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第3章 学園に通おう

119話 宣言

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 アッキーの話を聞いて改めてちょっと呆然としてしまった。

「そんなとんでもないものこのお屋敷にあって大丈夫なの?」

 そもそも最長老様から貰ったものとか、エルフさんの里から出して大丈夫なんだろうか?

 本来、里の中に建てるはずのものだったんだよね?このお屋敷。

「分からん。
 分からんが、ダメなら最長老が取り上げるだろうから、そうならないって事は問題ないんだろう。
 こうなってくると、屋敷を建築する時点からこの事を見越していた可能性もあるな」

 見越していたって、移築はアッキーの気まぐれみたいなもんだったんだよね?

「そんな、未来予知みたいなこと……」

「最長老ならやりかねん」

 そ、そうなんだ。

 話聞いてる誰一人として異論を挟まないし、そもそもエルフのアッキーがこう言うくらいなんだから、本当にやりかねないんだろう。

「最長老様が何考えているとかは……」

「前にイヴァン坊が言ってた気がするが、あれくらいの年になると精神性が我々とは異なりすぎていてなに考えているかはさっぱりだ。
 なにか『これ』が『ここ』にあることがエルフにとって利になるんだろうってことしか分からん。
 その『利』がお前や我が生きている間の話なのかすら分からん」

 お、おおう。

 話の規模が違いすぎる。

「と、とりあえずは、気にしないでおいたほうがいいのかな?」

「そうだな、気にしても仕方ないだろう」

 有るものは有るとだけ思って諦めることにしよう。

「あーっと、それで、ミニっくん、そもそもこれってなにに使ってるの?」

「全館の魔法や魔具の維持、緊急時の防衛機構の発動等に使用されています。
 また、マスターから漏れ出ている魔力を吸収・貯蔵する機能も持っています」

 ん?どういうことだろう?僕の魔力吸われてるの?

 チンプンカンプンな状態の僕と違って、アッキーには通じているらしくて『なるほど』というふうに頷いている。

「アッキー、どういう事?」

「ちと、待て。だいたい想像はついたが一応確認しておく。
 ミニっくん、この魔力結晶から使用している魔力と、吸収している魔力のバランスはどうなっておる?」

「緊急時を除いて周辺のマナからの変換、及びマスターからの吸収が上回るようになっています」

「ふん。やはりな」

 なんかアッキーの想像通りだったらしいけど、結局どういうことだろう?

「つまり、この館はお前がいる限り永久機関だということだ」

 ……マジで?

「え?水も作ってるとか言ってたけど?」

「もちろんそれも含めてです、マスター」

「……永久に枯れない飲水ですか……外に漏れたら王都の水利の常識が変わってしまいますね」

 あっさりとうなずいたミニっくんの言葉を聞いて、ユニさんも苦笑いしている。

 流石に僕にもこれがどれだけのことかは分かる。

「ほんっっっっっっっとうにいいの?僕がこのお屋敷に住んでて?」

「流石に我としても怯むところだが、長老会の許可は出ているからなぁ。
 エルフの里としては問題はない、としかいえん」

「返したりは……」

 ダメかな?正直、このお屋敷に住むの気が重いんだけど。

「お前が本当に返すつもりならそれ含めて最長老の見通しのとおりなんだろうから構わんと思うがな。
 ただ、長老の爺共は乗り気だから悲しむかもな」

「…………とりあえず、無理だと思うまで住んでみる」

 おじいちゃんたちも気合い入れて色々してくれたみたいだし、突き返すのも申し訳ない。

 まあ、そもそもこれからは寮に寝泊まりするほうが長くなるだろうし。

「……って、僕たちこれから寮生活だけどいいのかな?」

 僕がいるから魔力が充電?されるんだよね?

「マスターがご在宅でない状態でも、備蓄魔力によって当館の機能は1,000年は維持できますので問題はありません」

 ……おおう。

 どんだけとんでもないお屋敷なんだ、これ。

「あと、学園がお休みの日……授業がない日は屋敷の方に戻ってくることになると思いますから、結局半分くらいはこっちにいることになると思いますよ」

「え?そうなの?」

 外出できるとかって話は聞いてたけど、てっきり、寮に入ったらほとんど向こうで暮らすのかと思ってた。

「ハルの場合は男爵家の仕事もありますからね。
 ひとまず、ちゃんと男爵家当主やるんですよね?」

 そうだな。

 いつの間にやらなっていた男爵だけど、エミールくんを預かった以上、きちんとやらないわけにはいかない。

 最終的にはエミールくんに譲ることになると思うけど、それまでは僕がちゃんと当主様やらないとな。

「うん、そのつもりだよ」

 ユニさんに頷いた僕を見てミゲルくんたちが少し嬉しそうにしている。

 あれ?そういえばきちんと宣言したことはなかったっけ。

 僕もギリギリまで迷っていた……というか、いまだに迷ってはいるからなぁ。

 僕なんかに貴族……人の生活を預かるような仕事できるとは思えないからなぁ。

 でも、残念ながら状況がそんな甘えは許してくれないみたいだ。

 こうなってしまったからにはやるしか無い。

「これからは僕も男爵家……サクラハラ家の当主として頑張っていくから、みんなにも力を貸して欲しい」

 この際だからきっちり宣言しておこう。

 ……逃げ道塞いどこう。

 もうすでに逃げたくなっているし、本当に情けないな、僕。

「まあまあ、私達も全力で支援しますから気楽に気楽に」

 ユニさんの言葉にイヴァンさんも、ミゲルくんたちも頷いてくれる。

「本当にお願いね?頼りにしているからね?」

 本当に見捨てないでね?
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