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準備期間です。
31.大人達の話し合い(ジルベール)
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私は仲間から変わり者の精霊と言われている。
一国の騎士団に所属して、人間に紛れて生活をしているだなんて、精霊からすれば相当な奇行な行為なのだから仕方がない。
だが、それもこれも、私が昔、契約していた主の影響が大きい。
私の主はとても変わり者だった。
面白いことが大好きで、人生を面白おかしく過ごせるためだったら、どんな努力でも行う男だった。
その努力を別のことに使えば、誰もが認める人物になれただろうに。
私が騎士として過ごすことを覚えたのも、彼が言い出したのがきっかけだ。
言い出すだけならまだしも、彼は実行するだけの地位と行動力を持ち合わせていた。
そういうことに全力を注ぐ、そういう男だったからこそ目が離せなかったのだろう。
主が亡くなった後も、私は何となく騎士に紛れて時を過ごしていた。
その時、顔見知りの風の精霊がやって来た。
自由気ままだった彼が人間と契約したことにも驚いたが、私もその契約者と契約を交わさないかと勧誘に来たことに驚いた。
とりあえず、会ってみることにした。
自由気ままな彼が契約した人間に会ってみたかったからだ。
契約者は、ヴィクトリアという名前の可愛い女の子だった。
ヴィクトリア――リアの第一印象は〝素直そうな子〟だった。
彼女は既に三人の精霊と契約を交わしていて、それも全員が上級精霊だった。
かなり珍しいことをしているのに驕った感じはなかった。
普通なら人間が精霊に執着するものだが、リアはそんな感じは全くなく、逆に精霊達のほうがこれでもかと執着していた。
見ていて面白い子だった。
そして、この子も目が離せなかった。
だからこそ、私は二度目の契約をすることにした。
「さて、今後について少し話しましょうか」
リアが部屋から出ていくと、私はこの国の王、リアの父親、そして騎士団長を見据えた。
「あなた達はリアに誰の目にも見える護衛をつけたいのではないですか? 精霊が側にいるとはいえ、姿が見えなければ少女が一人で出歩いていると勘違いされますからね」
「「「……」」」
戦力は充分でも、それが目に映っていなければリアが無防備だと思われてしまいます。
ちゃんとした護衛が付いている、そう周りに思わせたい。
カイルの役目は実際にリアを護ることだったのではなく、国から派遣された騎士が常に側にいると周りに牽制したかったのでしょう。
あとはまあ、精霊除けを遣われた場合、側に人がいるといないではリアの安全性が大幅に変わってくる。
そんなにたびたび起こってもらっては困りますが、リアは確か以前にそうやって誘拐されていると噂で聞いた。
ですから、保険は掛けておきたいのでしょう。
だけど――
「私が来る前に何があったのかは知りませんが、状況を見る限りカイルが何かをして、リア、もしくは契約精霊の勘気に触れたのでしょう?」
「「「っ!」」」
図星を指されたようで、息を呑む三人の姿に笑いが込み上げてくる。
様子からして、緑の精霊――確か……ヒューリーと呼ばれていましたね。
きっと、彼の勘気に触れたのでしょう。
風の精霊は私がここに来る少し前に契約したようですし、光の精霊はどちらかといえばリアを喜ばせることに力を注いでいましたからね。
「ですが、契約精霊が二人増えたとしても、このまま国から護衛を派遣しないというわけにはいかないのでしょう? 煩わしいことに、人の世には体裁というものがありますからねぇ」
「そ、それは……」
国の最重要人物であるリアに国から護衛が派遣されていないとなると、同じ国の人間はもちろん、周辺国が煩く言ってくるのだろう。
しかし、ヒューリーの様子からして、今後、人の護衛は絶対に認めないでしょうね。
「そこで提案しましょう。私を近衛騎士に所属したままリアの側に置くつもりはありますか? もちろん、あなた達には私が精霊であることは黙っていてもらって、ですね」
「「「!!」」」
私のことが精霊だとバレていないのなら、私を騎士として派遣することは可能でしょう。
そうすれば、国としての体裁が整えられる。
この提案はそちらちとって好都合なはずです。
「よ、よろしいのですか?」
「ええ、構いませんよ。私のほうから提案しているのですから」
まあ、精霊除けを遣われた場合には対処できませんが、それは別に対策をすればいい話ですからね。
どうとでもなるでしょう。
「では、決まりでいいですね」
「よろしくお願いします」
さて、用も済みましたし、さっそくリアのもとに行くことにしましょうか。
一国の騎士団に所属して、人間に紛れて生活をしているだなんて、精霊からすれば相当な奇行な行為なのだから仕方がない。
だが、それもこれも、私が昔、契約していた主の影響が大きい。
私の主はとても変わり者だった。
面白いことが大好きで、人生を面白おかしく過ごせるためだったら、どんな努力でも行う男だった。
その努力を別のことに使えば、誰もが認める人物になれただろうに。
私が騎士として過ごすことを覚えたのも、彼が言い出したのがきっかけだ。
言い出すだけならまだしも、彼は実行するだけの地位と行動力を持ち合わせていた。
そういうことに全力を注ぐ、そういう男だったからこそ目が離せなかったのだろう。
主が亡くなった後も、私は何となく騎士に紛れて時を過ごしていた。
その時、顔見知りの風の精霊がやって来た。
自由気ままだった彼が人間と契約したことにも驚いたが、私もその契約者と契約を交わさないかと勧誘に来たことに驚いた。
とりあえず、会ってみることにした。
自由気ままな彼が契約した人間に会ってみたかったからだ。
契約者は、ヴィクトリアという名前の可愛い女の子だった。
ヴィクトリア――リアの第一印象は〝素直そうな子〟だった。
彼女は既に三人の精霊と契約を交わしていて、それも全員が上級精霊だった。
かなり珍しいことをしているのに驕った感じはなかった。
普通なら人間が精霊に執着するものだが、リアはそんな感じは全くなく、逆に精霊達のほうがこれでもかと執着していた。
見ていて面白い子だった。
そして、この子も目が離せなかった。
だからこそ、私は二度目の契約をすることにした。
「さて、今後について少し話しましょうか」
リアが部屋から出ていくと、私はこの国の王、リアの父親、そして騎士団長を見据えた。
「あなた達はリアに誰の目にも見える護衛をつけたいのではないですか? 精霊が側にいるとはいえ、姿が見えなければ少女が一人で出歩いていると勘違いされますからね」
「「「……」」」
戦力は充分でも、それが目に映っていなければリアが無防備だと思われてしまいます。
ちゃんとした護衛が付いている、そう周りに思わせたい。
カイルの役目は実際にリアを護ることだったのではなく、国から派遣された騎士が常に側にいると周りに牽制したかったのでしょう。
あとはまあ、精霊除けを遣われた場合、側に人がいるといないではリアの安全性が大幅に変わってくる。
そんなにたびたび起こってもらっては困りますが、リアは確か以前にそうやって誘拐されていると噂で聞いた。
ですから、保険は掛けておきたいのでしょう。
だけど――
「私が来る前に何があったのかは知りませんが、状況を見る限りカイルが何かをして、リア、もしくは契約精霊の勘気に触れたのでしょう?」
「「「っ!」」」
図星を指されたようで、息を呑む三人の姿に笑いが込み上げてくる。
様子からして、緑の精霊――確か……ヒューリーと呼ばれていましたね。
きっと、彼の勘気に触れたのでしょう。
風の精霊は私がここに来る少し前に契約したようですし、光の精霊はどちらかといえばリアを喜ばせることに力を注いでいましたからね。
「ですが、契約精霊が二人増えたとしても、このまま国から護衛を派遣しないというわけにはいかないのでしょう? 煩わしいことに、人の世には体裁というものがありますからねぇ」
「そ、それは……」
国の最重要人物であるリアに国から護衛が派遣されていないとなると、同じ国の人間はもちろん、周辺国が煩く言ってくるのだろう。
しかし、ヒューリーの様子からして、今後、人の護衛は絶対に認めないでしょうね。
「そこで提案しましょう。私を近衛騎士に所属したままリアの側に置くつもりはありますか? もちろん、あなた達には私が精霊であることは黙っていてもらって、ですね」
「「「!!」」」
私のことが精霊だとバレていないのなら、私を騎士として派遣することは可能でしょう。
そうすれば、国としての体裁が整えられる。
この提案はそちらちとって好都合なはずです。
「よ、よろしいのですか?」
「ええ、構いませんよ。私のほうから提案しているのですから」
まあ、精霊除けを遣われた場合には対処できませんが、それは別に対策をすればいい話ですからね。
どうとでもなるでしょう。
「では、決まりでいいですね」
「よろしくお願いします」
さて、用も済みましたし、さっそくリアのもとに行くことにしましょうか。
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