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第一章
始まりの出来事2
しおりを挟む私は国王陛下よりモロロコシ国第28代聖女に13歳で認定
されました。
気を引き締めて先代聖女様(ババ様)のお教えに従い、
この国の安寧と国民の幸せの為に祈りと癒しに努力します。
こうして聖女のお勤めの活動を開始しました。
この頃、国王陛下から一人の聖騎士様が私専属に付けられ
ました。
お名前をアクリ・ドウ・カッテン様と申されます。
貴族方の中には、平民聖女を貶めてバカにする
方もいらっしゃいます。
体を障ろうとしたり、卑猥な言葉を耳元でささやいたり。
反論出来ない小心者の私の手を取ろうとしてきます。
その度に姉さまシスター達がバカン貴族(バカと言っては
いけません)を遮ってくれたり、司祭様が庇ってくれました。
しかし、私の背後に聖騎士様がいるとその様な事を
して来る貴族方達はいなくなりました。
本当に助かりました。(感謝です)
聖女のお努めにも日々邁進していました。
神殿長ロウニ様、シン司祭様、シスター姉さま達のお導きにより
3年の月日が恙なく経たころ、又もや悲しい出来事が起きました。
神殿長ロウニ様、国王陛下アイラプ様が相次いでお亡くなりに
なられたのです。
私も神殿長ロウニ様の治癒に当たりましたが、ご高齢に加え
ご本人から「ナナミちゃん、私も聖女ババ様に会いたい。
もう充分に生きた。ありがとう、もういいよ」
と言われてしまいました。
(ロウニン様聖女ババ様の下で安らかにお眠り下さいませ)
国王陛下の治癒には当たらせてもらえませんでした。
「聖女だろうが平民など、とんでもない。王宮治癒魔法師が
いるではないですか」王妃様に拒否されました。
ただただ神殿で神々様に陛下のご回復をお祈り申し上げました。
(無念です)
おふたりのご葬儀が国を挙げて次々と行われました。
国全体が暗く沈んだ様に感じます。
また、私を荒波から庇って下さる方々とのお別れでもありました。
新神殿長様になられた方は余り評判が良くない方でした。
間もなくシン司祭様が辺境の教会に移動にまりました。何の力も無い
私にはどうする事も出来ませんでした。
亡くなられた国王陛下アイラプ様にはお子様が
いらしゃいませんでした。
新国王様は母違いの弟殿下でペペサーレ様とおしゃいます。
お顔だけは良いと思います。
ただ平民がお嫌いなお方とお聞きました。
また私専属のルミナシスター姉さまが郊外の孤児院の院長として
赴任されました。栄転です。そう思いたいです。
更に、聖騎士アクリ様のお母様が亡くなられたと知らせが
届きました。
急遽お国の辺境カッテン領に帰る事になりました。
私の周りから親しい方々が、次々といなくなられて
寂しく心細く感じられます。
その頃、新神殿長の執務室には、公爵令嬢のレイエ様と父君の
ファイン公爵様が訪れておられたそうです。
チー太郎は見た。聞いた。
「神殿長様、私、聖女になりたいのです。そうすればペペサーレ
陛下の第一王妃になれますわ。聖女王妃、国母ですわ、ウフフ」
「そうなれば、公爵家としても神殿長に多くの援助を行いますぞ」
有難いお申込みでございます。ありがとうございます」
「神殿としましても卑しい平民聖女なんかより公爵令嬢の
レイエ様を戴いた方が大変名誉であり有難いのです」
「私こそこの国の聖女ですわ。光魔法に治癒魔法完璧ですもの。
あんな田舎聖女より公爵家の娘の方が、高貴ですもの」
「そうとも、レイエお前を娘に持てて私は鼻が高い。
我が公爵家は王家に繋がる家系、この国の中枢にあらねばならない」
「神殿長である私も大いに尽力致しますぞ。
レイエ聖女様がこの国の王妃様になられましたら、どうぞ私を教皇に
お引き立てを賜ります様にお願い申し上げますぞ」
「もちろんですわ。現王妃様、側妃様方々を退けて私が聖女王妃
になります。オホホホホ-」高笑いが響きます。
"梟かいな"と壁の穴から顔出して、見ていた家ネズミ
のチー太郎は可笑しくなり両手で口を押えてしまいました。
王宮ネズミの兄さんが新国王の下のゆるゆる運動を
嘆いていたのを思い出します。
相当ゆるゆるだそうです。
この国大丈夫かいな。我が一族も聖女ババ様のお屋敷に
避難屋敷を確保した方が良いと思う。
(思います。誰の意見ですか?と自分にツッコミ入れます)
お奥さんのツー子に相談しておいた方が良さそうだ。
チー太郎はツー子を探しに神殿壁裏の奥に引っ込みます。
春の日、気温が上がり暖かくなって、お祈り時間も少しづつ
楽になってきました。
膝布団を一枚減らそうかなと思いながらお祈りしています。
神々様ごめんなさい。お祈り中なのに気持ちが散っています。
後ろの席に今日は国王陛下がいらしっていて椅子に座りながら
お祈りしています。
広い祈りの空間に2人だけです。
不意に、乱暴に転がされて。
えぇー 私の上にお太い男の人が載っていらしゃる。何故?
そのお顔は陛下?
不意にテレビの画像が頭に浮かんできた。
鮭の雄が気張っている顔です。「命をかけて子孫を残すぞ」の顔。
いや、違うな。この下卑た顔は女を征服しているぞと叫んでいる。
気持ち悪。
重い。怖い。下が痛い。
私の頭が割れそうに痛い、意識が飛びそうになる。
突然、私の頭から声が響きます。
「この馬鹿、なに気絶しようとしているのよ」
この男許すまじ。このまま黙っていられるものですか。
絶対ぶん殴る。決心した。
右手に拳を作り陛下の二重あごを突き上げます。
「グエー」カエルの声がした。
私は気絶です。意識が飛びました。
遠くに涙声がきこえます。あの声はシスター姉さま。
私のお世話をしてくれているお姉さまです。
何を泣いて怒っているのでしょうか。
「この度、ミミナは偽聖女と確定した。
この聖女様のお部屋を空けて頂きます」
「何故ですか?」
「ここは新たな聖女様である公爵令嬢エイダ様のお部屋になる」
「では、ミミナ聖女様は?」
「5階のメイド部屋に移したいところなのだが階段が大変なので
地階の部屋にした。すぐに移せ」
四人の聖騎士達がベットシーツ毎聖女様を部屋から
運び出そうとします。
「待って下さいませ。せめて聖女様が目覚めるまで
猶予を下さいませ。それに、あそこは日の光も入らず
風通しも悪いのです。あんまりです。貴方様も先日まで
聖女様にお仕えしていたではありませんか。
聖騎士アクリ様ならお助けくださいます。
どうかご連絡下さいませ」
「悪いが、アクリ殿は辞めた。今は私が聖騎士部隊の隊長だ。
ささっと偽聖女を移せ」
私の頭中はぐるぐる回転してます。前世を思い出していました。
「国王陛下を害した者だ。直ぐに斬首刑でもおかしくない
のに、温情を頂いているのだ」
目が開きません。手も動かせません。声も出せません。
私はそのままシーツ毎運ばれました。
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