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【第四章:エデン第三区画/旧総合医療技術研究施設棟】

【第46話】

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『あっ、あのバカは何をやっているのかね!? どういつもりなのかね!?』
 エデン第三区画、生命進化ラボ中央管理施設・ゴソウカン内のどこか。
 コンセイマオウVSチーム・サンの戦いをモニターで見ていた電球の如く上半分が丸く大きくなった頭部を持つ小柄な白衣姿の人物はきいきい声で叫びつつ椅子から飛び降りる。
『モンキーマン君はとにかく、サン君の身になにかがあったらどうするつもりなんだ!?
 直ちに消火ドローンをあの部屋に飛ばさなくては!!』
 巨大な頭部を持つ人物はすぐさま壁に駆け寄り、コンソールパネルを引き出しエデン中央管理塔に出動要請を行う。

 ゴソウカン最上階、上位管理者アンドロイド・コンセイマオウの間
『ほお、流石はモンキーマン……サン様とカワイ娘ちゃんが無事でなによりだ武ウ』
 モンキーマンの槍投げで壁に突き刺さったロッドにナマケモノポーズでぶら下がり、眼下の火の海に震えるソルジャー・マツモトとカッパマンが壁に突き立てた超振動ブレイドを足場にして壁に張り付き、足下の火の海から逃れているサン博士。
「動くな!!」
 グラビディブレイドが自動充電完了しているものの、不安定すぎる足場でそれを抜いて振えないサン博士は電撃銃の引き金に指をかける。
『うむ、ここまでオイラの力を見せつけられて抵抗しようと言うのはすごいと思うけど……いますぐその危ない剣と武器を全部捨てて投降する武ウ。
 さもないと火の海に落ちて消し炭かガスマスクの限界で一酸化炭素中毒になっちゃう武ウよ?』
 ゴソウカン最上階のガラス窓の向こうまで来ている消化ドローンを制止させたコンセイマオウは意地悪く問う。
「……」
『やれやれ、頑固なお方だ武ウ……お嬢ちゃん、恨むならオイラじゃなくてサン様を恨むが良い武ウ』
 そう言いつつ壁に刺さっていた青龍刀を引き抜き、ロッドにぶら下がっているソルジャー・マツモトに向かって行くコンセイマオウ。
「ヒエッ……」
「やっ、やめなさい!! マツモトは無関係よ!!」
 敵が何をする気か分かってしまった2人は声が震える。
『そうはいかん武ウ。 あんたが物騒なモンを捨てて投降してくれないと……このお嬢ちゃんは武ヒヒヒヒ』
 そう言いつつコンセイマオウは青龍刀の切っ先で抵抗できないマツモトが腰に装着した下半身のプロテクターベルトを絡め切り、簡易プロテクターを外してしまう。
「武ヒヒヒヒ……丸くて可愛いお尻だ武ウ。ほれほれチクチクチクチク……どこがええんか? ここか? ここか?」
「くっ……うっ……ぐうっ……」
 スパッツ&スポーツブラ上にぶかぶかのツナギを羽織っただけの無防備で敏感な臀部を青龍刀の冷たく尖った切っ先でチクチク刺激され続けると言う屈辱的な拷問。
 エージェント・サンと共にゴソウカンに突入した時点で覚悟はしていたが、レジスタンスソルジャーとして栄誉ある戦死ではなくヘンタイアンドロイドのおもちゃにされて世界の命運を背負う上官殿の足を引っ張ると言うていたらく。
「エージェント……再度の命令違反、申し訳ありません」
「マツモト!!」
『武ヒッ!?』
 覚悟を決めてモンキーロッドから手を離したマツモトは穏やかな表情で眼下の火の海に自ら落ちて行く。

 ガシャアアアン! ! バリイイイン!!
『なっ……』
 慌てて少女兵士を受け止めようと青龍刀を投げ捨てたコンセイマオウの背後で響く金切り音。
『博士!! 撃てえ!!』
 どうにか火の海を抜け切り、その裏拳で超強化ガラスを叩き割ったモンキーマン。
 その言葉ですぐになすべき事に気が付いたサン博士は割れた窓の向こうでスタンバイさせられていた消火ドローンに電撃弾を射出。
 その強烈な電圧で内部制御機構のエラーを起こした消化ドローン軍団はゴソウカン最上階の部屋に一斉に飛び込み、搭載されていた消火剤の中身を無茶苦茶にばら撒き始める。
『ブッ……ブウウウウ!! お前らやめるブウ!!』
 コンセイマオウは上位管理者アンドロイドとしてドローンを再度制止しようとするものの、その命令を受け付けなくなった消火ドローンはめちゃくちゃに室内を飛び回って消火剤をまき散らす。

【MMS 第47話に続く】
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