Rの短編集

R(アール)

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約15年間のすれ違い

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言葉足らずの若干クソなα攻め×発情期が来なくなったことを言い出せないΩ

書きたいところだけを殴り書きしているのでかなり支離滅裂で足りない面もあると思います。ご了承ください。



_____________

大好きな人と結婚して15年になる。

僕は初めて会った時から優くんが大好きだった。

優くんは僕よりも5歳年上で、物腰が柔らかくとても親切で、仕事もでき、何をしても秀でているような人だった。

だから、結婚できると知ったその時は、舞い上がるような気持ちだった。

でも、僕らはこれだけ長く一緒にいても番ではない。

それは…優くんには他に大切な人がいて、その人と番になりたがっているからだ。

だから僕は、いつか来るであろうその日に、いつまでも怯えながらも、どうすることもできず、君のとなりに居続けている。




____________

優くんは他の人を愛している。

それはわかっているけど一緒にいて住んでいる彼が…発情期になると家をでて帰ってきたら他のΩの匂いをさせていることに僕の体は徐々におかしくなっていった。

フェロモンの周期も最初は間隔が長くなって、最近ではフェロモンもおかしくなって発情期もこなくなってしまった。
Ωとしても欠陥品になっていくのを感じていた。

最初の5年は辛かったけれど何とか耐えられた。

でも優くんが毎回発情期のときに家をでて、部屋には誰の気配もなく優くんがいないのがわかって、誰にも助けを求めることができない。

誰にも相談することができなくて、僕はおかしくなっていった。


でも優くんはどれだけ願っても、帰ってこないしフェロモンがなくなったことも発情期がきてないことも気づいてない。


大事にされてないことなんてよくわかってる…

優くんに告白されて真に受けて結婚してしまった、僕がバカだったんだ…。



__________

「そろそろ発情期だったよな。俺、また家でるな。」

「うん。わかったよ。いつも家からだしちゃってごめんね…、僕が外に行ければいいんだけど…」

「いや、お前は休んでろ。ここが一番セキュリティもしっかりしてるし、安心だろ」

「うん。ありがとう。」

こんな会話をしているけれど、僕はここ7年くらい発情期はきていない。

最初は必死に治そうと色んな病院に行った。

でも全然解決しなくて…お医者さんに心因性で根本的な問題を解決しないと…と言われてから諦めた。

だから優くんには言ってないし、たぶん僕の最初きていた頃の周期で今も行動してるんだと思う…。

バカみたいだよね…。こんなことして。

直接伝えればいいのに…。

そう思いながらもなかなか言うことができなかった。


__________

優くんがでていっている間の一週間ぼうっとしていた。


普通だったら遊びに行ったり好きなことをすればいいと思う。

でも、一週間後に優くんが他のΩの匂いをつけてくることを考えるとおかしくなりそうだった。

だから…僕は今回の時間もただ、ぼうっと過ごすしかなかった。




床に座って電気もつけずにただぼうっとしているといきなりドアの開いた音がした。

「なんでこんなところにいるんだ?」

優くんが僕をじぃっと見ていた。

「それに発情期は?」

「あ…」

「どうかしたのか?どこか具合が悪いのか…」

「あ…いや…ごめんなさい」

「大丈夫か?」

優くんが近づいて僕を抱えようとしたときにあのΩの匂いがした。

「触らないで!」

僕はドンッと突き飛ばしてしまった。

「どうしたんだ皐月…。何かあったのか?」

「なんで優くんは帰ってきたの?いつもはこんなことなかったじゃん」

「いや…皐月が辛いんじゃないかって…」

「別に大丈夫だよ…もう行っていいから」

「でも…」

「なに…?」

「皐月…発情期じゃなかったのか?フェロモンの匂いもしないし」

「だったらどうしたの…問題でもあるの…?」


その時の僕は疲れて限界だったのだと思う。

思わず声を張り上げてしまった。


「いや、まだ周期じゃなかったのか?」

「周期ってなに??僕はもうここ何年も発情期なんてきてない!!」

「どういうことだ…?なら病院に…」

「もう行ったよ!!もう何年も色んな場所に行ったよ!!でも、もうどうでもいい!」

「なっ!どうでもよくないだろ!!」

優くんに怒鳴られてハッとした。

「あ…ごめん。でも本当にいいの。原因もわかってるし…。」

「治療はしてるのか?」

「してない。する必要もないし、それに原因もわかってるって言ったでしょ」

「なんでこなくなったんだ?原因がわかっているのならそれを治せば…」

「無理だよ…無理なんだよ」

「なあ、何が原因なんだ…俺にできることなら言ってくれ…」

「それを優くんが言うの?」

「え?」

そのとき僕のなかの何かがプツッと音を立てて切れた。



「もう…!おかしくなりそう!優くんは僕を愛してくれないのに…!僕ばっかり…優くんのことが好きで……こんなのもう無理だ…」

頭を抑えながらうずくまった。

「こんなこと無意味だなんてわかってる…
あの時受け入れた僕が悪かったんだ。
ごめん…大きな声だして…部屋…行くね」

「待ってくれ…!なんの話だ?俺は皐月に…」

「何?これ以上何を待てばいいの…?僕はもう2度と愛してもらえないのをわかってるのに?ああ、最初から愛してなんかなかったよね、ごめんね…断れなかったんだよね、



………………






もう…別れよっか」

僕が泣きながらそう言うと優くんはいきなり机をドンッと叩いた。

「もう一回言ってみろ。今何て言った?」

怒りに満ち溢れ、無表情だった。

僕は怖かったけどここで言わなかったらどこで言うんだと思ってはっきりと答えた。

「別れよう。優くん…今までごめんね…。謝って済むことじゃないってわかってる。好きでもないやつと結婚して最初の頃何回もフェロモン嗅がせちゃって…。でももうこれで終わりにしよう。」

「なんでだ…俺を捨てるのか?」

「捨てたりなんか…しないよ?優くんには…優くんの大切な人がいるじゃないか…その人とは一緒になれないとしてももう僕みたいなやつといられなくなるんだよ…よかったじゃないか」

「なにもよくなんてない!それに俺が他に大切な人がいるだって…?そんなやついないぞ!」

「嘘つき!!この期に及んでそんなこと言うの…?いつも…いつもいつも!僕が発情期の時にはいなくて帰ってきたら他のΩの匂いがするのに…?もう…いいかげんにして…」

「それは…」

「どうせ言えないでしょ…?もうわかってるから大丈夫だよ。もう疲れたから部屋に行くね。すぐに書類に書くから待ってて。手続きも僕がやるし円満離婚ってことにするから世間体も気にしなくていいよ。」

「待ってくれ…!俺は!」

「もうやめて!もう…やめて…本当におかしくなりそうなの…お願い。今日はとりあえず部屋に行かせて」

そうやって部屋に逃げていった。


_________

「なあ、皐月悪かったよ…。俺が悪かった。でも誤解だよ。俺に…皐月の他に、大切なやつなんかいない。信じてくれ」

「大丈夫だよ。優くん。もうわかってるから。」

「いやわかってないよ。本当に大事なんだ…」

「もう今日はやめて…。明日話そう?」

扉の前でじっと待っていたようだが、少し経ってから返事があった。

「わかった。」


優くんともう少し早く話せばよかったのかも…でももう無理だよ…。

僕にはできなかった。

臆病者の僕には…



________

疲れて寝てしまった。

時計を見ると次の日になっていた。

優くんと話さなきゃだな…憂鬱だ。

でも、話さないと…このままになってしまう。

ドアを開けてリビングに向かうと優くんがいた。

僕の足音に気がついたのか飛び起きて

「皐月!ごめん!皐月…」

「大丈夫だよ…。そんなに謝らなくても…」

「いや悪かった…。その…いつからきてないんだ」

「もう7年になる…」 

「そんなにもの間…。気づかなくて悪かった。」

「いいよ、もう。」

「なあ、昨日言ってただろう?俺に他の大切なやつがいるって…。でもそんなやついないんだよ」

「優くん…嘘つかせちゃってごめんね。でももういいんだよ。いつもね、思ってた。僕のせいで優くんはその人と結婚できなかったんだって。当て付けのように僕の発情期から帰ってきたときに匂う他のΩの威嚇フェロモンに疲れちゃったんだよ。その人にも悪いことしたね…。わざわざそんなことさせちゃうなんて…」

「いや本当に誰にも会ってないんだ!」

「でも毎回同じ人だよ…?」

「もしかして…俺…いつも実家に行ってたんだ。俺の兄のΩのやつかもしれない」

「でもいつも僕の番をとらないでって匂いしてるよ…?」

「俺がいつも兄をからかうからだと思う。勘違いさせるようなことしてごめん。」

「でも…もう優くんとはやっていけない。今だから言えるけど、発情期のときに一人にされるのがきつくて仕方なかったんだ。」

「それは…皐月がいやだって…」

「そんなこと言ってないよ」

「言ったよ、確かに。初めての発情期の時にこんなのもう嫌だって。嫌だって何度も言ってた。だから俺は…」

「そんなの…発情期のあいだに言ってることなんて覚えてない!」

「ごめん、ごめんな…皐月。俺にやり直させてくれないか?」

「嫌だ!もうこんな思いしたくないの…ごめんね優くん…」

「少しでいいんだ、やり直すチャンスをくれないか」

その後何度も言い合ったけれど優くんも折れてくれなくてどうしようもなくて一回だけチャンスをあげると言ってしまった。

それから優くんは変わった。

僕にずっと付きっきりでいるし甘やかしてくれた。

最初は警戒していたけれどそれからまた数年経ってからはもう許すことにした。

そう伝えると優くんはこれからも伝えていく。皐月を愛してるって…。もう2度とこんなことにならないようにって言ってくれた。


そうしてずっと僕らは一緒に暮らした。

優くんといて、あの辛かった日々がいつの間にか塗り替えられていた。


優くんとの誤解が解けてから15年が経ったころ僕たちは番になった。

優くんとならこれからも大丈夫だと思えたから…

これからも僕は怯えながらも幸せな日々を過ごしていく。
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