上 下
298 / 307
本編

485.ラストチャレンジ5

しおりを挟む
 三十階層に到着すると、子供達はやはり樹脂の塊拾いから始まる。

「「あっ! いってきます!」」

 しかも、早々に魔物が現れたらしく、アレンとエレナは嬉々として駆け出していく。

《あ~、また先を越された~》
《アレンおにーちゃんとエレナおねーちゃん、はや~い》

 ベクトルとラジアンは少しだけ悔しそうにしながらアレンとエレナの後を追いかけていった。

「「おわり!」」
《 《えぇ、もう!?》 》

 だが、ベクトルとラジアンが追いつく前に、アレンとエレナはあっという間に相手を倒してしまっていた。
 ……僕達から見たら、相手の魔物が何だったかもわからないうちにだ。

「「ドロップアイテムはね~」」
「ラジアンだった!」
《アレンおにーちゃん、ほんとう!?》
「フィートもあったよ!」
《あらあら、私もあったの? エレナちゃん、凄いわ~》

 しかも、初っ端からグリフォンと飛天虎の人形が手に入ったらしい。リヴァイアサン人形からの強運がまだ続いているようだな~。

「おぉ、凄いではないか~」
「本当にね。最近、子供達の運の良さに驚きを通り越して、呆れを感じるようになってきたよ」
「呆れ? 何故だ? 良いことしかないのではないか?」
「えっと……まあ、そうだね」

 良いことなのに何故呆れることが? とカイザーに言われ、僕は細かいことに気にし過ぎだったと思い至った。〝良いことは良い!〟でいいじゃないかと。

《あっ! ゴーレム発見! 今度はオレが行くね》

 僕が反省? をしているとベクトルがゴーレムを発見し、嬉々として走り出していく。
 そして、あっという間に倒すと、尻尾を振りながら戻ってくる。

《パステルラビットの人形だった~》
「「シロだ~」」

 白いパステルラビットの人形が手に入ったようだ。

「パステルラビットの色違いもだいぶ集まってきたな~」
「そうだね~。でもね」
「チャチャとリームがまだなの~」
「ああ、そうだね」

 ピンク色のピピと水色のミミは既に手に入れているので、あとは茶色とクリーム色のパステルラビットを手に入れたいようだ。

「でも、クリーム色と茶色のパステルラビットの人形って……どの階層になるんだろう?」
「「どこだろう?」」
「だよね」

 ドロップアイテムとして出てくる系統の色ではないので、どの階層から出てくるのかが不明である。

「三十一?」
「三十二?」
「ああ、そうか。この先の樹脂の森でも人形のドロップがあるかもしれないのか」

 坑道では色系統が決まっていたが、森ではそうとは限らない。なので、そちらでもしかしたらてにはいるかもしれないな。

「だけど、まずはフェンリルとサンダーホークだな」
《そうだね! 絶対に手に入れるぞ!》
《もちろんです! 絶対に手に入れます!》

 ジュールとボルトが、やる気を漲らせていた。
 パステルラビットも集めたいが、やはりジュールとボルトが優先だな。

「まずはここで!」
「がんばらないとね!」
「「あっ!」」

 アレンとエレナは、三十一、三十二階層の前に三十階層を狩り尽くそう……とばかりに、魔物に向かって駆けていく。

「あちらからも来たな。我も行ってこよう」

 ちょうど分かれ道だったため、子供達が駆けて行った道とは別の道からも魔物が現れる。すると、カイザーがわくわくした様子をさせながら魔物に向かって行く。

《兄様、何だか不思議そうな顔をしているわよ?》
「カイザーならここからでも魔法で倒せそうだけど、わざわざ向かうんだな~って思ってな」
《ふふっ、私も魔法は使うけれど、やはり身体を動かして戦うほうが性に合うもの。カイザーもきっと身体を動かしたくなったのよ》
「ああ、それもそうか」

 身体を動かすことが苦手だった頃の影響か、僕の場合は魔法をばんばん撃つほうが性に合っているが、僕以外の子達は動き回るのが好きだからな。手っ取り早く魔法……という考えにはならないのか。

「「……ジュールとボルトがなかった~」」
「まあ、まだ始めたばかりだし、これからだよ」

 ドロップアイテムはいろいろ手に入ったが、人形はホワイトシープだけだったようだ。

「そういえば、ついうっかり休憩しないでこの階層の探索に入っちゃったから、そろそろご飯がてら休憩にしよう」
「「ごはんたべる~」」

 僕達は本来なら転移装置の間で長めの休憩を挟んでいたのだが、二十九階層でリヴァイアサンの人形を手に入れた勢いのまま三十階層の探索を始めてしまったのだ。まあ、二十九階層の探索時間が短かったということもあるのだけどな。
 なので、ちょっとここら辺で子供達に休息を取らせることにした。良い具合に見通しが良く、そこそこ広い場所にいることだしね。

「何が食べたい? できれば作り置きのものでお願い」

 ここは安全地帯ではないので、さすがにこの場で料理するのは止めた。余裕があるとは言っても上級迷宮の三十階層まで来たことだしな。

「おにぎり?」
「サンドイッチ?」
「それならどっちでもいいよ。じゃあ、食べたい具を言って~」

 それぞれ食べたいものに、野菜スープをつけておこう。

「アレン、こんぶのおにぎり~」
「エレナ、たまごサンド~」

 まずは子供達から渡し、次にカイザー達にも食べたいものを選んでもらって僕達はしばらくの間、休むことにした。





しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移!?~俺だけかと思ったら廃村寸前の俺の田舎の村ごとだったやつ

真義あさひ
ファンタジー
俺、会社員の御米田ユウキは、ライバルに社内コンペの優勝も彼女も奪われ人生に絶望した。 夕焼けの歩道橋の上から道路に飛び降りかけたとき、田舎のばあちゃんからスマホに電話が入る。 「ユキちゃん? たまには帰(けぇ)ってこい?」 久しぶりに聞いたばあちゃんの優しい声に泣きそうになった。思えばもう何年田舎に帰ってなかったか…… それから会社を辞めて田舎の村役場のバイトになった。給料は安いが空気は良いし野菜も米も美味いし温泉もある。そもそも限界集落で無駄使いできる場所も遊ぶ場所もなく住人はご老人ばかり。 「あとは嫁さんさえ見つかればなあ~ここじゃ無理かなあ~」 村営温泉に入って退勤しようとしたとき、ひなびた村を光の魔法陣が包み込み、村はまるごと異世界へと転移した―― 🍙🍙🍙🍙🍙🌾♨️🐟 ラノベ好きもラノベを知らないご年配の方々でも楽しめる異世界ものを考えて……なぜ……こうなった……みたいなお話。 ※この物語はフィクションです。特に村関係にモデルは一切ありません ※他サイトでも併載中

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

転生幼児は夢いっぱい

meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、 ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい?? らしいというのも……前世を思い出したのは 転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。 これは秘匿された出自を知らないまま、 チートしつつ異世界を楽しむ男の話である! ☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。 誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。 ☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*) 今後ともよろしくお願い致します🍀

キャンピングカーで往く異世界徒然紀行

タジリユウ
ファンタジー
《第4回次世代ファンタジーカップ 面白スキル賞》 【書籍化!】 コツコツとお金を貯めて念願のキャンピングカーを手に入れた主人公。 早速キャンピングカーで初めてのキャンプをしたのだが、次の日目が覚めるとそこは異世界であった。 そしていつの間にかキャンピングカーにはナビゲーション機能、自動修復機能、燃料補給機能など様々な機能を拡張できるようになっていた。 道中で出会ったもふもふの魔物やちょっと残念なエルフを仲間に加えて、キャンピングカーで異世界をのんびりと旅したいのだが… ※旧題)チートなキャンピングカーで旅する異世界徒然紀行〜もふもふと愉快な仲間を添えて〜 ※カクヨム様でも投稿をしております

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

「婚約を破棄したい」と私に何度も言うのなら、皆にも知ってもらいましょう

天宮有
恋愛
「お前との婚約を破棄したい」それが伯爵令嬢ルナの婚約者モグルド王子の口癖だ。 侯爵令嬢ヒリスが好きなモグルドは、ルナを蔑み暴言を吐いていた。 その暴言によって、モグルドはルナとの婚約を破棄することとなる。 ヒリスを新しい婚約者にした後にモグルドはルナの力を知るも、全てが遅かった。

異世界のんびり冒険日記

リリィ903
ファンタジー
牧野伸晃(マキノ ノブアキ)は30歳童貞のサラリーマン。 精神を病んでしまい、会社を休職して病院に通いながら日々を過ごしていた。 とある晴れた日、気分転換にと外に出て自宅近くのコンビニに寄った帰りに雷に撃たれて… ================================ 初投稿です! 最近、異世界転生モノにはまってるので自分で書いてみようと思いました。 皆さん、どうか暖かく見守ってくださいm(._.)m 感想もお待ちしております!

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。