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第一章 国家機密を守り抜け
第15話
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十年前。
自衛隊が紆余曲折を経て、日本国軍へと正式に名称と組織が再編された。その際に海兵隊が海軍内に新設され、階級も旧大日本帝国軍時代のように将官・佐官・尉官と改められた。同盟国であるUS国と同様に海兵隊は、表向きは海軍に組み込まれつつも実は独立しており、いざ実践となると上陸作戦など切り込み隊としての役目を果たす。世界で第五位の軍事国家へと変貌を遂げた日本は、未だ根強い反日感情を持つ国家たちから受ける攻撃を水面下で撃退している。
各地に残る演習場のひとつである富士演習場から軍用ヘリが一機、青木ヶ原樹海へと飛び立つ。夜の静寂をヘリの音が切り裂くが、辛うじて夜間飛行が可能な時間帯だ。広大な青木ヶ原樹海。そのちょうど中央辺りが、不自然さを感じさせない程度に間引きされ、微かな明滅が見えた。建人と藤井を乗せたヘリは、その目印とも取れる明滅の上空に来るとホバリングをする。やがてそのまま着陸態勢に入った。
上空からでは樹木で隠れて見えないが、地表すれすれの低空飛行。ヘリが並んで三機は入る巨大な風穴がある。やがてヘリは、その風穴に呑み込まれていった。しばらくしてローター音は止み、静寂が戻った。
ここは、国の最高機密機関である。
藤井と別れた健人は【Ⅵ】と書かれた扉へと向かう。その顔は先ほどまでの厳しい表情とは打って変わり、とても穏やかなものとなっていた。向かう先は、銃器類のメンテナンスや改造等を行う銃器工たちのセクション。彼の婚約者が、ガンスミスとして働いている。声紋、瞳の虹彩認証、指紋、動作認証の検査があり、それらを全てクリアしていく。フィアンセの高田香澄が詰めている作業場をノックすると、中から誰何される。
「俺だよ。いま戻った」
「……オレオレ詐欺なら、間に合っています」
拗ねた声が返ってきて、健人は堪えきれず吹き出してしまった。そのまま扉を開けて中に入ると、今どき珍しい回転式銃を分解し部品の歪みを直す、婚約者が視界に入る。結婚式の打ち合わせをしたいのに、喫緊の仕事が入り本部を出て行ってしまったことが、彼女が盛大に拗ねている原因だろう。健人の頬に、小さく笑みが浮かぶ。
「悪かったよ香澄。でもちゃんと戻ってきたから、機嫌直せよ」
「そうね。無事に戻ってきたから、今回は大目に見るわ。あのね、昨日ドレスが届いたの」
とりあえず満足のいく修正ができたのだろう。香澄は慣れた手つきで銃を組み立て、動作確認をする。彼女のガンスミスとしての腕前は折り紙付きで、リボルバーは新たな命を吹き込まれ、誇らしげに香澄の掌中に鎮座している。
「本部の私室に、置いてあるのか?」
「式に招待するのはここの人間だけだから、私室に置いておいた方が合理的と思って」
香澄は表向きの職業を、海外をメインにしたツアーコンダクターだと近所に言ってある。内閣保安情報局の仕事で自宅をしばらく留守にしていても、誰も不審に思わない。
自衛隊が紆余曲折を経て、日本国軍へと正式に名称と組織が再編された。その際に海兵隊が海軍内に新設され、階級も旧大日本帝国軍時代のように将官・佐官・尉官と改められた。同盟国であるUS国と同様に海兵隊は、表向きは海軍に組み込まれつつも実は独立しており、いざ実践となると上陸作戦など切り込み隊としての役目を果たす。世界で第五位の軍事国家へと変貌を遂げた日本は、未だ根強い反日感情を持つ国家たちから受ける攻撃を水面下で撃退している。
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上空からでは樹木で隠れて見えないが、地表すれすれの低空飛行。ヘリが並んで三機は入る巨大な風穴がある。やがてヘリは、その風穴に呑み込まれていった。しばらくしてローター音は止み、静寂が戻った。
ここは、国の最高機密機関である。
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「俺だよ。いま戻った」
「……オレオレ詐欺なら、間に合っています」
拗ねた声が返ってきて、健人は堪えきれず吹き出してしまった。そのまま扉を開けて中に入ると、今どき珍しい回転式銃を分解し部品の歪みを直す、婚約者が視界に入る。結婚式の打ち合わせをしたいのに、喫緊の仕事が入り本部を出て行ってしまったことが、彼女が盛大に拗ねている原因だろう。健人の頬に、小さく笑みが浮かぶ。
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「そうね。無事に戻ってきたから、今回は大目に見るわ。あのね、昨日ドレスが届いたの」
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「本部の私室に、置いてあるのか?」
「式に招待するのはここの人間だけだから、私室に置いておいた方が合理的と思って」
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