上 下
21 / 107
参の巻~平安美女と平成美男の恋話~

㉑そして…。

しおりを挟む
 一人、勘違いな考えに納得していた園近だったが、扶久子が質の悪い女狐では無かった事自体に安堵すると満足気に芙蓉の方の部屋を後にした。
 園近も、時間さえあれば、もう少し芙蓉や芙蓉のお気に入りの姫ともっと語り合ってみたかったが、如何せん多忙を極めていた。
 最近、この京の都に出没するという盗賊団の捜査の指揮で忙しかったのである。

 右大臣の息子であり都を護る警視の任についている義鷹もまた、そのせいで、この一週間休みなく京の町を見廻り、今日は久しぶりの非番だった。

 芙蓉の方は扶久子が、それはそれは心根の優しい純粋無垢な姫で、育ちも良く、右大臣家の嫁として何ら不足がないと云う事を夫の園近に知らしめたかった。
 芙久子の持つ柔らかな雰囲気はいかにも育ちが良さそうだし、何より着ている着物だとて見たことがないような美しい布が使われている。
 縫い目も、あり得ないほどに均一で美しく、布の柄の模様も細かく染色されていると言うのに滲みひとつなく均一で美しい柄が描かれている。
 さぞかし、高名な職人達の手掛けた着物であろうと思われた。
(※実は柄は安物のプリント柄で、ちゃんとした着物には基本的にはあり得ないミシン縫い!縫い目は、均一な筈である!本当に簡易な撮影用のな着物だった!ちなみに、こちらの世界に来てから何と怖いもの知らずで綺麗好きの亜理砂が二回ほど手洗いで洗濯もしている(笑))

 芙久子の髪は短く肩にかかるほどしかないものの、どれ程の手間暇をかけてきたのかと思う程に美しい。
(※ちなみに平成時代に洗髪に使っていたのは、特売のリンスインシャンプーなのだが、この時代の洗髪等は、米の磨ぎ汁等で洗っていたのだから、そりゃあ髪の質も平安の女性達と比べれば極上といえる)

 そんなこんなを慮っても、芙蓉の方達から見れば何やら事情はありそうではありそうなものの、良いところの姫であることは疑いようもなかった。

 そしてについては、園近が概ね納得した様子だったので芙蓉の方は、半ば”事成れり”とほぼ満足していた。

 芙蓉のように『息子の嫁に!』とやってはいなかったものの、姫の方もまんざらではないのだから何の問題もないと思っていた。

 そう、よもや園近が『息子のことを姫が好きになるなんてあり得ない』ととは夢にも思っていなかったのである。

 芙蓉と女房達は義鷹との縁談話に慌てふためき頬を真っ赤に染めて恥じらう扶久子の様子に浮かれまくっていた。

 そんな時、御簾越しにまた二つの人影がみえた。
 手前の人影が御簾の内へと声をかける。

「芙蓉の御方様、扶久姫様、亜里沙にございます」

「まあ、亜里沙?私を紅葉さんや楓さんに預けたかと思ったら一体どこに行っていたの?」と、芙久子が恨めし気に言うと亜里沙はふふんと不敵な笑みを浮かべた。

「おそれながら、芙久姫がお寂しそうに見えましたので、義鷹様をお連れしましてございます」ドヤ顔で答える亜里沙である。

「「「まあ!」」」

「「「なんと、さすがは姫君がではなく友達ともと呼ぶほどの女房よ!よい働きをする!」」」と三人が声を揃えて称賛した!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

気付いたら異世界の娼館に売られていたけど、なんだかんだ美男子に救われる話。

sorato
恋愛
20歳女、東京出身。親も彼氏もおらずブラック企業で働く日和は、ある日突然異世界へと転移していた。それも、気を失っている内に。 気付いたときには既に娼館に売られた後。娼館の店主にお薦め客候補の姿絵を見せられるが、どの客も生理的に受け付けない男ばかり。そんな中、日和が目をつけたのは絶世の美男子であるヨルクという男で――……。 ※男は太っていて脂ぎっている方がより素晴らしいとされ、女は細く印象の薄い方がより美しいとされる美醜逆転的な概念の異世界でのお話です。 !直接的な行為の描写はありませんが、そういうことを匂わす言葉はたくさん出てきますのでR15指定しています。苦手な方はバックしてください。 ※小説家になろうさんでも投稿しています。

【全話挿絵】発情✕転生 〜何あれ……誘ってるのかしら?〜【毎日更新】

墨笑
ファンタジー
『エロ×ギャグ×バトル+雑学』をテーマにした異世界ファンタジー小説です。 主人公はごく普通(?)の『むっつりすけべ』な女の子。 異世界転生に伴って召喚士としての才能を強化されたまでは良かったのですが、なぜか発情体質まで付与されていて……? 召喚士として様々な依頼をこなしながら、無駄にドキドキムラムラハァハァしてしまう日々を描きます。 明るく、楽しく読んでいただけることを目指して書きました。

転生からの魔法失敗で、1000年後に転移かつ獣人逆ハーレムは盛りすぎだと思います!

ゴルゴンゾーラ三国
恋愛
 異世界転生をするものの、物語の様に分かりやすい活躍もなく、のんびりとスローライフを楽しんでいた主人公・マレーゼ。しかしある日、転移魔法を失敗してしまい、見知らぬ土地へと飛ばされてしまう。  全く知らない土地に慌てる彼女だったが、そこはかつて転生後に生きていた時代から1000年も後の世界であり、さらには自身が生きていた頃の文明は既に滅んでいるということを知る。  そして、実は転移魔法だけではなく、1000年後の世界で『嫁』として召喚された事実が判明し、召喚した相手たちと婚姻関係を結ぶこととなる。  人懐っこく明るい蛇獣人に、かつての文明に入れ込む兎獣人、なかなか心を開いてくれない狐獣人、そして本物の狼のような狼獣人。この時代では『モテない』と言われているらしい四人組は、マレーゼからしたらとてつもない美形たちだった。  1000年前に戻れないことを諦めつつも、1000年後のこの時代で新たに生きることを決めるマレーゼ。  異世界転生&転移に巻き込まれたマレーゼが、1000年後の世界でスローライフを送ります! 【この作品は逆ハーレムものとなっております。最終的に一人に絞られるのではなく、四人同時に結ばれますのでご注意ください】 【この作品は『小説家になろう』『カクヨム』『Pixiv』にも掲載しています】

『特別』を願った僕の転生先は放置された第7皇子!?

mio
ファンタジー
 特別になることを望む『平凡』な大学生・弥登陽斗はある日突然亡くなる。  神様に『特別』になりたい願いを叶えてやると言われ、生まれ変わった先は異世界の第7皇子!? しかも母親はなんだかさびれた離宮に追いやられているし、騎士団に入っている兄はなかなか会うことができない。それでも穏やかな日々。 そんな生活も母の死を境に変わっていく。なぜか絡んでくる異母兄弟をあしらいつつ、兄の元で剣に魔法に、いろいろと学んでいくことに。兄と兄の部下との新たな日常に、以前とはまた違った幸せを感じていた。 日常を壊し、強制的に終わらせたとある不幸が起こるまでは。    神様、一つ言わせてください。僕が言っていた特別はこういうことではないと思うんですけど!?  他サイトでも投稿しております。

せっかく美少女に転生したのに出会いが無いので悪役ご主人様に仕えます ー転生先は男女比が崩壊した男だけ美醜逆転ハーレム小説の世界だったー

静電池
恋愛
どうやらこの世界は、男性向けハーレム小説の世界らしい。 浅井萌はせっかく美少女に産まれたのに、男女比が1:30なせいで出会いが無い! 男性だけ美醜逆転の世界で、小説の悪役である不細工(前世ではイケメン)なご主人様のメイドになった萌が、気付かぬ内にご主人様から囲い込まれている話。 ※エロは予告なく入ります。

【R18・完結】あなたの猫になる、いたずら猫は皇帝陛下の膝の上

poppp
恋愛
※ タイトル変更…(二回目‥すみません…)  旧題【R18】お任せ下さい、三度の飯より好きなので! 三度の飯より同衾が好きだと豪語する玲蘭(レイラン・源氏名)。 ある日突然、美醜の価値観の異なる異世界で目覚めるが、異世界といえど彼女の趣味嗜好は変わらない。 レイランから見たら超がつくイケメン達が、何故かそこではゲテモノ扱い。 ゲテモノ(イケメン)専用の遊女になると決めてお客様を待つ日々だったが、ある日彼女の噂を聞きつけ現れた男に騙され、(よく話しを聞いてなかっただけ)、なんと、帝の妃達の住まう後宮へと連れて行かれてしまう。 そこで遊女としての自分の人生を揺るがす男と再会する…。 ※ タグをご理解の上お読み下さいませ。 ※ 不定期更新。 ※ 世界観はふんわり。 ※ 妄想ごちゃ混ぜ世界。 ※ 誤字脱字ご了承願います。 ※ ゆる!ふわ!設定!ご理解願います。 ※ 主人公はお馬鹿、正論は通じません。 ※ たまにAI画像あり。

前世で家族に恵まれなかった俺、今世では優しい家族に囲まれる 俺だけが使える氷魔法で異世界無双

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
家族や恋人もいなく、孤独に過ごしていた俺は、ある日自宅で倒れ、気がつくと異世界転生をしていた。 神からの定番の啓示などもなく、戸惑いながらも優しい家族の元で過ごせたのは良かったが……。 どうやら、食料事情がよくないらしい。 俺自身が美味しいものを食べたいし、大事な家族のために何とかしないと! そう思ったアレスは、あの手この手を使って行動を開始するのだった。 これは孤独だった者が家族のために奮闘したり、時に冒険に出たり、飯テロしたり、もふもふしたりと……ある意味で好き勝手に生きる物語。 しかし、それが意味するところは……。

処理中です...