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死に戻り編
赦しを⑤
しおりを挟む「嘘です、もういい加減、うんざりなさったんでしょう…!そんな悪女めいたことをしでかす女なら猶更…!」
僕の声に被せるように、セレスティアも悲鳴のように叫んだ。
「貴方を信じず、初恋相手に現実逃避して、命を担保にあなた方を縛った。貴方の夢の中の私はそんな女だったのでしょう。」
セレスティアの声が震える。
「…否定したいのに、1年前までの私ならば、そうなったのかもしれない、そう思います。ずっと貴方に好かれていないと、この家に必要ない存在だと思っていましたから」
「!そんな訳が…」
セレスティアがそう思っていたことが信じられなくて、僕は言葉が続かない。
「…でもこの1年、貴方は私にとても心を砕いてくれていました。言葉を尽くしてくれました。その優しい手で愛してくださいました。まんまと…もっと好きにならせておいて…それらは今日、私を捨てるためだったというのですか…?」
「…捨てるなど聞きたくもない…!なぜ…君は彼とでないと幸せには…」
「貴方の思慮深さは美点なのでしょう、けれど他の男に預けられる程度の愛なら要りません…!それを愛だと押し付けないで…!」
「ではどうしろというんだ…!君を幸せに…」
「貴方がしてください…!貴方が笑っていてください、貴方だけが触れてください、貴方が…愛してください。それが”今”の私の幸せです」
「…………そんな、馬鹿な…」
「…ウィリアム様、どうか『他の女性と親しくしないで』。…これは、初めてお話しした時からずっと、変わらず私が願っていることなんですよ。今度は私が”貴方の妻の座”に噛り付いてみせましょうか?私が出て行って、貴方に触れる女性が出てくるかもしれないなんて、考えたくもありません。絶対にいや…!」
「…!!」
――セレスティアの言葉が急にストンと入ってきた気がした。
「………」
…なんという拗れ方。
なんという遠回り。
子が3人もいる貴族の夫婦が、泣いて、喚いて、本音のぶつけ合い。
髪も顔も乱れて、体面など取り繕うことも出来やしない。
「はは…いいな…君にそんな風に独占してもらえる日がくるなんて…」
「……こんなに本性を見せた女に呑気な物言いですね」
「そんな可愛い独占欲程度で”本性”なんて言ってしまう君だから好きなんだ」
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