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第3章 学園に通おう

110話 アクシデント

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 その後、他の部屋や一番奥にある賓客用の客間を見せてもらって2階右側は終了。

 賓客用の客間は、普通の客間に談話室がついて全体的に少し大きくなっただけだった。

 まあ、今僕が暮らさせてもらっているユニさんのお屋敷の部屋をちょっと小さくしたような感じだ。

 ああ、ひとつ大きな違いとして僕の部屋だとベランダになっている窓の先が、ルーフバルコニーになっていた。

 ちょっと出させてもらったけど、テーブルセット――彫刻入り――が置いてあって、森も近くて、なかなかいい雰囲気だった。

 食後のお茶とか飲んだら落ち着けそう。

 まだ調度品が殆どないから、それを整えたらユニさんの部屋にする感じかな?

 お客さんって意味では、エミールくんの部屋にすべきかもしれないけど、今はともかく後々は身内みたいな扱いになるしなぁ。

 まあそれをいい出したら、ユニさんなんて完全に身内だし……。

 まあ、部屋割りは少し考えてみよう。



 客間部分を見終わって、あとは2階上がって左側、僕の執務室とか私室とかがあるエリアだ。

「手前から順に行くか。
 まずは使用人や警護のものの控室だな」

 説明しながら先導してくれるアッキーの後にみんなでついていく。

 そして、私室エリアの入口に当たるツルの彫刻の掘られた柱の間をくぐったところで……。

 僕の腕にしがみついていたエミールくんが引き剥がされて、護身用の短剣を抜いたドライくんと、ゼクスくん、フィーアくんに、ノインくんが僕の四方を囲んだ。

 ツヴァイくんは1人、後ろを向いて短剣を抜いて壁や天井を睨みつけている。

 な、何事?

 慌てて後ろ……エミールくんが引き剥がされていった方を振り返ると、エミールくんの他にも僕たちのすぐ後についてきていたクラウスさん、それにカミラさんに柱からツルが伸びて手足を縛り付けて、口をふさいでいた。

 さらに、締まってはいないみたいだけど、首にまでツルが巻き付いている。

「アッキーっ!?」

 本当に何事っ!?

 えっ!?あのツル彫刻だったよねっ!?

 ていうか、みんな大丈夫なのっ!?

 さらに後ろにいたミゲルくんたちも驚いて持っていた短剣を抜いている。

「あー、すまんっ!
 とにかく害はないから暴れたりせずに大人しくしておれ」

 あまりの事態にジタバタと暴れていたエミールくん達3人も、事情を知っているらしいアッキーの言葉に従って大人しくなる。

 が、害はないって言われても半分吊るされた感じになっているし、早くおろしてあげてほしいんだけど……。

 そもそも、なにこれ。

「すまぬな、お前たちのことは弟は知らんから、除外対象として設定されていなかったようだ。
 とりあえず、ハル、どこでもいいからツルの出ている柱を触れ。それで解除される」

 まったく状況は分からないけど、言われたとおりに3人を縛り上げている柱に触る。

 すると、ツルはゆっくりと3人を降ろして、柱の中に戻っていった。

「だ、大丈夫っ!?エミールくん。それに、クラウスさんもカミラさんも」

 慌てて床にへたり込んでしまったエミールくんに駆け寄った。

 ああっ、エミールくんの顔がひきつったまま固まっちゃってる。

 声も出せないでいるエミールくんの頭を抱きしめて、落ち着くように撫で続ける。

「驚きはいたしましたが、ツルが巻き付いたところに痛み等はございませんでした。
 ご心配いただきありがとうございます」

 そう言って頭を下げるクラウスさんとカミラさん。

 ふたりとも手首をさすってはいるけど、赤くなっていたりもしていないし痛みとかはなさそうだ。

 エミールくんの手首や首にもなんのあとも残っていないのを確認して、安堵のため息が漏れる。

「アッキー、これは何事ですかっ!?
 説明してくださいっ!」

 流石にちょっとビックリしましたっ!

「いやぁ、本当にすまぬ、我が迂闊だった。
 その柱……というかツルの彫刻には爺の魔法がかかっていてな。
 執務室で登録したもの以外がこちらに入ろうとすると今のように侵入者を拘束するようになっている」

「……なんでそんな物騒なものを」

「爺としてはお前が害されることのないようにという気遣いのつもりだったのだろう。
 拘束のみで、お前の指示がない限りそれ以上の危害を加えることはないから勘弁してくれ」

 むぅ、長老様の気遣いと言われるとあまり強くは当たれない。

 確かに防犯設備と考えれば必要なものかもしれないしなぁ。

「えっと、ということらしいんだけど……。
 僕の方からも謝る。怖い思いさせてごめんっ!」

 知らなかったこととはいえ、ここは僕のお屋敷だからなぁ。

 ここで起こったことは僕の責任だ。

「い、いえっ!驚いただけですから、大丈夫ですっ!
 むしろ、慌てふためていしまって申し訳ありませんっ!みっともないところ見せてごめんなさい……。
 お許しを……」

「大丈夫、エミールくんは悪くないから。大丈夫だよ」

 泣きそうになってしまっているエミールくんを抱きしめて背中を撫でる。

 いやほんと、悪いのは僕と長老様とアッキーだ。

「実害はございませんでしたので、ご当主様もどうかお心を痛めずに。
 お心遣い、感謝いたします」

 たしかに、怪我したとかじゃないしここらへんにしておこう。

 僕としては謝り足りないけど、これ以上続けたらエミールくんが泣いちゃう。

「えっと、アッキー、これの登録は執務室でできるんだっけ?」

「うむ、全ての防衛機構は執務室でのみ管理できるようになっている」

 ……さっきも思ったけど、防衛機構って響きが怖い。

 まさかこんなガチ目の防犯装置があるとは思わなかったし、他になにがあるんだろう?

「順番は飛んじゃうけど、とりあえず執務室に行こうか?」

「うむ、そうだな」

「ちょっとみんなはここで待っててね。
 執務室の様子見てくるから」

 話を聞く限りバナくんもミッくんとあったことないからダメだろうし、通れない人たちだけ残していくわけにもいかないので、この際だからみんなに残ってもらおう。

 さて、とにかく執務室で色々確認しないと。
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