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序章 過去と始まりの物語
第8話
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走り込みに腕立て伏せ、狙撃銃を携帯した上での匍匐前進などの体力錬成訓練は勿論のこと、銃器類の分解や組み立て訓練なども行われていく。半年の基礎訓練を重ねて、素人を軍人の端くれへと厳しく育て上げていく。遠矢や中田の目から見て、特殊部署に不適合と判断された男女は基礎訓練終了と同時に、後方支援部署の訓練へと配置換えが行われた。
倉科兄妹を含めた十二人が、現場に立つ第一期の候補生として残った。十ヶ月が経つと、更に過酷な陸軍のレンジャー訓練へ。現役の陸軍に所属するレンジャー部隊員でも、このサバイバル訓練は血反吐を吐くほどの厳しいもの。屈強な男ですらそうなのに、女性である有紗は根性はともかく体力的に相当厳しかった。しかし、脳裏に浮かぶ母だった女と腕を組む男の姿。必ずこの二人に復讐してやるとの思いだけが、彼女を支えた。
健人も同じだ。武術を幼少時から修めており体力には自信があったが、過酷で有名なレンジャー部隊の訓練は音を上げそうになった。だが妹が胃液は吐いても弱音ひとつ吐かずに、厳しい訓練について行っている。兄の自分が尻尾を撒いて逃げてたまるかとの思いがあった。全ては、彼らが配属されるであろう特殊部署に必要なスキルを得るために。
一年半かけて陸軍での訓練は終了した。過酷な訓練をクリアした彼らは、内閣保安情報局の中でも存在を秘匿されている、暗殺を請け負う特殊部署に配属された。彼らは第一期生として、これから命がけで国のために暗殺者として生きていく。例え戸籍上は死人だとしても、国を護るために暗殺者になったことをただの一人も後悔していない。
内閣保安情報局はその前身である内閣情報調査室同様に、内閣府の直轄組織である。局長は内閣総理大臣であり、存在を秘匿されている本部は、広大な青木ヶ原樹海の中にある。その本部に初めて足を踏み入れた瞬間、兄妹は改めて自分たちは国家の道具になったのだと自覚した。憲法で保障されている、ありとあらゆる個人の権利など剥奪されているのだと。本部からの出入り口はヘリポート一ヶ所のみ。広大な青木ヶ原樹海のほぼ中央に存在する内保局本部内に、局員たちが生活をしていた。
「ようこそ内保局本部へ。俺は射撃教官の長澤だ。基礎訓練で射撃の適性を見出された者たちへ、銃器類のエキスパートとなるよう訓練をする。今まで以上に過酷だが、付いてきて欲しい」
射撃の適性を見込まれた有紗は、教官と名乗った長澤の横顔を目にした途端、もう少しで声をあげそうになった。一年半前に見た、母と歩く男の横顔と同じそれを眼前に見て、思わず強く拳を握る。心臓が痛い。呼吸が我知らず乱れそうになる。顔色は恐らく蒼白だろう。
(この男、この男! よりにもよって教官ですって?)
有紗の他にも数名、銃器類のエキスパートとなるべく選抜されている。隣に立っていた同年代の少年が、不思議そうに有紗に一瞥を投げていた。
倉科兄妹を含めた十二人が、現場に立つ第一期の候補生として残った。十ヶ月が経つと、更に過酷な陸軍のレンジャー訓練へ。現役の陸軍に所属するレンジャー部隊員でも、このサバイバル訓練は血反吐を吐くほどの厳しいもの。屈強な男ですらそうなのに、女性である有紗は根性はともかく体力的に相当厳しかった。しかし、脳裏に浮かぶ母だった女と腕を組む男の姿。必ずこの二人に復讐してやるとの思いだけが、彼女を支えた。
健人も同じだ。武術を幼少時から修めており体力には自信があったが、過酷で有名なレンジャー部隊の訓練は音を上げそうになった。だが妹が胃液は吐いても弱音ひとつ吐かずに、厳しい訓練について行っている。兄の自分が尻尾を撒いて逃げてたまるかとの思いがあった。全ては、彼らが配属されるであろう特殊部署に必要なスキルを得るために。
一年半かけて陸軍での訓練は終了した。過酷な訓練をクリアした彼らは、内閣保安情報局の中でも存在を秘匿されている、暗殺を請け負う特殊部署に配属された。彼らは第一期生として、これから命がけで国のために暗殺者として生きていく。例え戸籍上は死人だとしても、国を護るために暗殺者になったことをただの一人も後悔していない。
内閣保安情報局はその前身である内閣情報調査室同様に、内閣府の直轄組織である。局長は内閣総理大臣であり、存在を秘匿されている本部は、広大な青木ヶ原樹海の中にある。その本部に初めて足を踏み入れた瞬間、兄妹は改めて自分たちは国家の道具になったのだと自覚した。憲法で保障されている、ありとあらゆる個人の権利など剥奪されているのだと。本部からの出入り口はヘリポート一ヶ所のみ。広大な青木ヶ原樹海のほぼ中央に存在する内保局本部内に、局員たちが生活をしていた。
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(この男、この男! よりにもよって教官ですって?)
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