が嫌なら例え恩人であろうが自分より身分の高い相手であろうがはっきりとお断りいたします。私は凛麗の君にもはっきりと申し上げました!私のお慕いするのは義鷹様だけだと!」
扶久子のそのきっぱりとした態度に帝は大きな声をあげて笑いだした。
今まで(この世界では)美しい凛麗の君をこうもきっぱりと袖にした女性など見た事も聞いた事もなかったからである。
正直、凛麗の君の節操の無さに身内として頭を悩ませていた帝にとってこの扶久子の凛麗の君へのきっぱりとした態度は小気味が良かった。
「ははははっ!なんと!虫も殺さぬような可愛らしきお顔で中々に小気味の良い物言いの姫君じゃ!いや、あっぱれぞ!」
後ろでハラハラとしていた亜里沙や紅葉、楓の三人は青くなったり白くなったり変な汗を掻き通しだったが、帝が本当に楽しそうに笑った事でほっと胸をなでおろしていた。
そして義鷹は?といえば、いつでも姫をつれて駆け落ちする覚悟は出来ていたので一人、どんと構えて、姫の暴走さえも愛しさが込み上げると言う大物っぷりを発揮していた。
帝は言った。
「時盛(凛麗の君)、其方には蟄居を申し付ける!身を慎めと言うておったのに、またもや友と呼ぶ者の許嫁を掻っ攫おうなどと…そんな男になびくのは所詮、その程度の女性よ。かぐや姫は其方の見た目にも揺るがぬ素晴らしき姫君じゃ。其方程度の男にはなびかぬという事じゃ。あきらめよ!」
そう、義鷹の父、園近が言っていたように帝は、なかなかに賢き良き天下人であった。
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(解説※蟄居:自宅の一室に謹慎させる事)
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