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本編

468.またも貴石の迷宮5

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「「あつめるぞぉ!」」

 二十階層に到着した途端、アレンとエレナはジャイアントグラスホッパー探しを開始した。

《わ~、待ってよ~》
「「ベクトルはダメ~」」
《えぇ!? 今度はちゃんと手加減するよ!》
「「ダメ~」」
《……そ、そんな~》

 ベクトルがアレンとエレナの後を追いかけようとしていたが、二人から止められていた。
 やはりここでも戦力外通告が出されたようだ。

「……わ、我は?」
「「ダメ~」」

 同じようにカイザーも戦力外通告が出されていた。

《ラジアンもダメー?》

 ベクトルとカイザーに続き、ラジアンも恐る恐るアレンとエレナを窺っていた。
 ラジアンがジャイアントグラスホッパーを倒す力加減は、普通の攻撃だとバキッと割れてドロップアイテムはトンボ玉に。良い攻撃になればバラバラになってドロップアイテムはシーグラスになるのだ。
 バラバラにしてしまうベクトルとカイザーが駄目だから、自分も駄目なのか不安になったようだ。

「ラジアンはいいよ~」
「れんしゅう、れんしゅう」
《がんばる!》

 兄と姉なアレンとエレナは、弟であるラジアンの失敗は問題ないと、さすがに戦力外通告などはしなかった。
 それを見ていたベクトルとカイザーは、羨ましそうにラジアンを見ていた。

「ベクトルとカイザーからしたら戦い甲斐のない相手だろう。諦めて見学してなよ」
《確かに弱いけど、オレも遊びたい~》
「うむ、みんなでわいわいと戦うのが良いのだ」

 ジャイアントグラスホッパーはそれほど強くない魔物だが、戦闘を楽しむ……という感じではなく子供達とドロップ集めを楽しみたいようだ。

「しょうがないな~」
「ちゃんとてかげんする?」

 あまりにもしょんぼりとする様子を見て、アレンとエレナはベクトルとカイザーの参加も認めたようだ。

《するする! 参加してもいい!?》
「ちゃんと手加減するぞ!」
「「じゃあ、いいよ」」
《ありがとう!》
「うむ!」

 そうして、第二回ジャイアントグラスホッパー狩りが開始された。

《うん、やっぱり赤系統のガラス玉がほとんどだね》

 やはり、赤の坑道では赤ベースや赤い模様のトンボ玉ばかりであった。

「どれもかわいいね~」
《そうね。どれも可愛いわ~》
《本当に可愛いの!》

 女の子組は集めたトンボ玉を見つめ、嬉しそうに語り合っていた。

《お兄ちゃん、エレナはもちろんだけど、フィートとマイルにもあのガラス玉で何か作ってあげてよ。お願い》
「もちろんだよ。だけど……ガディア国に戻ってからレベッカさん達と相談して装飾品でも作ってもらおうと思っていたんだけ……あの様子なら、すぐに作ってもらったほうがいいのかな?」

 フィートとマイルの様子を見て、ジュールが僕にお願いする形で提案を持ちかけてきたが、僕も二匹の様子を見て、何か作ってあげたいと思っていたところだ。
 ただ、トンボ玉はお土産にすると張り切っていたので、レベッカさん達にトンボ玉を見せてから作るものを考えようと思っていたのだ。

《あ~、どうだろう? あ、二回作ればいいんじゃない? あの三人でお揃いと、ママ達とお揃いとね。幸い、フィートとマイルも収納系の魔道具は持っているんだし、その日の気分で使い分ければいいじゃん!」
「それもそうだな~」

 僕はマントを買いに行く時にでも、宝飾品店も寄ろうと決めた。

《ところで、お兄ちゃん。マジックリングに私物を入れておいても怒らないよね?》
「怒らないよ。というか、そんなことで怒られると思われているの!?」
《いやいや、全然思っていないよ。ただ確認しただけだよ》
「僕としては、むしろどんどんお気に入りのものを集めて欲しいくらいだよ。というか、今まで我慢させていたんじゃないかと思っているよ」
《大丈夫、我慢しているわけじゃないよ。でも、これからはちょっと欲張りになってみるよ》
「なりな、なりな。そのためにもジュール用のマジックリングを早く手に入れたいよな~。あ、マイル用とラジアン用もだな」

 マジックリングは仕事の運搬関係で使用するのはもちろんだが、緊急時に必要になりそうなもの、私物はもちろん、お気に入りの宝物を集めて入れておくのに使用してもらいたい。
 あ、ベクトルには今のところ常に空にしておくように言ってはいるが、獲物の溜め込みをしないことが確定すれば、宝物は許可する予定ではいる。

《心配しなくても、きっとすぐに手に入るよ~》
「そうだといいんだけどな~」

 ジュールは何故か魔道具は絶対に手に入ると自信満々のようだった。

「「ていや!」」

 アレンとエレナは、再びジャイアントグラスホッパーと遭遇し、しっかりと力加減を調整してトンボ玉を入手していた。

「「おにぃちゃん、たからばこがでた~」」
「え、本当?」

 しかも、ドロップアイテムで宝箱が出てきたようだ。

「うむ、罠はないようだ。開けても問題ないぞ」
「「ありがとう~」」

 近くにいたカイザーがすぐに罠の有無を確認すると、アレンとエレナは宝箱を開ける。

「何が入っていた?」
「「うでわ~」」
「ふむ。これは……マジックリングだな」
「えっ、本当!?」
《おぉ~、凄いじゃん》

 僕も手に入れたマジックリングを見るために子供達に向かおうとすると、ジュールが〝ほらね〟と言わんばかりの表情をしていた。

「ジュール、予知能力のスキルでも手に入れたかい?」
《ははは~、それは手に入れてないかな~》

 ジュールは否定していたが、本当に予知したような凄いタイミングであった。

「「おにぃちゃん! みてみて~」」
「アレン、エレナ、凄いな~。――カイザー、時間経過と容量はどんな感じだった?」
「うむ、なかなか良い機能っぽいぞ」
「おぉ~、増々凄いじゃん!」

 時間経過も容量も申し分ない機能だったようだ。

「「これは、ジュールだね!」」
《ボクでいいの?》
「「うん!」」
「そうだね。それはジュールが使って」

 アレンとエレナが差し出したマジックリングをジュールは嬉しそうに受け取っていた。

「「まだまだみつけるぞー!」」

 そんなやりとりを見ていたラジアンが羨ましそうにしていたので、アレンとエレナはやる気を漲らせていた。




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