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第四章 絶望を抱いて逝け
第46話
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この隠し扉は内保局全てにあり、万が一にもこの本拠地が襲撃された場合に、外部に漏れてはならない情報や機材を隠しておく部屋だった。鍵付きの引き出しの奥にしまってあるその銃と銃弾全てを、佐々木は持ってきた。
「俺が始末するから、安心しろ」
「えぇ、判ったわ」
二人の関係は内保局でも秘密にしているので、長居は無用とばかりに男は身繕いをすませ部屋を出て行った。部屋の主である真理子もシャワーを浴びるために浴室に姿を消した。真理子が常にかけている眼鏡の蝶番に仕込んでいた極小の盗聴器が、シャワーの音を伝えてくる。ベッドサイドに置かれた彼女の眼鏡は、先ほどまで交わされていた会話をある人物の手許へ届けていた。
それらを全て録音していたその人物は
「証拠を掴んだ」
と呟くと、その音声のコピーを大急ぎで作る。
早めにこの会話を上層部に提出し、二人を内部告発しなければと決意を固める。二人の関係を疑い、機密漏洩をしているのではないかと調査をしていた甲斐があった。三年前の間島暗殺に関与していたことも窺える先ほどの会話に、その人物は奥歯を噛みしめる。
幽霊セクションのエースだった間島を喪った穴は大きく、漏洩してしまった自衛軍の機密を全て書き換え使用不能にするまで、内保局も自衛軍も政府も大混乱だった。その隙をついて一時期反日国家が息を吹き返したが、何とか撃退できたのは奇跡に近い。しかし三年前の漏洩がきっかけで、再び日本にスパイたちが多く潜り込むようになってしまった。その切っ掛けを作ったこの二人を処分せねば、間島や香澄のような犠牲者が現れてしまう。
「あの二人は外患誘致罪で、処断しなければ。法の裁きなどではなく、内保局流の裁きで」
その人物は怒りを抑え込み、上層部に証拠の音声データと、ガンスミス・セクションの大平チーフから提供された、とある証拠を添付し一斉送信する作業を始めた。
「間島……時間がかかってしまったが、やっとお前の無念を晴らせそうだ。待っていろよ」
最後のエンターキーを押して、その人物は大きく息を吐いた。そして真夜中にもかかわらずスマホを取り出すと、回線を暗号化してとある人物に連絡を入れる。コール二回で出たその相手はどうやら起きていたらしく、いつもと同じ声音で返事をしてきた。
「もうすぐ全てが終わりそうです」
手短にそれだけを言うと、相手も短く労いの言葉をかけてくれた。同志に余計な言葉はいらない。共通の目的に向かって数年前から手を組んでいた同志たちは、長年の隠密活動がようやく実を結ぶことへ感動すら覚えて微かに身震いをした。
盗聴をしていた人物からすれば十年以上も騙され、いいように使われてきたのだ。親友だった間島をあんな形で殺したあいつに、やっと報いを受けさせることができる。そう思うと眠れない。
「自分の手で必ず仇を討つ。首を洗って待っていろよ」
昂ぶる感情を抑えきれず、髪を乱暴に掻き回すと大きく息を吐いた。盗聴されていたと知らない真理子とその愛人は、いつものように眠りに就いた。
「俺が始末するから、安心しろ」
「えぇ、判ったわ」
二人の関係は内保局でも秘密にしているので、長居は無用とばかりに男は身繕いをすませ部屋を出て行った。部屋の主である真理子もシャワーを浴びるために浴室に姿を消した。真理子が常にかけている眼鏡の蝶番に仕込んでいた極小の盗聴器が、シャワーの音を伝えてくる。ベッドサイドに置かれた彼女の眼鏡は、先ほどまで交わされていた会話をある人物の手許へ届けていた。
それらを全て録音していたその人物は
「証拠を掴んだ」
と呟くと、その音声のコピーを大急ぎで作る。
早めにこの会話を上層部に提出し、二人を内部告発しなければと決意を固める。二人の関係を疑い、機密漏洩をしているのではないかと調査をしていた甲斐があった。三年前の間島暗殺に関与していたことも窺える先ほどの会話に、その人物は奥歯を噛みしめる。
幽霊セクションのエースだった間島を喪った穴は大きく、漏洩してしまった自衛軍の機密を全て書き換え使用不能にするまで、内保局も自衛軍も政府も大混乱だった。その隙をついて一時期反日国家が息を吹き返したが、何とか撃退できたのは奇跡に近い。しかし三年前の漏洩がきっかけで、再び日本にスパイたちが多く潜り込むようになってしまった。その切っ掛けを作ったこの二人を処分せねば、間島や香澄のような犠牲者が現れてしまう。
「あの二人は外患誘致罪で、処断しなければ。法の裁きなどではなく、内保局流の裁きで」
その人物は怒りを抑え込み、上層部に証拠の音声データと、ガンスミス・セクションの大平チーフから提供された、とある証拠を添付し一斉送信する作業を始めた。
「間島……時間がかかってしまったが、やっとお前の無念を晴らせそうだ。待っていろよ」
最後のエンターキーを押して、その人物は大きく息を吐いた。そして真夜中にもかかわらずスマホを取り出すと、回線を暗号化してとある人物に連絡を入れる。コール二回で出たその相手はどうやら起きていたらしく、いつもと同じ声音で返事をしてきた。
「もうすぐ全てが終わりそうです」
手短にそれだけを言うと、相手も短く労いの言葉をかけてくれた。同志に余計な言葉はいらない。共通の目的に向かって数年前から手を組んでいた同志たちは、長年の隠密活動がようやく実を結ぶことへ感動すら覚えて微かに身震いをした。
盗聴をしていた人物からすれば十年以上も騙され、いいように使われてきたのだ。親友だった間島をあんな形で殺したあいつに、やっと報いを受けさせることができる。そう思うと眠れない。
「自分の手で必ず仇を討つ。首を洗って待っていろよ」
昂ぶる感情を抑えきれず、髪を乱暴に掻き回すと大きく息を吐いた。盗聴されていたと知らない真理子とその愛人は、いつものように眠りに就いた。
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