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第3章 学園に通おう

115話 再合流

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 ミニっくんに消えて……休んでもらって、執務室を出る。

 なんかミニっくんに帰ってもらうのも大変だった。

 アッキーに聞いたら『消えろ』という意思を伝えるだけでいいと言ってたので、休んでもらうよう頼んだらしばらく『なにか他にご指示はありませんか?』と粘られた。

 最後には、『まだなにか出来ることがあるはずです』とまで言われてしまった。

 確かにまだ色々やってほしいことはあったけど、他に先にやらなきゃいけないことがあったので無理を言って休んでもらった。

「ねぇ、アッキー、ミニっくんって1回帰ったら……えっと、記憶が消えたりとかそういう事あるの?」

 『死んじゃう』って言いかけだけど、さすがにそれは感傷的すぎると思って言い換えた。

 でも、本当にそんな勢いのしぶとさだった。

「いや、そんなことはない。記憶……というか情報は連続しているはずだ。
 人間で言えば眠りにつくようなものでしかない」

 執務室から出て廊下を歩きながら聞いてみたけど、アッキーの返事を聞いて少し安心した。

 しかし、アッキーも苦笑しているってことはやっぱりちょっと変な挙動してるのかな?ミニっくん。

「もともと、人工精霊は製作者の性格を多少受け継ぐが……あそこまで独特なのは珍しいな。
 やはり、2人分の魔力で作られていることがなにか影響しているのかもな」

「やっぱり、どこか壊れちゃってるとか……?」

 仮にそうだとしても、もう愛着が湧いちゃってて作り直すとか出来る気がしない。

 その気持ちが顔に出てしまっていたのか、アッキーが優しい口調で言ってくれる。

「そう心配するな。
 確かに人工精霊としては変わっていたが、機能的には異常は見られなかった。
 なにか問題が出るまではこのままで大丈夫だろう」

 良かったぁ。

 とはいえ、重大な機能を管理している子だから様子はしっかりと見ていくようにしよう。



 ――――――



 廊下を歩いて、残っているみんなの所まで戻ってきた。

「設定終わったよ。
 もう入って大丈夫」

 それを聞いてエミールくんとクラウスさん、カミラさんが恐る恐るという感じでツタの彫られた柱に近づいていく。

「エミくん、はやく」

 こわごわとゆっくり進む3人を後ろで見ていたバナくんがエミールくんの手を引っ張って僕の方に走ってきた。

「あっ、バナ先輩っ!ま、待ってくださいっ!」

 手を引かれたエミールくんはつんのめったような感じになっちゃってるけど、なんとか耐えながらこっちに向かってきてる。

 そのまま勢いよくプライベートエリアの境界を超えてしまうけど、前と違ってツタは出てこない。

 うん、登録はちゃんと出来てるみたいだな。

「おにいちゃん、おかえりなさいっ!」

 僕の前でピタッと止まってお辞儀をするバナくん……と、引っ張っていた手が急に離れてさらにつんのめるエミールくん。

 倒れそうになっていたエミールくんを慌てて抱きとめた。

「こら、バナくん、走っちゃ危ないでしょ」

「ごめんなさい……。
 エミくんがおにいちゃんいなくなってさみしそうだったから、はやくギュってしてあげてほしかったの」

 シュンとしちゃったバナくんだけど、そうか、エミールくんのためだったのか。

 これは褒めない訳にはいかない。

「うん、エミールくんのことを考えてあげたのは偉いね。
 次はもうちょっと落ち着きを持とうね」

「はーい」

 素直に返事をするバナくん。

 うんうん、本当に良い子だ。

「……あ、あの、お兄様?
 もう大丈夫なのでそろそろ離していただけないかと……」

「あ、ごめんね」

 いけない、エミールくんを抱きとめたままバナくんと話ししちゃってた。

 ……なんか最近、誰かと抱き合っているのに慣れてきちゃってる。

 日本にいた頃には考えられなかったことだな。

「い、いえ、こちらこそ申し訳ありませんっ!あのっ……すみません。
 ……ごめんなさい……ごめんなさい……」

 エミールくんはなにも悪くないのに、また謝りだしてしまった。

 こう言うとき下手に謝らなくていいとか言うともっと落ち込んで泣いちゃうからな、ここは黙って頭を撫でてあげるところだ。

 ようやく僕もエミールくんとの付き合い方が分かってきたのだ。

「エミくん、おにいちゃんにギュッてされるのイヤだった?」

 と思っていたのに、エミールくんの頭を撫でる前にバナくんが話に混じってきてしまった。

 しかも、離れたエミールくんに代わるみたいに僕に抱きついてきてる。

「い、いえっ!そんなことないですっ!イヤじゃないですっ!ぜんっぜんっ!イヤなんかじゃないですっ!」

 謝り続けていたのを止めて、もう必死の形相といった感じでまくし立てるエミールくん。

 ちょっと驚いた。

「ひゃうっ!?」

 バナくんもびっくりして耳がビクビクしてる。

「あ……あの……すみません……申し訳ありません……ごめんなさい……」

 その様子を見てまた謝りだしてしまう。

 今度はさっき以上にしょんぼりした感じだ。

「ちょっとびっくりした。
 でも、エミくんもイヤじゃないんなら、おいで」

 僕に抱きついたバナくんがエミールくんを手招きしている。

 どうしたものかなぁ?

 僕も別に嫌ではない、というか、むしろ嬉しいくらいだけどなんていうか色々マズイからなぁ。

「あの、バナくん、そう簡単に抱っことかしちゃまずくてね?」

「そ、そうです、バナ先輩。
 気軽に抱きついたりしちゃいけないんです」

 エミールくんも僕と一緒に物の道理をバナくんに説いてくれるけど……。

「いいから、なかよくしなさい」

「「はい……」」

 小さな独裁者にそんなもの通じるはずがなかった。

 バナくんの頬がぷくーってし始めているし、もうこうなったら仕方ない。

「えっと、そういうことだからイヤじゃなかったらエミールくんもおいで」

「あ、あの……すみません……ごめんなさい……すみません……」

 手招きすると、エミールくんは謝りながらだけど意外と素直に近づいてきてくれた。

「それじゃ、おにいちゃん、こうたいね」

 そう言って、最後にチュっと軽くキスをしてから離れていくバナくん。

「し、失礼します……」
 
 代わりにエミールくんが近寄ってきたので、出来るだけ優しく抱きしめる。

 そのまま、まだ軽く震えているエミールくんの背中をなで続ける。

 思った以上にツタに捕まったのが怖かったのかもしれない。

 今までなんやかんやエミールくんを甘やかせていなかったからな、今こそ全力で甘やかさねば。

「大丈夫?驚いたよね?」

 落ち着いてもらおうと、耳元で優しく囁いた。

「いえ、あの…………はい……すみません……」

「いいのいいの、僕もびっくりしたから。
 エミールくんの心臓まだドキドキしてるもん、本当に驚いたよね」

 触れ合った胸から伝わってくるエミールくんの鼓動は、大きくて早い。

 これはだいぶ怖かったみたいだ。

「い、いえ、あの……これは……その……違くて…………ご、ごめんなさい……」

 それでも強がるエミールくん。

 まあ、男としてはそう簡単に怖かったとか認められないよねー。

 でも、話しているうちに落ち着いたのかエミールくんの体の震えは止まってる。

 それどころか、だいぶ体の力も抜けてきたみたいで、僕の方に寄りかかってくるからエミールくんより少し小さい僕としてはちょっと大変だ。

 でも、ここが頑張りどころだと思ってエミールくんを支えたまま踏ん張り続ける。

「あ、あの……お兄様、もう大丈夫です……」

 しばらく大人しく僕に抱きしめられていたエミールくんがそう言って離れていく。

 まだ心臓バクバク言ってたけど、大丈夫かな?

 一応、真っ白だった顔に血色も戻ってきてるみたいだけど……。

 バナくんも満足そうに頷いているし、本人も恥ずかしそうにしているだけだし、落ち着いたと思っていいかな。

 バナくんが話しに入ってきたときはどうなるかと思ったけど、結果オーライだ。

 むしろ、バナくんに感謝……かな?
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