記憶喪失の君と…

R(アール)

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4.記憶喪失になった経緯 (陽 視点)

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湊が事故にあったと大学で誰かが話してるのを聞いた。

僕と湊は誰にも付き合ってるだとか言ってなかったし大学の講義が被ってるときとかゼミが一緒の時しかいなかったし、昼もあんまり一緒にはいなかったから僕らが友達だと知ってる人も少なかったと思う。

だけどその時は、いてもたってもいられなくてその話をしてるやつに話しかけた。

あまりにも僕が必死だったからかそいつはどこの病院だとか部屋がどこかも教えてくれた。しかもその人…和馬くんは湊の幼馴染みなんだって。

いてもたってもいられなくて、その日は大学の講義を受けずにそのまま湊のいる病室まで向かった。

「湊!!交通事故にあったって…!!」

僕は汗だくになりながら湊の病室の扉を開けた。

「あの…どちら様ですか?」 

湊は僕をまるで知らない人かのように困惑した顔で僕を見ていた…。

「え…?湊…?」

「あのお友達の方ですか?少しお話ししてもいいですか…?」
と年配だけれどとても綺麗な人が僕に声をかけてきた。

「あ…はい」

そうして一度、湊の病室から離れた。

「あの…私は湊の母です。湊のお友達の方ですか…?」

「あ、はい。佐々木 陽です。湊くんとは大学で知り合ってそれから友達に…」

まさか付き合ってるだなんて伝えられそうもないし…

「わざわざ病院まで来てくれてありがとうございます。湊は交通事故にあって今検査中なんです。なので…」 

その時、医者が湊のお母さんに声をかけた。

「お話しのところすみません。湊さんのお母様ですか?」

「はい…。そうです。あの!湊は大丈夫なんでしょうか!」

「はい。外傷もそんなになく少し入院して休めば治るかと。
ただ、記憶に少し違和感があるため検査して約4ヶ月間くらいの出来事をもしかしたら覚えてないことがあるかと…日常生活やお母様やお父様のこと、大学の講義のことなどは覚えてるようでしたので問題はないかと…」 

「ああ…。よかった。」とお母さんはその場で崩れ落ちた。

「大丈夫ですか!?」

「ああ、ありがとう。大丈夫よ…。」と、
とても優しく笑っていた。

「では手続きがあるので窓口のほうまでお願いします」

「はい。…………えと、佐々木くん。もしよかったら湊にもう一度会いに行ってくれる?湊も喜ぶと思うの…」

「いいんですか…?ならお言葉に甘えて会いに行かせていただきます」

そうして湊のお母さんとはそこで別れた。

コンコン。

「失礼します…。湊?」

「どうぞ。あの…えっと…君は?」

「湊…やっぱり僕のこと覚えてない?」

「えっと…ごめんね?誰かな?」

湊は口では謝っていたけどその声音も目線もとても冷たかった。

「あの…僕…君の友達で…」

「友達…?ああ、医者が俺の記憶が4ヶ月間くらい曖昧だって言ってたな。俺と君は友達だったの?写真とかある?」

「あ…あんまりなくて…一枚しかないんだけど…」

「見せて?ふーん。確かにね。一枚しか写真もないしそんなに親しそうには見えないけど…?」

「あの…最近仲良くなったばかりだから…」

「そっか。」

「俺疲れたからもう君帰ってくれる?」

「あ、うん。ごめんね、疲れてるのに、じゃあ僕帰るね…」




湊と話してみて、僕が知ってる湊じゃないみたいだった。
冷たくて…口調も全然違った…。

正直、湊が記憶喪失だって聞いたときバチが当たったんだと思った。

湊の優しさに漬け込んで付き合っていたから僕のことを忘れちゃったんだって…。

4カ月間くらいの出来事が曖昧だって言ってたけど湊と出会ったのは1年前だし付き合ったのは6カ月も前のことなのに…。

その日は何が起こったのかわからず、泣きながら家に走って帰った。

「ほんとに湊は僕のこと忘れちゃったのかな…」

「湊、知らないやつだって顔してた…。あんなに冷たい顔されたの初めてだ。」

そうして僕は泣きながら寝てしまった…。



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