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23.どうやって収拾すれば……(ヴィルフレッド)

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今日はリアと一緒に街に出掛ける。
リアが街に出掛けるのは、たぶん初めてだよな?
嬉しそうにそわそわするリアに頬が緩んだ。

だた、出掛ける前に問題が起こった。
カイル=スピネル、城から派遣されてきたリアの専属護衛の格好についてだ。
彼は近衛騎士の制服を着ている。
近衛騎士の制服は一目でわかるので、そんな姿で出歩けば無駄に視線を集めることになる。
だからリアは彼に着替えるように言ったが、カイル=スピネル本人によって却下された。
するとリアは彼は置いていくと宣言した。

しかし、カイル=スピネルはさも当然のように僕達についてきた。
そして、リアの斜め後ろを歩いている。
もちろん、近衛騎士の制服のままで。
やっぱり近衛騎士が街中を歩いていたら目立つよな~。
普通、近衛騎士が街中を彷徨うろつくことなんてないから、超絶に注目を浴びている。
店の店員から通行人まで、たくさんの人がこちらを見ていた。
僕達はその視線の嵐に居心地の悪い思いをしていた。

「うぅ~~~」

特にリアは泣きそうになっている。
だが、当の本人だけは何も気にしていないようにしている。

カイル=スピネルの存在は周りからの視線だけでは済まなかった。
店に入って商品を見ていれば、店員に睨みを利かせて近づけさせないようにする。
いや、接客なんだから、店員が客に近づくのは当たり前だろう?
何故、そこで威圧を掛ける?
あーあ……、店員が震えちゃってるよ……。
店員が怯えていることにリアが気づいて、一度カイル=スピネルを見て、大きく溜め息を吐いてから「もう出ようか」って……。
五歳の子供に気を回してもらう護衛って……それはないだろ!

「……」

リアはすっかり意気消沈していた。
凄く買い物を楽しみにしてたのに、商品を見ることすら満足にできないのだから、リアが泣きそうになるのは当たり前だ。

「ほら、リア。あそこの喫茶店はケーキが美味しいって評判なんだよ。入ってケーキでも食べよ?」
「うんうん。店の中に入れば通行人とかの視線もなくなるしね。ねぇ、休憩しよう!」
「……うん」

僕と弟のバードでリアを宥め、最近、話題に出ることの多い喫茶店に入ることにした。
美味しいお茶とケーキを楽しめば、リアの気分も少しは晴れるだろうからね。

店に入ると、僕達は二つのテーブルに別れて席に着いた。
一つは僕とリアとバード。
もう一つの席にはリアの侍女のアイシャと僕の侍従のライリー、護衛のジャン。
ぞろそろ護衛を店の中に引き連れては行けないので一人だけにして、残りの護衛は店の外で待機している。

そこで問題が発生した。
カイル=スピネルが、リアの座った椅子の背後に仁王立ちしているのだ。
リアはカイルに座るように言ったが、カイルは首を振って断っていた。
本当にこの男は……。
せっかく雰囲気を変えたのに、またリアの目に涙が浮かんでいるじゃないか!

リアは諦めて彼を空気だと思うようにしたらしく、視界に入れないようにしていた。
ちょうど彼はリアの背後を陣取っていたしね。
その甲斐があってか、数種類あるケーキから食べるものを選ぶリアの表情はうきうきとしたものだった。
だが、注文したお茶とケーキが運ばれてきてそれを口にしようしたリアを、カイル=スピネルが止めた。
毒見をしていないって……。
よりにもよって、何で店員さんの前でそんなこと言うかな……。

うわっ!
気がつけば、リアの目には今にも零れそうな涙がっ!!

「リ、リアっ!? 落ち着いて?」

僕は慌ててリアを宥める。
リアに泣かれては大変なことになる。

《リア、なにがあったんだ!?》
「ふぇ…。ヒュー……」

あー…遅かった……。
リアの契約精霊であるヒューリー殿が、リアの異変に気がついて現れていた。

リアが誘拐されてからというものの、ヒューリー殿のリアへの過保護具合は一気に増した。
一時期はリアの感情が少しでも揺らげば、こんな風にヒューリー殿が飛んできていた。
それが最近になってやっと許容範囲みたいなものが定まり、少々の昂ぶりぐらいは騒がなくなったのだけど……。
だからこそ、リアはカイル=スピネルのことを悟られないように頑張っていたのだが……。

《誰だい? リアを泣かせたのは……》

ヒューリー殿が周りを威圧しながら、恐ろしいほど低音で告げた。

《……フレッド? バード? なにしてんのさ、早く説明しなよ。それともなに? もしかして君達がリアを泣かせたのかい?》
「い、いいえ! 違います!」
《そうだよね。父殿や君達兄がリアを泣かせることはないよね? じゃあ、誰が泣かせたんだい?》

うん、僕達や父上がリアのことを故意に泣かせるようなことはしないって、認識してくれているのかな?
あ~、でもこれは完全に怒っている。
正直に話さないと、僕達が泣かせたわけではないが巻き込まれると確信した。

「……リアの護衛が……」

僕はカイル=スピネルを売ることにした。
若干罪悪感を感じるが、このまま黙っていればここにいる全員がヒューリー殿の標的になる可能性がある。
さすがにこの店や客として来ていた人達を巻き込むわけにはいかないからね。

《そう、リアの護衛だね……》

カイル=スピネルのことを見るヒューリー殿の目が、獲物を狙う猛禽類ように見えた。




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