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epilogue
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「イライアス殿下、それは例の取り調べ報告書ですか」
「『当て馬ヒューと結婚したい』か。セドリックはこの話信じるか?」
エリソン領へ避暑に来ていた私は、夏休みも半ばでリアーナを連れて王都まで戻ることになった。ポロックの第三王子ルパート殿下がフラメル伯爵令嬢に出した求婚の手紙をリアーナが故意に破って捨て、ルパート殿下の求婚に支障をきたしていたというのだ。
しかも「フラメル嬢との誤解は解けて2人は無事婚約出来たが、ルパート殿下がフラメル嬢に近づく度に妨害していたリアーナ嬢と、そのリアーナ嬢を囲っている王太子殿下からしっかりとした説明が欲しい」と、ポロック国から正式に訴えられているらしい。
フラメル嬢が婚約したことにショックを受け泣くヒューバートと、泣いてるヒューバートを見てショックを受けているリアーナと一緒の馬車はまるで地獄のようだった。ヒューバートのことに構わず、リアーナへ手紙の件を聞き出そうとするも「あれは私宛の手紙だ」と埒があかない。そもそもリアーナ宛の手紙だとしても他国の王族からの手紙を破り捨てるなどしていい訳がない。
10歳の頃から王城に住むようになり仲良くなったエイミーに「小さい頃からリアーナに虐められていた」と言われ、簡単にそれを信じリアーナに辛くあたってしまった過去が私にはある。バンクス侯爵夫妻と折り合いの悪い前バンクス侯爵夫人と同じ赤髪赤目、それだけの理由で家族から疎外されかわいそうだと同情もしていた。
その2点だけで無条件でリアーナは純真無垢なのだと思い、リアーナの言う事を信じ込んでいたのだ。エイミーに嘘を吐かれていた時から成長していない自分が嫌になるな。
冤罪をかけられたから、かわいそうな生い立ちだから、それらは別に本人の人格を保証するものになり得ないのだと思い知る。
王城へ戻ったリアーナは尋問を受けるも、支離滅裂で埒があかず、自白剤を投与された。通常、重犯罪を犯した訳でもない貴族が強い副作用のある自白剤を飲むなどあり得ない。それでも投与が決まったのは、国民が熱望していたクライン麻疹の特効薬をもたらしたポロック国を怒らせていることと、リアーナがバンクス侯爵夫妻から見捨てられていたために強く止めるものがいなかったためだ。
自白剤の抜けたリアーナは、副作用により記憶障害を起こし幼児退行してしまったらしい。
「『ここは前世で読んだ物語の中で、自分はドアマットヒロインで、ヒーローのルパート王子と結婚するよりも当て馬ヒューと結婚したいからヒューと結婚する幼馴染からヒューを奪いたかっただけ』ですか。人は狂っていても案外普通に見えるのだなとびっくりしてます」
そう返すセドリックは、生まれ変わりや物語の中の世界だとは一切信じていないようだ。
私も信じてるわけではないのだが『ヒロインが隣国に行った後に先王が死んで、ヒロインの家族は王様に王城を追い出されて、侯爵家は没落して物語はお終い』という部分が引っかかっている。
口外していないが、病を患っている祖父上はもって数ヶ月と言われているし、祖父上が亡くなったら父上はあの叔母家族を追い出し没落させかねない位には腹に据えかねているからだ。
「どっちにしろ、ヒューバートを慰めないとな」
「あいつはかわいそうな女が性癖なのでしょう。現実の女にそれを求めるのは不毛です。かわいそうな女が出てくる小説でも紹介してみます」
------------------------------------
作者の近況ボードでリアーナのネタばらしをします。
所々で匂わせていたリアーナの悪事の答え合わせがしたい方はぜひ。
(匂わせの裏を想像する楽しみが無くなるので、自分で想像したい方や雰囲気を壊したくない方は読まない方がいいと思います)
「『当て馬ヒューと結婚したい』か。セドリックはこの話信じるか?」
エリソン領へ避暑に来ていた私は、夏休みも半ばでリアーナを連れて王都まで戻ることになった。ポロックの第三王子ルパート殿下がフラメル伯爵令嬢に出した求婚の手紙をリアーナが故意に破って捨て、ルパート殿下の求婚に支障をきたしていたというのだ。
しかも「フラメル嬢との誤解は解けて2人は無事婚約出来たが、ルパート殿下がフラメル嬢に近づく度に妨害していたリアーナ嬢と、そのリアーナ嬢を囲っている王太子殿下からしっかりとした説明が欲しい」と、ポロック国から正式に訴えられているらしい。
フラメル嬢が婚約したことにショックを受け泣くヒューバートと、泣いてるヒューバートを見てショックを受けているリアーナと一緒の馬車はまるで地獄のようだった。ヒューバートのことに構わず、リアーナへ手紙の件を聞き出そうとするも「あれは私宛の手紙だ」と埒があかない。そもそもリアーナ宛の手紙だとしても他国の王族からの手紙を破り捨てるなどしていい訳がない。
10歳の頃から王城に住むようになり仲良くなったエイミーに「小さい頃からリアーナに虐められていた」と言われ、簡単にそれを信じリアーナに辛くあたってしまった過去が私にはある。バンクス侯爵夫妻と折り合いの悪い前バンクス侯爵夫人と同じ赤髪赤目、それだけの理由で家族から疎外されかわいそうだと同情もしていた。
その2点だけで無条件でリアーナは純真無垢なのだと思い、リアーナの言う事を信じ込んでいたのだ。エイミーに嘘を吐かれていた時から成長していない自分が嫌になるな。
冤罪をかけられたから、かわいそうな生い立ちだから、それらは別に本人の人格を保証するものになり得ないのだと思い知る。
王城へ戻ったリアーナは尋問を受けるも、支離滅裂で埒があかず、自白剤を投与された。通常、重犯罪を犯した訳でもない貴族が強い副作用のある自白剤を飲むなどあり得ない。それでも投与が決まったのは、国民が熱望していたクライン麻疹の特効薬をもたらしたポロック国を怒らせていることと、リアーナがバンクス侯爵夫妻から見捨てられていたために強く止めるものがいなかったためだ。
自白剤の抜けたリアーナは、副作用により記憶障害を起こし幼児退行してしまったらしい。
「『ここは前世で読んだ物語の中で、自分はドアマットヒロインで、ヒーローのルパート王子と結婚するよりも当て馬ヒューと結婚したいからヒューと結婚する幼馴染からヒューを奪いたかっただけ』ですか。人は狂っていても案外普通に見えるのだなとびっくりしてます」
そう返すセドリックは、生まれ変わりや物語の中の世界だとは一切信じていないようだ。
私も信じてるわけではないのだが『ヒロインが隣国に行った後に先王が死んで、ヒロインの家族は王様に王城を追い出されて、侯爵家は没落して物語はお終い』という部分が引っかかっている。
口外していないが、病を患っている祖父上はもって数ヶ月と言われているし、祖父上が亡くなったら父上はあの叔母家族を追い出し没落させかねない位には腹に据えかねているからだ。
「どっちにしろ、ヒューバートを慰めないとな」
「あいつはかわいそうな女が性癖なのでしょう。現実の女にそれを求めるのは不毛です。かわいそうな女が出てくる小説でも紹介してみます」
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作者の近況ボードでリアーナのネタばらしをします。
所々で匂わせていたリアーナの悪事の答え合わせがしたい方はぜひ。
(匂わせの裏を想像する楽しみが無くなるので、自分で想像したい方や雰囲気を壊したくない方は読まない方がいいと思います)
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返信までありがとうございます。
すごい褒め言葉ばかりで恐縮してます。
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