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【第五章:エデン第五区画/特殊物理学研究ラボ】

【第59話】

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『美味しかったね、カズミちゃん!!』
「ええ、とても いいお点前でございました。ありがとうございます。」
 上位管理者アンドロイド3体と戦闘用(と思しき)蜘妹メイドな人型アンドロイドと共に食卓を囲んだソルジャー・マツモト。
 拒否すると言う選択肢が無い状況だったとはいえ、一服盛られていなかっただろうか。
 そんな不安を感じつつも、本当に美味しかった料理の数々にマツモトは正直に答えつつ天真欄漫なキンカクに応える。
『ありがとうカズミちゃん。良かったねコウ君!! キミのお料理ニンゲンさんのお口にも会うってさ!!』
 隣であぐらをかくコウガイジを褒めるキンカク。
『ありがとな、ソルジャーのお嬢さん……嬉しいぜ』
 鼻の下をこすりつつはにかむ上位管理者アンドロイド・コウガイジを前に「あんたが作ったんかい!?」 とツッコミかけたマツモトは慌ててそれを胃まで押し返す。
『よしっ、じゃあご飯も終わった事だし……カズミちゃん歓迎会と言えばアレ一択ね!!
 キンちゃん、ちゃぶ台とお皿をお願いできる?』
『了解!!』
 4人が下がったのを確認し、指をパチンと鳴らすキンカク。
 空の食器を乗せたちゃぶ台は床に出現した光の輪の中にゆっくりと沈むように消えて行く。

「あの、お聞きしていいかわからないんですけど……キンカクさんとギンカクさんが出す光の輪は、何なのでしょうか?」
『ああ、あれ? あれはキンカク&ギンカク母ちゃん達のアンドロイド搭載型特殊物理兵器HYOUTAN(ひょうたん)だ。
 まあ主にミクラ・ブレイン様が管理なさっているここの研究内容は脳筋戦闘バカアンドロイドの俺にとっちゃあチンプンカンプンだから説明になっちゃあいないが……まああんたら人間さんの科学技術進歩速度ではああいう風に実用化するどころか何百年どころか何千年、何万年かけても基礎理論すら確立できないとんでもねえ代物だ程度に考えればいい、ソルジャー のお嬢さん』
 もしこの場にレジスタンス軍が有する対暴走アンドロイド兵器技術の数々を独力で作り上げて量産体制まで整えてしまった超天才科学者、エージェント・サンがいらっしゃればヒョウタンなる信じがたい何かについても理解できるかもしれない。
 だが将棋で言えば『歩』、チェスで言えば『ポーン』 でしかない無知なソルジャーの自分では無理だ。
 現実を受け入れて諦めたソルジャー・マツモトは部屋の中央にギンカクが作り出した光の穴からグラサン猫の座布団クッション4枚と白い長方形の何かがジャラジャラと置かれたテーブルを注視する。
『よしっ、出せたよ!! カズミちゃんって麻雀は大丈夫?』
「マージャンですか? ええと、おじいちゃんが好きだったんですけど……教えてもらえますか?」
『いいよ!! じゃあ私が親になるから……カズミちゃんはジェインに教えてもらいながらゆっくり参加してね!!』
『よろしくお願いいたします、マツモト様』

『猫でも分かる!! 麻雀の基本ルールと得点計算』と言う古い本をどこからか取り出した蜘妹メイドアンドロイドにいざなわれるかのように席につこうとしたその時、部屋の角に置かれた黒電話が鳴る。
『私だ……ああ、貴女さまでしたか。大変失礼いたしました、お久しぶりです。
 はい、では直ちにご案内いたしますのでエデン第二区画中央制御塔正面ゲート前でお待ちください』
 黒電話の受話器を置いて通話を終えた蜘妹メイドアンドロイドのジェイン機械の節足をカシャカシャ動かしながら雀卓の方を向く。
『キンカク様、ギンカク様……サン・フトウ様よりお電話でございます。
 私とコウガイジ様がマツモト様に麻雀のルールを説明しておきますので例のアレを発動させていただけますでしょうか?』
『ええーこのタイミングで!? アタシもう国士無双しかない気分だったのに!!』
『キンちゃん、しょうがないよ。ほらっ、早く終わらせちゃお?』
 先に座禅の構えをとり、右手を差し出すギンカクを前に不満げな表情を浮かべながらもキンカクはその手を重ねて座禅の構えを取る。

【MMS 第60話に続く】
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