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第四章:『突然変異!? 聖魔王子VS巨大軟体魔物・ギガントスライム!』
【第29話】
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「ギルティさんにリィナ先輩、少し離れていてもらえますか……もしかしたら、試してみたい事があるんです」
「試してみたい事ってその光る剣と茨のアレみたいな何か?」
久しぶりの平和でのどかなクエストのはずが軟体魔物の突然変異に捕食体験、色々な物を隠していた半魔族……わけのわからない人智を超えた展開が続く事態を把握しようとギルティは聞き返す。
「はい、そうです」
「もうわけがわからないけど……とにかく何でもいいからやってみ!! それで倒せりゃ御の字だよ!!」
そう言いつつリィナと共に少し離れた木の後ろに隠れたギルティは半ばヤケでOKする。
『狼爪の奇跡!!』
未知の奇跡を発動させた瞬間、光りだす聖剣フェルティーレ。
「えっ、えっ…… ぐぬぬぅぅ!!」
地面に突き立てられたそれは使用者たるローランを抗えぬ力で引き寄せだし、右腕が刀身に密着。
そのままぐにゃぐにゃと筒状に変形し始めた聖剣はローランの右腕を完全に覆ってしまう。
「うっ、うわあぁぁぁ!!」
金属で出来た聖剣が自身の腕を覆いぐにゃぐにゃと変形していくと言う初めての現象に悲鳴を上げるローランに構うことなくメタモルフォーゼは続く。
「こっ、これは……爪籠手!?」
変形を終えた聖剣の新たな姿たたる右腕と右肩を完全に覆う美しき彫刻の施された白銀の籠手、その指先に生えた5本の仰々しい三日月型の大刃爪。
奇跡の力でその姿を変え、主と一体化する別武器となった聖剣フェルティーレにローランは目を自黒させる。
「ローラン!!」
「アンタの茨が!!」
この期に及んで我に返ったらしきブラッデイスライムは体を揺らして茨檻に体をめちゃくちゃに叩きつけて破壊してそのままぬるりぬめりと脱出。
『逃げずに遠くから見ているだけの獲物』として自分達を狙っている事に気が付いたギルティとリィナは未知の力に戸惑うローランの邪魔にならないように遠くへ駆けだす。
『ブブブブッブ ブブブブゥゥン!!』
「えっ、うっうぉぉぉぉ!!」
どこから出ているのかよく分からない震動音を上げながらローリング突撃してくるブラッデイスライム。
『狼爪の奇跡』で大爪籠手に変化した武器の感覚が分からず戸惑うローランは、至近距離まで迫ったそれをどうにか横移動でかわし、アテ勘で振り抜く。
『ブブッ!!』
そんな素人攻撃でも運よくもデカさ故にすれ違いざまに当たったようで、爪で大きく引き裂かれたその硬外皮から噴き出す体液。
(まさか……あいつ、再生能力が使えないのか?)
五爪で大きく引き裂かれた傷は微かな白光を帯び、ピンク色の体液が流れ出ているもののぶるぷる震えるばかりで自己再生しようともしないブラッディスライム。
あの時のギルティさんが抜けた穴よりも明らかに小さい傷であるにも関わらず放置している様でその可能性に気が付いたローランは一足飛びに距離を詰め、聖剣爪籠手を別の場所を深々と突き立てる。
「おりゃぁぁぁ!!」
『ブャァァン!!』
そのまま一気に裂き抜いた爪でえぐり取られ、辺りにぶちまけられるブラッディスライム胎内のゼリー状生体粘液とそれらをまもる硬外皮の破片。
内蔵を敵にさらけ出すような大ダメージを受けてもなお傷の自己修復が確認されないと言う事は間違いなくこの聖剣は魔物のダメージ部位自己再生を封じている。
「お前に私怨は無いが……皆を守るために斬らせてもらうぞ!!」
改めておばあさまから託された伝説の武器のすごさを思い知ったローランは奇跡の力で大爪籠手に変形させたその練習台として最適すぎる魔物に一気呵成に斬りかかる。
「リィナちゃんのパートナーの半魔族……すげえな、あれならあのバケモノ植物を倒せるわけだよ」
大爪籠手をこの短時間で使いこなせるようになり、ブラッディスライムの全身を一方的にバシュバシュと斬り裂いていくローランを離れた場所から見守っていた冒険者ギルティとリィナ。
武器と防具を失って剛腕と健脚に鋼の肉体と言う武器しかなく、しかも身を守る物も隠す物も無い全裸のギルティとナイフの達人のリィナと言う現状有効打にならない戦力外の2人は敵が傷口や穴を自己再生で塞げないならばと反撃で噴射してくる汚液を紙一重でアクロバティックに交わしながら殺意MAXの大爪と共に優雅に狂い舞い、満面の笑みを浮かべて魔物の命を刈り取っていく様に多少引きつつも呟く。
「私もあんなの初めて見たけど……半魔族って誰でもああいう事が出来るのかしら?」
「いや、出来るわきゃないだろ!? ウチのギルドにも1人だけ半魔族がいるけど……そいつの能力から考えるにあれは普通(?)の半魔族に出来る芸当じゃないよ。
隠し切れない王侯貴族を思わせる品位のある立ち振る舞いに華奢な体のどこにあるんだレベルの大剣を振り回す剛力。そしてアタシは専門外だがある程度体系化されつつある半魔族専用の魔法とは明らかに別系統のキセキとか言う独自の魔法……マジであの子何者なのよ!?」
「……ギルティ、もしリーダーやメンバーが望むのであれば私は『狂戦士』の利益に貢献すべく戻るわ。そのかわり今後、下級銅冒険者の彼には一切関わらず今日の事は貴女と私の秘密にして墓場まで持って行ってくれないかしら……?」
事と成り行き的に避けられなかったとは言え半魔族ローランの隠そうとした正体がこれで完全にばれてしまった。
ようやく手に入れた平和な田舎町の冒険者と言う安寧の生活を捨てる覚悟を決めたリィナはギルティに平身低頭頼み込む。
【第30話に続く】
「試してみたい事ってその光る剣と茨のアレみたいな何か?」
久しぶりの平和でのどかなクエストのはずが軟体魔物の突然変異に捕食体験、色々な物を隠していた半魔族……わけのわからない人智を超えた展開が続く事態を把握しようとギルティは聞き返す。
「はい、そうです」
「もうわけがわからないけど……とにかく何でもいいからやってみ!! それで倒せりゃ御の字だよ!!」
そう言いつつリィナと共に少し離れた木の後ろに隠れたギルティは半ばヤケでOKする。
『狼爪の奇跡!!』
未知の奇跡を発動させた瞬間、光りだす聖剣フェルティーレ。
「えっ、えっ…… ぐぬぬぅぅ!!」
地面に突き立てられたそれは使用者たるローランを抗えぬ力で引き寄せだし、右腕が刀身に密着。
そのままぐにゃぐにゃと筒状に変形し始めた聖剣はローランの右腕を完全に覆ってしまう。
「うっ、うわあぁぁぁ!!」
金属で出来た聖剣が自身の腕を覆いぐにゃぐにゃと変形していくと言う初めての現象に悲鳴を上げるローランに構うことなくメタモルフォーゼは続く。
「こっ、これは……爪籠手!?」
変形を終えた聖剣の新たな姿たたる右腕と右肩を完全に覆う美しき彫刻の施された白銀の籠手、その指先に生えた5本の仰々しい三日月型の大刃爪。
奇跡の力でその姿を変え、主と一体化する別武器となった聖剣フェルティーレにローランは目を自黒させる。
「ローラン!!」
「アンタの茨が!!」
この期に及んで我に返ったらしきブラッデイスライムは体を揺らして茨檻に体をめちゃくちゃに叩きつけて破壊してそのままぬるりぬめりと脱出。
『逃げずに遠くから見ているだけの獲物』として自分達を狙っている事に気が付いたギルティとリィナは未知の力に戸惑うローランの邪魔にならないように遠くへ駆けだす。
『ブブブブッブ ブブブブゥゥン!!』
「えっ、うっうぉぉぉぉ!!」
どこから出ているのかよく分からない震動音を上げながらローリング突撃してくるブラッデイスライム。
『狼爪の奇跡』で大爪籠手に変化した武器の感覚が分からず戸惑うローランは、至近距離まで迫ったそれをどうにか横移動でかわし、アテ勘で振り抜く。
『ブブッ!!』
そんな素人攻撃でも運よくもデカさ故にすれ違いざまに当たったようで、爪で大きく引き裂かれたその硬外皮から噴き出す体液。
(まさか……あいつ、再生能力が使えないのか?)
五爪で大きく引き裂かれた傷は微かな白光を帯び、ピンク色の体液が流れ出ているもののぶるぷる震えるばかりで自己再生しようともしないブラッディスライム。
あの時のギルティさんが抜けた穴よりも明らかに小さい傷であるにも関わらず放置している様でその可能性に気が付いたローランは一足飛びに距離を詰め、聖剣爪籠手を別の場所を深々と突き立てる。
「おりゃぁぁぁ!!」
『ブャァァン!!』
そのまま一気に裂き抜いた爪でえぐり取られ、辺りにぶちまけられるブラッディスライム胎内のゼリー状生体粘液とそれらをまもる硬外皮の破片。
内蔵を敵にさらけ出すような大ダメージを受けてもなお傷の自己修復が確認されないと言う事は間違いなくこの聖剣は魔物のダメージ部位自己再生を封じている。
「お前に私怨は無いが……皆を守るために斬らせてもらうぞ!!」
改めておばあさまから託された伝説の武器のすごさを思い知ったローランは奇跡の力で大爪籠手に変形させたその練習台として最適すぎる魔物に一気呵成に斬りかかる。
「リィナちゃんのパートナーの半魔族……すげえな、あれならあのバケモノ植物を倒せるわけだよ」
大爪籠手をこの短時間で使いこなせるようになり、ブラッディスライムの全身を一方的にバシュバシュと斬り裂いていくローランを離れた場所から見守っていた冒険者ギルティとリィナ。
武器と防具を失って剛腕と健脚に鋼の肉体と言う武器しかなく、しかも身を守る物も隠す物も無い全裸のギルティとナイフの達人のリィナと言う現状有効打にならない戦力外の2人は敵が傷口や穴を自己再生で塞げないならばと反撃で噴射してくる汚液を紙一重でアクロバティックに交わしながら殺意MAXの大爪と共に優雅に狂い舞い、満面の笑みを浮かべて魔物の命を刈り取っていく様に多少引きつつも呟く。
「私もあんなの初めて見たけど……半魔族って誰でもああいう事が出来るのかしら?」
「いや、出来るわきゃないだろ!? ウチのギルドにも1人だけ半魔族がいるけど……そいつの能力から考えるにあれは普通(?)の半魔族に出来る芸当じゃないよ。
隠し切れない王侯貴族を思わせる品位のある立ち振る舞いに華奢な体のどこにあるんだレベルの大剣を振り回す剛力。そしてアタシは専門外だがある程度体系化されつつある半魔族専用の魔法とは明らかに別系統のキセキとか言う独自の魔法……マジであの子何者なのよ!?」
「……ギルティ、もしリーダーやメンバーが望むのであれば私は『狂戦士』の利益に貢献すべく戻るわ。そのかわり今後、下級銅冒険者の彼には一切関わらず今日の事は貴女と私の秘密にして墓場まで持って行ってくれないかしら……?」
事と成り行き的に避けられなかったとは言え半魔族ローランの隠そうとした正体がこれで完全にばれてしまった。
ようやく手に入れた平和な田舎町の冒険者と言う安寧の生活を捨てる覚悟を決めたリィナはギルティに平身低頭頼み込む。
【第30話に続く】
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