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聖なる光

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『ぐっ・・・な・・・なに・・・この・・・痛み』

ドドドドッ・・・

『が・・・がはっ、がはっ、げほっ、げほぉっ』

(アンズ・・・約束は守ったよ)

 アリサは親友にきっと、そんな歓喜の言葉を言いたかったにちがいない。

 しかし、身体中に無数に突き刺さっている黒き影の刃がそれを許さなかった。アリサの身体が膝からガクリと落ち、身体中を駆け巡っていた赤い血液が刃の隙間から滲みでる。

 朦朧とする意識の中で少女の瞳は、黒い影を映らせていた・・・警官の命を奪い去った忌まわしい影をっ。

 悔しくてたならなかったであろう・・・しかし、やがて、アリサという名前の少女の魂はこの世から別れをつげた。

 魂の抜けた少女の肉体から、黒い刃を抜き取る黒い影。刃は漆黒のマントへと姿をかえる。

 ズブリッと不愉快な音をたて抜き取られた傷跡からは大量の赤い血液が大きな音をたてて噴き出し、部室の床を赤く染めた。

『・・・さて』

 黒い影は何事もなかったかのようにそう呟くと、陸上部部室の屋根をすり抜け、天に召されるように昇る光の姿をその目に捉えた。

・・・光の姿・・・それはアリサの魂だった。

『・・・素晴らしい輝きと力だ・・・あれがこれほどまでに成長を遂げるとはな。人間とはわからんものだ・・・ふっ、ふははははっ!!では、いただくとしよう』

 歓喜に震える笑い声をあげながら、光の魂を喰らうべく手を伸ばす。

 『ぐわあああああっ!!』

 魂に触れようとする黒い影の指先から、ぢりぢりと焼き焦げるような音が聞こえ、アリサの魂から放たれる眩しいばかりの光により浄化されてゆく。闇の者は堪らず手をひく。

 光(聖)と影(闇)は通常は相容れぬもの・・・光が大きいか、影が大きいか、呑み込まれるか、呑み込まれないか、これがルールである。

 今回はアリサの光が、黒い影の闇を上回ったのである。
 
『くそっ・・・この私の闇の力より、あれの力ほうが強いというのかっ!馬鹿なっ!!』

 黒い影は忌々しそうに天を見上げ、人の如き分際で我(が)を罵った強大な力を扱う龍の男の姿を頭に思い描いていた。

(くっ・・・残念だが、あれの魂は諦めるしかあるまい・・・当初の予定通り特性変異人の魂をいただくとするか

・・・はははっ、待っていろ死神・・・貴様の魂は私がもらいうけるっ!その強大な力とともになっ!!)

 狂気と復讐に彩られる黒い影。そして、次のターゲットであるアンズの気配をさぐると景色と同化するようにその漆黒に姿を消した。

 その頃、ジェネと同じくレツ達のことを前向きに考えだしたイフ。二人から話を聞いたスズフミとノエルを含めた四人は

 自分達と同じく、悪魔の子供の遊び(悪魔のゲーム)の犠牲となったバレー部の部員達を助けるべく体育館に足を運んでいた。
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