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第3章 学園に通おう

91話 言霊

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「と、とりあえずバナくんは大丈夫なの?」

 見た限りは気持ちよさそうに寝ているだけだけど……。

「ああ、そのラビィ種、バナといったか?
 そいつは魔法で眠らせただけだから問題ない」

 その言葉を聞いて一安心。

 そういえばアッキーとは初対面だったっけ。

「うん、ラビィ種のバナくん。
 えーっと……」

 バナくんについて説明しようと思うけど、どこから説明していいのか難しいな。

 とりあえず、奴隷商さんのところでの出会いからかな?

「いや、説明されなくても大丈夫だ」

 おおっ、さすがはアッキー。

 犯罪者印と奴隷印を見てあらかた把握してくれたのかな?

「お前の新しい恋人だろ」
 
 ……全然把握してなかった。

 あ、いや、どうなんだろう……手を出してしまった今となっては否定できない。

 違うともそうだと言い切れずに頭を抱えてたら、アッキーに笑われた。

「まあ、細かいことは良い。
 とりあえず、その元気なモノをしまえ。
 我がお預け食らっている気分になる」

 あっ、これは、失礼。

 慌てて脱ぎ捨てたパンツとズボンを履き直して、ついでに、精液にまみれたまま安らかな顔で寝てるバナくんにとりあえずシーツを掛けておいた。

「しかし、また、面倒なものを拾ったな」

 その様子を見ながらアッキーにしみじみと言われたけど……。

「面倒なものって?
 なにか知ってるの?アッキー」

 面倒なもの、そう言われて思いつくのはさっきのエッチだ。

 僕が嫌がってる……と言ったら、嘘になるか。

 少なくともする気のなかったことなのに、パナくんに『おねだり』されたら逆らうことが出来なかった。

 明らかに異常な状態だったし、魔法的ななにかなんだろうけど……。

「魔性、というものを知っているか?」

「えっと、魔性の女とか魔性の男とかそういうやつの魔性?」

「うむ、そうだ。
 まあ、よく異性をたらし込む魅力を持つ者を表す言葉として使われるが、そういう属性とは別に、万人に1人ほど本当に能力としての『魔性』、つまり人をたらし込む能力を持つものが生まれることがある」

 えっと?

 ちょっとこんがらがってきたぞ。

「『魔性』って言う能力が本当にあるって言うなら、その人と一般的な魔性の〇さんはどう違うの?」

 どっちにせよ人をたらし込んでるのは変わんないよね?

「そうだな。
 自分の魅力や手管によって人をたらし込むものもいれば、『魔性』によって人をたらし込むものもいる。
 その差は極めて分かりにくいものだ」

 そうだよね?

 人を好きだなーとか、良いなーって思う時、その理由をいちいち細かく考えたりとかしないもんなぁ。

 『雰囲気が好き』なんて話もよく聞くし、その『雰囲気』がもし『魔性』だとか言われても納得いくようないかないような……。

 本当に『魔性』なんてものがあるのか?って感じさえする。

「そして、そこが『魔性』の厄介なところでな。
 結局のところ万人に1人の『魔性』持ちも単なる不思議な魅力を持った人間などと言われて見逃され、『魔性』の存在自体を認知できているのは、魔力に異常なまでに敏感な我々エルフくらいだろう」

 まあ、アッキーの話を全面的に信じるとしても、人間にはわからないんじゃ『魅力的な人』と『魔性を持った人』っておんなじようにしか思えないだろうしなぁ。

 話の流れからして、バナくんがその『魔性』持ちだとしても、『魔性』を持っているからっていって、バナくんの可愛さが変わる訳じゃないし……。

 『魔性』の効果で可愛さが底上げされてるとかそういう事?

「そうして見逃されてきた結果、下等種共は万人に1人の『魔性』持ちのうち、さらに万人に1人の確率で特に『魔性』の強いものが生まれるということを知らずにいる」

 おっと、なんか話が不穏になってきたぞ。

「と、特に『魔性』が強いとどうなるの?」

「波長の合うものを言葉で自在に操る能力、『言霊』を使えるようになる」

 お、おおう。

 凄い心当たりあります。

「つまり嫌がっていることを無理矢理やらせたり出来るってことだね?」

「いや」

 はぇ?

 違うの?

「嫌よ嫌よも好きのうちじゃないが、本心では嫌がってないことしかさせられん」

 えっと、あの……はい……本心では全然嫌じゃなかったです。

「……結構しょぼくない?それ?」

「そうか?嫌がってないことなら、延々とさせられるぞ。
 お前も心当たりあるだろう?」

 そう言うと、ちょっといやらしい笑いを浮かべて、腰を動かすふりをする。

 アッキーはたまにおっさんくさい。

 ……まあ、たしかに、延々と腰動かさせられそうになったわ。

 その時は、イッたばかりでキツいから嫌ではあったけど、本心から嫌ではなかったから操られちゃってたわけか。

 外に出そうとしても中に出させられたし、男同士だったからまだ良かったけど考えてみると怖いかも。

「大体『言霊』持ちは、悪い男とか悪い女とか言われることになるな」

 ……やっぱり、えーっと、万に万だから1億?1億人に1人の能力にしては響きがしょぼい。

「えっと、もっとこう、『言霊』で国を乗っ取ったとか、歴史を変えたとか、一大宗教を作ったとか……」

「無理だな。
 さっき言ったとおり、『波長が合ったもの』にしか効果ないから、そうだいそれたことはできん」

 ちょっと拍子抜けしたと同時に、ちょっとホッとした。

 バナくんのこと、あんまり難しく考えなくて済みそうだ。

 というか、『言霊』が通じるってことは僕とは波長が合ってしまったのか。

「波長ってどういう相手と合うんだろ?
 僕とはあったわけだよね?」

「そうだな、波長が合わないと『言霊』の効果が出ないのは間違いないから、お前とこの兎は合ったことになる」

 ん?ちょっと不機嫌そうだけどどうしたんだろう?

「つまり相思相愛ということだ」

 あー、波長が合うってそういう事。

「……?一瞬納得しかけたけど、僕はともかくバナくんも僕の事好きってこと?」

 確かに懐いてはいるけど、奴隷商さんのお店で出会ったときからこんな感じだったし、なんていうかそういう性格の子だと思ってた。

 言い方は悪いけど、処世術的な懐き方だと思ってたんだけど。

「まあ、そこら辺はこやつ自身に聞いてみるがいい。
 起こすぞ」

 そう言いながらアッキーはバナくんの肩をゆすりだす。

 ただ寝ているだけらしいし、それで起きるんだろうけど……。

「お、起こしちゃって大丈夫なの?
 またさっきみたいに僕操られちゃうんじゃ……」

「心配するな。
 こやつ程度の魔力じゃ、お互いに気分が盛り上がっている時くらいにしか効果は出ん」

「……えっと、気分が盛り上がってるときって言うと……」

「エロい気分になってる時だな」

 ですよねー。
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