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準備期間です。
2.詰んでいる
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私はヴィクトリア=エメラルド。
三大公爵家の一つ、エメラルド公爵家の末娘。
そんな私は三歳の誕生日に前世の記憶を思い出した。
とはいっても、平凡なOLだった記憶だ。
没年齢は二十八歳。
朝早くから夜遅くまで働き続け、過労死したらしい。
意外と若くして死んだんだな、私。
そんな感想しか出てこなかった。
そして前世を思い出したその日から、私は夜な夜な変な夢を見るようになった。
自分の未来だと思われる夢だ。
◇ ◇ ◇
初めて見た夢は王太子である、第一王子・サイラス=フォン=クリスタルが、ヒロインかと思われるマリエッタという金髪の少女と愛を育む夢だった。
サイラス王子の一歳年下のマリエッタが王立学園の高等部に入学したところから夢が始まる。
偶然に出会ったマリエッタにサイラス王子が一目惚れして、新入生だったマリエッタに何かと世話を焼く。
マリエッタも優しいサイラス王子にだんだんと惹かれていく。
彼女は光の精霊と契約を交わした契約者だったが、男爵令嬢と身分は低い。
国としては王太子には身分が釣り合う令嬢と婚姻して、後の王妃に。
マリエッタを第二王子、もしくは第三王子の嫁として確保したいというのが本音だった。
そこで王太子の婚約者候補としてあげられるのが、エメラルド公爵令嬢であるヴィクトリア――私だった。
ヴィクトリアは王太子の七歳年下だが、そのくらいの年齢差は大して問題ではない。
王による勅命をもって、サイラス王子とヴィクトリアの婚約が成立。
泣く泣く、マリエッタと引き離されてしまう。
そんなありきたりな恋物語的な夢だった。
婚約が成立後もサイラス王子とマリエッタは人目を盗んで密会し続け、正式な婚約者であるヴィクトリアには素っ気ない態度。
一瞬、ヴィクトリアは悪役令嬢のポジションか!?
と思ったけれど、ヴィクトリアは決していじめなんてものはしていない。
だって、ヴィクトリアはまだ学校に入学すらしていないんだから。
いろいろ省略するが、その後、ヴィクトリアは不慮の事故で亡くなってしまう。
その混乱の隙にサイラス王子はマリエッタとの婚約を整え、婚姻する流れだった。
◇ ◇ ◇
これ絶対に故意的な事故だよね?
こんなタイミングで事故って、都合が良すぎるよね!?
ヴィクトリアって殺されたんだよね?
そう思ってしまう夢だった。
◇ ◇ ◇
次の夜は第二王子・ライナスとマリエッタの夢だった。
ライナス王子とマリエッタは同い年で入学式で出会い、恋に落ちる。
マリエッタが精霊の契約者だったため、ライナス王子とマリエッタの婚約はあっさりと整う。
しかし、王子達を狙う爵位の高い家のご令嬢達からマリエッタはいじめに遭う。
それが何故か、いじめはヴィクトリアが首謀者として仕立て上げられていた。
マリエッタのことを気に入らないが、まだ初等部にも入学していないので、学園にいるご令嬢を使っていじめを行っているという展開だ。
実際は濡れ衣だが。
王子達の婚約候補者としてヴィクトリアが筆頭なのだから、王子達を狙うご令嬢にとってヴィクトリアは目の上のたんこぶ。
出来ればマリエッタと一緒に排除してしまいたい存在なのだ。
ライナス王子の正式な婚約者であるマリエッタへの悪質な行為が問題になり、ありもしない証拠でヴィクトリアは断罪される。
◇ ◇ ◇
いやいや、何でそうなるっ!?
九歳のヴィクトリアがいじめの首謀者って無理があるよね?
この時のヴィクトリアはマリエッタに会ったことないよね?
いろいろ無理があるだろ!
……突っ込みどころ満載だったが、夢だしどうにもならない。
次の日の夜は兄であるヴィルフリードとマリエッタの夢。
そのまた次の夜は騎士団長の息子とマリエッタの夢。
夢に出る登場人物はヒロインが変わらずマリエッタなのだが、攻略対象と思われる男性が次々と変わっていた。
まるで乙女ゲームの攻略を個別ルートで順番に見ているようだった。
攻略対象者はそれはそれは盛りだくさんいた。
第一王子
第二王子
宰相子息である公爵家嫡男
宰相子息である公爵家次男
騎士団長子息である公爵家嫡男
魔術師長子息である公爵家嫡男
医術師長子息である侯爵家嫡男
学園教師である王弟
近衛騎士である伯爵家次男
精霊の契約者である平民
隣国の第三王子
隣国の王子の側近である伯爵家嫡男
なぜ、攻略対象者がこんなにいる!?
何がしたいんだーーー!!
と、叫んだ私は悪くないはずだ。
しかも、ここに上げた人物以外にもまだいるんだよ!
本当にどんだけいるんだよ!
毎夜見る夢には必ず私――ヴィクトリアも登場した。
数々ある私の未来は――。
婚約破棄、没落、国外追放、幽閉、奴隷落ち、事故死、暗殺、処刑……。
平和はどこにいった!?
というような未来ばかりだ。
私は予想された自分の未来に絶望した。
詰んでいる……。
どう考えても詰んでいる。
ヒロインをいじめる悪役令嬢でもない、巻き込まれているだけの脇役キャラなのに破滅ルートばかりだったのだ。
三大公爵家の一つ、エメラルド公爵家の末娘。
そんな私は三歳の誕生日に前世の記憶を思い出した。
とはいっても、平凡なOLだった記憶だ。
没年齢は二十八歳。
朝早くから夜遅くまで働き続け、過労死したらしい。
意外と若くして死んだんだな、私。
そんな感想しか出てこなかった。
そして前世を思い出したその日から、私は夜な夜な変な夢を見るようになった。
自分の未来だと思われる夢だ。
◇ ◇ ◇
初めて見た夢は王太子である、第一王子・サイラス=フォン=クリスタルが、ヒロインかと思われるマリエッタという金髪の少女と愛を育む夢だった。
サイラス王子の一歳年下のマリエッタが王立学園の高等部に入学したところから夢が始まる。
偶然に出会ったマリエッタにサイラス王子が一目惚れして、新入生だったマリエッタに何かと世話を焼く。
マリエッタも優しいサイラス王子にだんだんと惹かれていく。
彼女は光の精霊と契約を交わした契約者だったが、男爵令嬢と身分は低い。
国としては王太子には身分が釣り合う令嬢と婚姻して、後の王妃に。
マリエッタを第二王子、もしくは第三王子の嫁として確保したいというのが本音だった。
そこで王太子の婚約者候補としてあげられるのが、エメラルド公爵令嬢であるヴィクトリア――私だった。
ヴィクトリアは王太子の七歳年下だが、そのくらいの年齢差は大して問題ではない。
王による勅命をもって、サイラス王子とヴィクトリアの婚約が成立。
泣く泣く、マリエッタと引き離されてしまう。
そんなありきたりな恋物語的な夢だった。
婚約が成立後もサイラス王子とマリエッタは人目を盗んで密会し続け、正式な婚約者であるヴィクトリアには素っ気ない態度。
一瞬、ヴィクトリアは悪役令嬢のポジションか!?
と思ったけれど、ヴィクトリアは決していじめなんてものはしていない。
だって、ヴィクトリアはまだ学校に入学すらしていないんだから。
いろいろ省略するが、その後、ヴィクトリアは不慮の事故で亡くなってしまう。
その混乱の隙にサイラス王子はマリエッタとの婚約を整え、婚姻する流れだった。
◇ ◇ ◇
これ絶対に故意的な事故だよね?
こんなタイミングで事故って、都合が良すぎるよね!?
ヴィクトリアって殺されたんだよね?
そう思ってしまう夢だった。
◇ ◇ ◇
次の夜は第二王子・ライナスとマリエッタの夢だった。
ライナス王子とマリエッタは同い年で入学式で出会い、恋に落ちる。
マリエッタが精霊の契約者だったため、ライナス王子とマリエッタの婚約はあっさりと整う。
しかし、王子達を狙う爵位の高い家のご令嬢達からマリエッタはいじめに遭う。
それが何故か、いじめはヴィクトリアが首謀者として仕立て上げられていた。
マリエッタのことを気に入らないが、まだ初等部にも入学していないので、学園にいるご令嬢を使っていじめを行っているという展開だ。
実際は濡れ衣だが。
王子達の婚約候補者としてヴィクトリアが筆頭なのだから、王子達を狙うご令嬢にとってヴィクトリアは目の上のたんこぶ。
出来ればマリエッタと一緒に排除してしまいたい存在なのだ。
ライナス王子の正式な婚約者であるマリエッタへの悪質な行為が問題になり、ありもしない証拠でヴィクトリアは断罪される。
◇ ◇ ◇
いやいや、何でそうなるっ!?
九歳のヴィクトリアがいじめの首謀者って無理があるよね?
この時のヴィクトリアはマリエッタに会ったことないよね?
いろいろ無理があるだろ!
……突っ込みどころ満載だったが、夢だしどうにもならない。
次の日の夜は兄であるヴィルフリードとマリエッタの夢。
そのまた次の夜は騎士団長の息子とマリエッタの夢。
夢に出る登場人物はヒロインが変わらずマリエッタなのだが、攻略対象と思われる男性が次々と変わっていた。
まるで乙女ゲームの攻略を個別ルートで順番に見ているようだった。
攻略対象者はそれはそれは盛りだくさんいた。
第一王子
第二王子
宰相子息である公爵家嫡男
宰相子息である公爵家次男
騎士団長子息である公爵家嫡男
魔術師長子息である公爵家嫡男
医術師長子息である侯爵家嫡男
学園教師である王弟
近衛騎士である伯爵家次男
精霊の契約者である平民
隣国の第三王子
隣国の王子の側近である伯爵家嫡男
なぜ、攻略対象者がこんなにいる!?
何がしたいんだーーー!!
と、叫んだ私は悪くないはずだ。
しかも、ここに上げた人物以外にもまだいるんだよ!
本当にどんだけいるんだよ!
毎夜見る夢には必ず私――ヴィクトリアも登場した。
数々ある私の未来は――。
婚約破棄、没落、国外追放、幽閉、奴隷落ち、事故死、暗殺、処刑……。
平和はどこにいった!?
というような未来ばかりだ。
私は予想された自分の未来に絶望した。
詰んでいる……。
どう考えても詰んでいる。
ヒロインをいじめる悪役令嬢でもない、巻き込まれているだけの脇役キャラなのに破滅ルートばかりだったのだ。
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