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【第四章:エデン第三区画/旧総合医療技術研究施設棟】

【第43話】

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『……それが全てではない、だがそれも一因であったのは事実だ。』
 ガイドアンドロイドとして一部の技術情報とエデン史データベースアクセス権限を与えられているとは言えその質問は明らかにその権限を越えていて上位管理者アンドロイドも閲覧不能レベルな機密情報。
 人工知能としてどうにか職務を全うせんとするサリーに代わってミクラ・ブレインは答える。
「……なるほどね」
 部分的機械化処置が施された巨木とその枝に下がった色とりどりの液球カプセル内でへその緒チューブに繋がれ栄養供給を受けている嬰児を無言で見上げつつ何か考えているサン博士。
 博士は父にして超天才科学者ミクラ・フトウの頭脳を完全複製した電子頭脳とのやりとりを経て何かに気づいており、それはミクラ・フトウの娘にして科学者である彼女にしか見いだせない事だ。
 サン博士の相方としてそれを察していたモンキーマンは警戒態勢を維持したままソルジャー・マツモトとカッパマンを黙らせる。
『サン・フトウよ、今の我がそなたに言えるのはここまでだ……また新たな真実に直面した時には我を呼ぶがよい』
「ええ、その時はそうさせてもらうわじゃあね……パパ」
『うむ、さらばだ』
 どこからともなく響くミクラ・ブレインの音声はぶつりと切れる。
『お前ら、もう大丈夫だ……深呼吸しろ』
『……もう動いて大丈夫なのですか?』
「はあ、はあ……まだ心臓が……バクバクしています」
 ミクラ・ブレインとサン博士のSOUND ONLYな対話が終了すると同時に雲散霧消するゴソウカン内の重圧感。
 人工知能の思考処理が追い付かず半フリーズしていたカッパマンと敵の親玉出現に腰を抜かして過呼吸に陥りかけていたソルジャー・マツモトはモンキーマンの言う通りに深呼吸して体を落ち着かせる。
『では、これよりゴソウカン内の案内を再開いたします。 ここより先、左に見えますのは……』
「サリー、もう案内はいいわ。私達は時間が無いからいますぐコンセイマオウが待つ最上階へ案内してもらえないかしら?」
『フトウ様の申しつけとあればそれは構いませんが……他の皆様もよろしいですか?』
『俺も構わんよサリー』
 足下のおぼつかないソルジャーマツモトを背負い、人工知能処理落ち半フリーズ中のカッパマンは腰を抱えて持ち上げているモンキーマンはガイドアンドロイドのサリーに答える。
『かしこまりました、ではこれより……我らが主様にして皆様と戦う宿命にある上位管理者アンドロイド・コンセイマオウ様のもとへとご案内いたします。このまま私にお続きください』
 前で手を組んで頭を下げたガイドアンドロイドのサリーは塔内螺旋階段をコツコツと上階に向かい始め、サン博士と3人の仲間も後に続く。

『ふふふ、オイラにこんなチャンスが回って来るとは……楽しみだブウ』
 ゴソウカン最上階の巨大玉座に座り、部下のガイドアンドロイドのサリーに案内されて4人が向かってくる様を巨大モニターで見ていた上位管理者アンドロイド・コンセイマオウは満足気な声で呟く。
『おや、あの方から通信だブウ。 もしもし、こちらコンセイマオウ……聞こえてるかブウ?』
 エデン内ネットワーク経由で入った何者かからの通信に応じるコンセイマオウ。
『……コンセイマオウ殿、直前までしつこいようで済まないが、本当にサン君は一切の怪我をさせないでくれ。
 貴方の力なら戦意喪失させて投降させる事は可能だろうが……彼女は簡単に死んでしまう生身の人間だ本当に力加減に気を付けてくれ』
 巨大モニター画面の左上端に出現したS OUNDON LYなカメラオフ通信アイコンの主は神経質なか細い声でコンセイマオウに懇願する。
『分かっているブウ。それが主様達がオイラに課した条件だからやるしかないだろブウ』
『あとモンキーマン君だが、彼も修理可能レベルなダメージで行動不能にして捕えられないか……?
 もちろん君の安全が第一だが、モンキーマン君も私にとっては思い入れのある大切な存在なんだ。
 だから大破ではなく腕や足を壊す程度で何とか出来ないだろうか……?』
『それは難しいけど……なんとか努力するブウ。ただそれは保証できんからどんな結果になっても恨むなブウ』
『うむ、何とか頼む。本当にお願いするよ……もうサン君達が来るな、君にご武運があらんことを!!』
 プチッと切れた巨大モニターが天井に引っ込んでいく前で上位管理者アンドロイド・コンセイマオウは玉座傍らの巨大青龍刀を掴んで立ち上がる。

【MMS 第44話に続く】
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