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【第三章:エデン第一区画/旧動植物研究所ビオトープエリア】

【第31話】

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『エイメーン……』
 生身の人間ではない頑強な人型戦闘用アンドロイドとは言え、あれだけの機銃を撃ち込まれたら鉄くず確定。
 特殊合金製の笠で身を守る事も無意味であると察したカッパマンが修復不能レベルの大破と言う最期を受け入れようとしたその時だった。

『ふざけるな……博士を、お前みてえな……バケモノ……に』
『!?』
 天井から聞こえる声に思わず上を見る2体のアンドロイド。
『博士を俺が……お守りするんだ!!』
 上位管理者アンドロイドとしてリュートに内蔵されていた戦闘用兵器・メタルスコーピオンテイルの尖端で心臓部たるアンドロイド動力炉を潰されかけたのをギリギリで交わしたモンキーマン。
 右肩をぶち抜かれたままメタルスコーピオンテイルで天井に押し付けられられていたモンキーマンはどうにか敵のヘイトを自分に向けさせる。
『アラアラ、アクウンガイイノネ……ジャアモットイタメツケテアゲナイト!!』
『うおっ!!』
 モンキーマンの右肩を貫通した尖端を振り下ろし、その巨躯を一気に床に叩きつけるリュートだったもの。
『シネヤ シネヤ コワレロ コワレロォォォォ!!』
『ぐあっ!! ぐうっ!! うごあっ!!』
 その一撃でおさまるはずもないリュートだったもの激昂と憎悪、嫉妬のままにそのまま身動きの取れないモンキーマンを滅茶苦茶に振り回し、天井、壁、柱と無茶苦茶に叩きつけだす。

(とっ……とにかく生身のサン博士殿はお助けせねば!!)
 どうにかリュートの超協力粘糸ネットから脱出したカッパマン。
 もはやかつての主に理性が残っていないのは明白で、あんな滅茶苦茶な攻撃ではこの旧迎賓館そのものが崩壊してしまう。そうなった場合囚われの身となっているサン博士も無事で済むはずがない。
 今この状況で自分が出来る最善策は戦闘用にして隠密行動アンドロイドとして目と鼻の先で囚われているサン博士を安全な場所にお連れ出しする事だ。
 そう判断したカッパマンはすぐに行動に移そうとする。
『ドコニイク、ウラギリモノ?』
 モンキーマンの拷問を一時中断し。ギリギリギリと虫顔をカッパマンに向けるリュート。
『くっ!!』
 気づかれたのではしょうがない、カッパマンは背中の超振動ブレードを抜いて敵の複眼目掛けて投郷したものの、それはあっさりと回避されてしまう。
『オシカッタナ、ウラギリモノ……オマェガチカシツノロックカイジョデキルトオモウタカ?』
 そもそもそうだった。
 当たり前の事実に気づけないなんてもうダメだな。
 今度は助からない。
 カッパマンが判断ミスによる二度目の修復不能レベルの大破と言う最期を受け入れようとしたその時、転がって来た何かが足に当たる。

『ソレハ……キンコジュカ?』
『???』 
 足下に転がっている金色の鉄輪に狼狽するリュートを前に思わず自身の頭に嵌められたキンコジュを確認してしまうカッパマン。
 だがそれはがっちりと固着しており、外れようもない状態だ。
『キンコジュ解除感知……戦闘用アンドロイドOSモンキーマン、自動停止処理完了』
 メタルスコーピオンテイルの尖端に吊るされたままダメージ限界に達して機能停止状態に陥り、ぐったりして
 ピクリとも動かないモンキーマンから聞こえる機械音声。
『……戦闘用アンドロイドOS自動再起動……セイテンタイセイ、起動いたします』
 カッパマンとリュートの目前でぐったりしていたモンキーマンは目を大きく見開く。
『……』
『モンキーマン……殿?』
 どこからともなく現れた(?)キンコジュを掴んだままつるし下げ状態のモンキーマンに尋ねてしまうカッパマン。
 だが眼球ガンギマ状態で再起動したモンキーマンはそれに一切答える事無く辺りをきょろきょろと見回すばかりだ。
『……シネ!!』
 特殊カーボンファイバー素材を芯にしており巨大な鉄帯でありながら鞭のようにしなやかな動きを可能とするアンドロイド用戦闘用兵器・メタルスコーピオンテイル。
 量産型アンドロイドソルジャーなら一振りでバラバラに出来てしまうパワーを持つそれの振り回しで幾度も叩きつけられてもなお自己修復機能で再起動できる戦闘用アンドロイドが存在すると言う事実はさておき、相手の動きを物理的に封じ込めていると言う意味では優位に立っているのは自分だ。
 そう判断したリュートはメタルスコーピオンテイルの振り回し叩きつけを再開しようとする。

【MMS 第32話に続く】
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