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仲間のカタチ
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視線を感じて顔を向けるとコルンスさんがもっと食べるかい?と聞いてきた。うんうんと頷き、おかわりもしっかりと完食した。
「じゃあ診断するから、そこに座っててくれる?」
診断?と疑問に思いながら大人しく座っていると、足元に魔法陣のようなものが現れた。
それと同時にコルンスさんの目の前に画面が表示され、何かを確認しているようだった。
体感としては特に感じるものもなく、しばらくしたら魔法陣は消えてしまった。
「ステータスに異常はなさそうだけど……このエラーは何だろう…?」
一番最後の項目に“Error”と表示されているのが俺でも確認出来た。
もしかしたら俺がヴェンくんと入れ代わってしまったことが原因なのかな、とも思えた。
「ヴェン、もし異常が起きたらちゃんと伝えるんだぞ?」
どうやって、とも聞くことが出来ずに俺は眉をひそめた。それが悲しい表情になっていたのか、軽く抱擁された。
上手く意思表示を伝える事が出来ないままの状態に俺は複雑な歯痒さを感じ始めていた。
普段、ヴェンくんとコルンスさんは平和に過ごしているらしい。それはまあ、そうなのかもしれないけど。
この世界に来た俺に比べたら、あまりにも何もなさすぎる状況に緊張が解けかけていた。
公園のような広場でフリスビーをただただ追いかけ、口でキャッチしてコルンスさんにお返しする。
犬である本能なのかは不明だが、苦ではないし風を切って走っている最中はワクワクするような感覚もある。
「楽しかったか?ちょっと休憩しよう」
弱い、弱いけれどしっかりと感じる。早く捜し出さないと心配だ
体が思うように動かない上にアイツ、めちゃくちゃにしやがって
どうでもよくないけどそんなことはどうでもいい、既に悪い状況には変わりない
「ん?…どういうことなんだ?」
わずかに感じた感覚を頼りに向かうと、そこは公園だった。遊んでいる連中はまあまあいる。
「…あの犬?狼か?…どっちでもいいが、あれが……?」
ずんずんと近付いてみると、飼い主の男が俺に気付いて不信感を露わにしながらこちらを窺っている。
「その犬…一体何なんだ?」
犬も俺に気付き、不思議そうな表情で座っていた。この犬が本当に…?
「いきなり何なんですか」
俺とコルンスさんの前に現れたこの男は耳からしてエルフなのだろうということは分かった。
しかしややチャラいというのかガラが悪いのか、そんな雰囲気だった。
犬から見ても背が高いというのは分かった。一部露出している衣服の隙間からは細身ではあるが筋肉もしっかり見える。
(なんだろう、また嫌なタイプのエルフだったりするのかな…)
コルンスさんの足元へ隠れるようにしてそのエルフを窺った。人間の時もそうだったけど、自分がいかに非力だということを実感させられる。
するとそのエルフはコルンスさんに向けて膝をついて頭を垂れた。
「悪ィ、その犬…いや、狼…さん……について、聞きたいことがあった」
「この仔はヴェンだ」
コルンスさんは俺を紹介しながらも俺の顔を撫で回した。気持ちはいいけど、ちょっとだけ複雑な思いになるのは否めない
「……最近おかしな事態に巻き込まれていたりしてないか?…オレはレイル、最近起きている奇妙な現象について調査している」
(レイル……レイル…!?…でも、こんなだったっけ……?)
彼は、レイルは俺が作った2人目のキャラクターだ。でも、こんな性格や見た目にはしていなかったような気がする。
もっと飄々とした印象で、俺とは正反対のイメージでキャラメイクしたはずだった。
「……やっぱりそうか」
俺を見てレイルは確実にそう言った。何かを感じ取ったのだろうか、俺には犬になったことですら理解出来ていないのに
それでも俺が彼らの云う主人として認識したなら、この状況をどうにかしてくれるかもしれない
「すまないが説明してくれ、あとこの仔は渡さないぞ」
キッとコルンスさんは彼を軽く睨む、レイルは苦笑しながら顔を振った。
「オレは全てを知っている訳じゃないが、1つだけ確実な事がある」
今度は彼がコルンスさんを睨んだ。間を置いて、彼は息を吐いた。
「中身はそのヴェン、とやらではないってことだ」
「……何をふざけたことを言っている?からかっているのか」
「テメェこそバカにしてんのか?…俺の主人を犬にしやがって」
今にもブチ切れそうな様子のレイルに俺は間に入って軽く鳴いた。どうして仲裁ばかりする場面になるんだ!?
(それにしても短気すぎない…!?俺だって意味分かってないのにコルンスさんが分かる訳ないじゃん)
コルンスさんは首を傾げた。何を言っているんだ?と不機嫌そうに答える。
「おっと悪ィ、アンタもこれを見ただろ?」
俺のステータスが表示され、コルンスさんが疑問に思っていた“Error”という項目を指差した。
「じゃあ診断するから、そこに座っててくれる?」
診断?と疑問に思いながら大人しく座っていると、足元に魔法陣のようなものが現れた。
それと同時にコルンスさんの目の前に画面が表示され、何かを確認しているようだった。
体感としては特に感じるものもなく、しばらくしたら魔法陣は消えてしまった。
「ステータスに異常はなさそうだけど……このエラーは何だろう…?」
一番最後の項目に“Error”と表示されているのが俺でも確認出来た。
もしかしたら俺がヴェンくんと入れ代わってしまったことが原因なのかな、とも思えた。
「ヴェン、もし異常が起きたらちゃんと伝えるんだぞ?」
どうやって、とも聞くことが出来ずに俺は眉をひそめた。それが悲しい表情になっていたのか、軽く抱擁された。
上手く意思表示を伝える事が出来ないままの状態に俺は複雑な歯痒さを感じ始めていた。
普段、ヴェンくんとコルンスさんは平和に過ごしているらしい。それはまあ、そうなのかもしれないけど。
この世界に来た俺に比べたら、あまりにも何もなさすぎる状況に緊張が解けかけていた。
公園のような広場でフリスビーをただただ追いかけ、口でキャッチしてコルンスさんにお返しする。
犬である本能なのかは不明だが、苦ではないし風を切って走っている最中はワクワクするような感覚もある。
「楽しかったか?ちょっと休憩しよう」
弱い、弱いけれどしっかりと感じる。早く捜し出さないと心配だ
体が思うように動かない上にアイツ、めちゃくちゃにしやがって
どうでもよくないけどそんなことはどうでもいい、既に悪い状況には変わりない
「ん?…どういうことなんだ?」
わずかに感じた感覚を頼りに向かうと、そこは公園だった。遊んでいる連中はまあまあいる。
「…あの犬?狼か?…どっちでもいいが、あれが……?」
ずんずんと近付いてみると、飼い主の男が俺に気付いて不信感を露わにしながらこちらを窺っている。
「その犬…一体何なんだ?」
犬も俺に気付き、不思議そうな表情で座っていた。この犬が本当に…?
「いきなり何なんですか」
俺とコルンスさんの前に現れたこの男は耳からしてエルフなのだろうということは分かった。
しかしややチャラいというのかガラが悪いのか、そんな雰囲気だった。
犬から見ても背が高いというのは分かった。一部露出している衣服の隙間からは細身ではあるが筋肉もしっかり見える。
(なんだろう、また嫌なタイプのエルフだったりするのかな…)
コルンスさんの足元へ隠れるようにしてそのエルフを窺った。人間の時もそうだったけど、自分がいかに非力だということを実感させられる。
するとそのエルフはコルンスさんに向けて膝をついて頭を垂れた。
「悪ィ、その犬…いや、狼…さん……について、聞きたいことがあった」
「この仔はヴェンだ」
コルンスさんは俺を紹介しながらも俺の顔を撫で回した。気持ちはいいけど、ちょっとだけ複雑な思いになるのは否めない
「……最近おかしな事態に巻き込まれていたりしてないか?…オレはレイル、最近起きている奇妙な現象について調査している」
(レイル……レイル…!?…でも、こんなだったっけ……?)
彼は、レイルは俺が作った2人目のキャラクターだ。でも、こんな性格や見た目にはしていなかったような気がする。
もっと飄々とした印象で、俺とは正反対のイメージでキャラメイクしたはずだった。
「……やっぱりそうか」
俺を見てレイルは確実にそう言った。何かを感じ取ったのだろうか、俺には犬になったことですら理解出来ていないのに
それでも俺が彼らの云う主人として認識したなら、この状況をどうにかしてくれるかもしれない
「すまないが説明してくれ、あとこの仔は渡さないぞ」
キッとコルンスさんは彼を軽く睨む、レイルは苦笑しながら顔を振った。
「オレは全てを知っている訳じゃないが、1つだけ確実な事がある」
今度は彼がコルンスさんを睨んだ。間を置いて、彼は息を吐いた。
「中身はそのヴェン、とやらではないってことだ」
「……何をふざけたことを言っている?からかっているのか」
「テメェこそバカにしてんのか?…俺の主人を犬にしやがって」
今にもブチ切れそうな様子のレイルに俺は間に入って軽く鳴いた。どうして仲裁ばかりする場面になるんだ!?
(それにしても短気すぎない…!?俺だって意味分かってないのにコルンスさんが分かる訳ないじゃん)
コルンスさんは首を傾げた。何を言っているんだ?と不機嫌そうに答える。
「おっと悪ィ、アンタもこれを見ただろ?」
俺のステータスが表示され、コルンスさんが疑問に思っていた“Error”という項目を指差した。
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