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覚醒

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(アリサ痛かったよね・・・苦しかったよね・・・くっ・・・)

『・・・さない・・・許せないっ・・・うわああぁぁぁっ!!』

 アンズの体を青白いオーラが覆ってゆく。そして、そのオーラに触れた黒い霧が蒸発するかのように消滅してゆく。

タンッ

 アンズ両足がゆっくりと地を離れる。

『なっ、浮遊だとっ、ばっ、馬鹿な!!・・・うっ』

 驚きに身を震わせる黒い影を、まるで人が変わったようなアンズの鋭い眼光がい抜く。

『・・・許さない・・・絶対に!!』

ギュンッ

 黒い影に向かい、真っ直ぐ猛スピードで上空を突き進むアンズ。

『ぐっ・・・これでもくらうがいいっ!!』

 アンズから感じ取れるれる強大な力に畏怖し、黒い影は手にもった黒い槍をアンズに向かって投げる。

 アンズに向かって槍はその速度を増してゆく。そしてアンズの視界に入る。

ブンッ

『こんなものっ』

バキャッ

 アンズは迫りくるその槍を、素早い動きでかわすと膝蹴りで真っ二つにへし折る。

 その一部始終をみた黒き影の体に戦慄が走る。

『ぐうぅっ・・・なんて奴だ』

 黒い影のマントが複数の鋭利な刃物にかわり、アンズに次々と遅いかかる。

『死ねっ、死んでしまえぇ!!』

 アンズはその場で一時停止し、纏っているオーラと同じ色の気の塊を両手の中に作り出すと、それを放出する。

『はああぁぁぁっ!!』

 黒い影のマントが変化した鋭利な刃物が全て焼かれ灰とかす。

『なっ・・・ばかな・・・』

ズンッ

『がっ・・・がはあっ』

 その光景に唖然としている黒い影の腹部をアンズの拳がめり込み。体を九の字にまげる。

『許さない・・・お前だけは・・・絶対に許さないっ』
『ぐぐっ・・・がはぁっ』

 黒い影の口元から血らしき液体が流れ出る。

『やあぁぁっ』

ゴガッ

 休む間もなく、すぐ続け様に少女の右の飛び膝蹴りが黒い影の顎の先端を捉え、粉砕する。

 遥か上空へと吹き飛ばされてゆく黒い影。それをも上回る速さでアンズは相手の頭上まで移動し、右足を高くあげると踵落としを見舞う。

『はあぁぁっ』

ゴッ

『ぐっはあぁぁっ』

 地面に落下してゆく黒い影に更に追いうちをかけるべく、右腕を天に掲げ、拳にエネルギーを集めてゆく。

『くっ・・・やむをえん』

  その気迫を肌で感じ取った黒い影は危険を感じ、水晶を浮かび上がらせる。

『消えてしまえっ!!』

 アンズは抑えきれない怒りの感情とともにボクシングでいうストレートのような動作で右腕を振り抜いた。

『くっ・・・』

 かなりのダメージをおった黒い影の手が水晶に伸びる。

シュンッ

 黒い影の体が水晶に吸い込まれるように消えてゆく。そしてやがて水晶自体も消え去った。

ドシュウゥゥッ

 ワンテンポ遅れでアンズの放った一筋の閃光が夕焼けの空を青白く照らし、地面に大きな風穴をあけた。

『くっ・・・』

 黒い影を逃したことに唇を噛み締めながら地面に向かいアンズはゆっくりと降下してゆく。

 黒い影が撤退した為、絶望の黒い霧から開放されたコウ。遠くの方のアンズの姿を捉える。

『えっ・・・あれ、アンズせんぱい・・・えっ・・・宙に浮かんでる?』

 アンズは地に足をつくとそのまま膝からがくりと崩れ落ちた。

『!!・・・アンズせんぱいっ』

 コウはアンズの元へとすぐに駆け出した。

 コウとの距離が十メートルくらいになったところで、アンズはムクリと起きあがるとおぼつかない足どりで歩き出した。

『アンズせんぱい大丈夫ですかぁ?』

タタタッ

 駆け寄るコウ。

『・・・アリサ・・・死んでなんていないよね・・・約束したもん・・・そうだ・・・アリサが待ってる・・・早く行かないと』

 方針状態のアンズにコウの声は届かず、アンズの声がコウの耳に悲痛な叫びとなって届いた。

『・・・あっ・・・アンズせんぱい・・・うく』

 コウは今は亡き親友の元に向かう力ないアンズの姿を、涙を浮かべながら見送るしかなかった。
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