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死に戻り編
帰れない夜①
しおりを挟む夜会の最中、セレスティアと連れ立って、窓の外を眺める。
「…これは、帰れなさそうだね。」
「エステル…泣いていないからしら…」
「はは、三人とも君に会えない夜は泣くかもね。明日うんと可愛がってやろう」
むしろ自分が寂しそうなセレスティアを、慰めたくて髪を撫でる。
外は馬車を走らせるのが困難な程の豪雨に加えて、雷が鳴っていた。
「叔父上は元々僕らの部屋を用意してくれていたから、そこへ泊まって帰ろうか。」
◇◆◇◆
御者にも泊まる様に言付けて、ゲストルームより上の親族専用の部屋に入る。
ここならば、護衛も一段階増えて、不埒者はまず入れない。
「セレスティア、大丈夫かい?産後なのに頑張ってくれたね」
「大丈夫ですわ、ウィル様。気にかけてくださって、ありがとうございます。」
実は寝室にふたりきりというのは、ひと月以上ぶりだった。
エステルの授乳や、少し赤ちゃん返りしたルイスと、甘えたい盛りのネイサンが入れ替わり立ち代わり寝室にやってくる、という訳もある。
それに、産後の君に無理をさせないようにと母からキツく言われていたからでもあった。
だが、一番の理由は、エステルがもう産まれてきてくれたから、だ。
ふたり湯浴みを済ませて、メインルームの寝台に腰かける。
今日はいつもの侍女がいないので、僕がセレスティアの髪を拭く。
「ありがとうございます…」
照れているセレスの赤くなった耳が見えて、欲情しそうになる自分を必死で止める。
「…君はここで寝るといい。僕はあちらの寝室を使おう」
そうは言っても、万が一誰か侵入してきた時の為、あのソファーで夜を越しそうだが。
「……っいやです」
「セレス?」
君の”いや”なんて珍しいもの、物凄く新鮮でまじまじと見つめてしまう。
「…今日、ぐらいは…ウィルを独り占め…させてください」
セレスの言葉に心臓が物凄い音を立てた。
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