上 下
134 / 140
第3章 学園に通おう

114話 いたずらっ子

しおりを挟む
 さて、あとは防犯装置のほうか。
  
「ミニっくん。次は、防犯装置に引っかからない人を……なんていうかプライベートエリアに自由に出入りできる人を設定したいんだけど」

「承知いたしました。
 2階左エリアの防衛機構の除外対象の設定ですね」

 おお、あんな曖昧な指示でもちゃんと理解してくれた。

 日本の下手なbotチャットより優秀だな、ミニっくん。

 なんか誇らしい。

 ……いけないいけない、ミニっくんの見た目が見た目だから親感覚が抜けない。

「ああ、あと、この執務室への入室も一緒にお願いできる?」

「可能でございます」

 今の僕の身内でここに入っちゃだめな人はいないから、プライベートエリアに入れる人=執務室に入れる人でいいだろう。

「それじゃ、お願いします。
 えっと、どうすればいいのかな?」

「マスター、新規除外対象はこの屋敷内にいますでしょうか?」

「うん、いるよ」

 除外対象どころか、僕の身内全員……あ、マリーナさんいないや。

 あと、スレイくんとかルキアンさんとかどうするかなぁ?

 まあ、今度実際に来ることになったときに考えればいいか。

「屋敷内より除外対象になっていないものを検索…………検索中…………検索中……」

 ん?なんか長いな?まあ、結構広いからなぁ、このお屋敷。
 
 そう思いながら待っているけど、なかなか終わらない。

 周りのみんなはもちろん、アッキーまで不思議そうな顔になっているってことはなにか異常事態かな?

「アッキー、もしかしてミニっくん壊れちゃった?」

 パソコンで言うフリーズ起こしちゃったとか。

「いや、そんなことはないと思うが……それにしてはやけに長いな。
 この程度の屋敷の人物探査ごとき数秒で終わるはずだが……」

 アッキーはそう言うけど、もうすでに数分経ってる。

 『検索中』と言い続けるだけで、動きも止まっちゃったしそろそろ再起動方法とか聞いたほうがいいのかな?と思ったところで、ミニっくんが動きだした。

「…………検索完了。
 現在、屋敷内には7,824名の除外対象になっていないものが存在します」

 ……は?

 え?どういうこと?今このお屋敷に8千人近くの人がいるって言ってるの?

「……アッキー、やっぱりミニっくん壊れちゃった?」

 やっぱり、僕とミッくんの魔力が混ざったりしたのがなにか問題に?

 な、なんとかミニっくん治せないかな?

 狼狽えている僕だけど、アッキーは腕を組んで少し考え込んでいる。

「ふむ……ハル、精霊を除外させるように言ってくれ」

 え?精霊ってノームさんたちのこと?

「ええっと……ミニっくん、精霊を除外すると何人になる?」

「……精霊除外後の数は4名になります」

 …………このお屋敷に8千人近くのノームさんがいるってこと?

 え?いくら小さいって言ったって、8千人もいたら足の踏み場無くなってない?

 というか、すでに何人か踏んでない?大丈夫?ノームさんたち。

 ミニっくんの言葉を聞いて、僕以外のみんなも周りを……特に足元をキョロキョロしだしている。

「いや、実体化していないときの精霊は物理的影響を受けないから仮に踏んでいたとしても問題はない。
 …………無いが……さすがにそこまでの数が集まっているとは驚いたな。
 これも精霊の巫女がいるからか?」

 踏んじゃっても問題ないと聞いて、ひとまず安心。

 確かに玄関にいたノームさん達は僕に集まってきてたけど、あの感じでさらに集まってきているってことなんだろうか?

 流石に大丈夫なのか?これ。

「アッキー、精霊さん、こんなに集まっても大丈夫なの?」

 集まりすぎて爆発とか合体とかしたりしない?

「いや、前も言った通り精霊自体に害はないから問題ない……。
 無いが……」

 言いよどむアッキーが怖い。

「アッキー、覚悟しておきたいから言って」

「うむ……人数分イタズラされるかもしれん……」

 お、おおう……。

 は、8千人のイタズラっ子か……耐えられるかな?

「それと……」

「え?まだなにかあるの?」

「…………あまりノームが増えすぎて、土のマナが長期にわたって濃くなりすぎると世界樹の芽が生えてくるかもしれん」

 なにそれ怖い。



  とりあえず、エルフの里はここの何百、ヘタすると何千倍もノームさんがいるらしいのでこれくらいなら世界樹が生えてくることはないらしい。

 ……多分。

 アッキーも初めてのことでちょっと自信なさげだったけど、今はその言葉を信じようと思う。

 僕にはどうしようもない話だし。

「そ、それじゃ、設定を終わらせちゃおうか……というか、ノームさん達は設定しなくていいの?」

 ツタで驚いちゃったりしないかな?

「姿を消している限り爺たちが張ったトラップ魔法と言えど精霊を捕らえることはできんから問題ない。
 ……言い方を変えれば、止めようがないということだが……これは諦めるしかないな」

 おおう……そういえば、長老様たちもノームさんたちのイタズラで困ってるって言ってたしエルフさんたちでも対処不能なのか。

 ま、まあ、イタズラ以外の害はないって言うし、イタズラは我慢しよう。

 とりあえずノームさんのことはひとまず忘れよう。

 ポケットの中のノームくんが『忘れないでー』って感じで引っ張ってるけど、また後でね?

 この子、一番はじめに僕に登ってきた子だよな?懐かれたんだろうか?

 人形みたいで可愛いし懐かれるのは嬉しいんだけど、イタズラはお手柔らかにして欲しい。

 ノームくんは任せとけって感じで笑いながら親指を立てているけど、どこまで僕の意図が伝わっているやら。

「さて、今度こそ設定を終わらせちゃおう。
 ミニっくん、さっきの4人を防犯装置の除外対象にしたいんだけどどうすればいいんだろう?」

「承知いたしました。
 この4名で大丈夫でしょうか?」

 そういうミニっくんの頭上、僕の顔の前辺りに薄っすらと透けたモニタ画面のようなものが現れる。

 そこには先程通ってきたプライベートエリアの入口あたりが映っていて、徐々にズームしていき、最後には4分割されたモニタにバナくんにエミールくん、クラウスさんとカミラさんが映し出された。

 ……十分に発達した科学は魔法と変わらないって聞いたことあるけど、逆もまた然りだな。

 空中に浮かんでる透けてるモニタとかもうSFの世界だ。

「えっと、うん、この4人に防犯装置が反応しないようにして」

「承知いたしました。
 防衛機構の除外対象に指定の4名を追加します……追加完了しました」

「これでもうツタとかは出てこないのかな?」

「はい、再設定するまでプライベートエリア及び執務室の防衛機構が反応することはありません」

 良かった。これで一安心だ。

 あとは、前に話に出てたマスターキーの設定とかだけど……これはまたあとでいいか。

 とりあえずは館内を見て回って、部屋割りを済ませたあとでいいだろう。

「あとはなんかやっておいたほうがいいことあるかな?」

 一応みんなにも聞いてみるけど、みんなとしても細かいところは落ち着いてから、って感じみたいだ。

 それなら……と思って席を立ちかけてふと思いついたことがあった。

 ……聞くのが怖い気がするけど、多分1度は聞いておかないとだめだと思う。

 今聞いちゃって大丈夫かな?とも思うけど逆に今いる人達には聞いてほしい気もする。

 まあいいや、聞いちゃえ。

「あのさ、ミニっくん」

「なんでしょうマスター。
 なんなりと何でもお申し付けください」

 なんか笑顔のままズイッと寄ってくるミニっくん。

 あれ?こんなに押しの強い子だったっけな?

 ま、まあ、それはいいか。

「あのさ……こ、このお屋敷の防犯装置って他になにがあるの?」

「まず、全館の魔力結晶を用いた超長距離砲撃装置と……」

「あ、もういいです」

 『まず』でお腹いっぱいです。

 エルフさん達はこのお屋敷でなにする気なんだろう?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!

当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。 しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。 彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。 このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。 しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。 好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。 ※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*) ※他のサイトにも重複投稿しています。

雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される

Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木) 読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!! 黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。 死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。 闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。 そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。 BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)… 連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。 拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。 Noah

継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!

ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。 弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。 後にBLに発展します。

イケメン王子四兄弟に捕まって、女にされました。

天災
BL
 イケメン王子四兄弟に捕まりました。  僕は、女にされました。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

少年野球で知り合ってやけに懐いてきた後輩のあえぎ声が頭から離れない

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
少年野球で知り合い、やたら懐いてきた後輩がいた。 ある日、彼にちょっとしたイタズラをした。何気なく出したちょっかいだった。 だがそのときに発せられたあえぎ声が頭から離れなくなり、俺の行為はどんどんエスカレートしていく。

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

処理中です...