98 / 140
第3章 学園に通おう
83話 子供
しおりを挟む
「ごめん、僕の考えが足りなかった」
イヴァンさんの言葉で頭が冷えたので、ユニさんとイヴァンさんに頭を下げて座りなおす。
「いえ、私も酷いことやってるなーとは自分で思いますから」
濃い苦笑いを浮かべながらそういうユニさん。
そうだよな、ユニさんだってやりたくてやってるわけじゃないよな。
ほんと、ごめん。
「しかし、それでなぜ当家でご子息を預かることになるのでしょう?
一応、話は解決しているように聞こえますが……」
自分の考えの至らなさにションボリしてしまった僕の代わりに、話を引き継いでくれるメファートくん。
ありがとう。
そして、情けないところ見せてごめん。
「まず、サクラハラ家に預けるひとつ目の理由ですが、ご子息の待遇改善の為です」
待遇改善?
遠いとは言え親族に預けられてるって言ってたけど……。
「……あー……厄介者扱いされてるとか?」
苦笑しながらうなずくユニさん。
ユニさんの怒りを買っている家の子って状況だからなぁ。
「今後のことを考えて私への忠誠心の高い家に預けたのですが……。
預けた家自体遠縁とは言え反逆者扱いされている家の親族であることと、私への忠誠心が変なふうに作用しちゃってみたいで、ご子息は今ほぼ軟禁状態だそうです」
あらら。
それはまた可哀想なことに。
ただでさえとばっちりに近いのに、いくらなんでもそれは……。
「ええ、私もそう思います」
顔に出ていたのかユニさんも頷いてる。
「確かに反逆を企てた者の一族と考えれば軟禁も妥当ではあります。
ただ、取り潰し自体私の本意でなかったことですし、流石に心苦しくって……」
スカルドーニさんちについてはちょっと話が悪い方に転がりすぎてるもんなぁ。
「そこで我らの救世主、愛するハルの出番です。
ご子息の待遇改善のために、サクラハラ家で預かってください。
お願いします」
テーブルに手をついて頭を下げるユニさん。
その子のことは可哀想だし、ユニさんも困ってるみたいだし、引き受けるよ。
そう言おうとしたところをモレスくんに手で制された。
どしたの?
「モノケロス卿にお伺いします。
スカルドーニ家のご子息をお預かりするのは、当家にとっても負担が大きいですが、その補填はどうお考えでしょうか?」
そ、そうか、このままじゃ僕はユニさんに厄介事を押し付けられるだけだ。
僕個人としてはそれで全然問題ないけど、サクラハラ家としてはそうはいかない。
厄介事を引き受けるからにはなにか対価を貰わないと、迷惑をかける家臣たちにお詫びも出来ない。
さすがモレスくん、ありがとう。
「まずは十分な額の養育費をお約束いたします」
なるほど、養育費か。
当然色々お金がかかることになるからそれはありがたい。
……ユニさんの言う『十分な額』がちょっと怖いけど。
額次第では、もう対価はこれだけでもいい気がする。
「そして、ご子息を預かることはサクラハラ家にとっても利点のあることだと思います」
「利点?」
「まずひとつ目の利点として、スカルドーニ家の跡取りと忠誠心あふれる家令であったクラウスを擁することで、元スカルドーニ家の家臣や使用人を集める名分が立ちます」
あー、ご子息とクラウスさんいるからうちで働かない?って誘うのか。
なるほど、人手不足のうちとしてはありがたい。
「しかし、それではサクラハラ家がスカルドーニ家に乗っ取られてしまうのではないですか?」
……確かにメファートくんの言うことも一理ある。
人数の少ないサクラハラ家に、スカルドーニ家の人ばっかり集めたら実質的にスカルドーニ家になっちゃうような……。
「ある意味それが狙いであり、2つ目の利点でもあります」
はぇ?
乗っ取られるのが狙いで利点ってどういう事?
僕と4人衆全員が不思議な顔でユニさんを見てる。
「いや、これはイヴァンの発案なんですけどね」
なるほど、イヴァンさんの案なのか。
愛する家臣たちの顔を見回す。
みんなおんなじ意見のようでうなずき返してくれる。
「「「「「分かりました」」」」」
「いや、話くらい聞いてからにしてくださいよ」
苦笑しているユニさん。
えー、だってイヴァンさんの案だよ?
問題があるはずがない。
「いや、まあ、私もいい案だと思いますけど、一応話は聞いてください」
そこまで言うってことは相当大事な話なんだろう。
「それじゃ……。
乗っ取られるのが狙いで利点ってどういうことですか?」
たしかに不思議な話ではある。
「まず乗っ取りに関してですが、実のところそれほど心配は有りません。
雇うのは当主を諌めた者たち……私に対する忠誠心の厚い者たちですから、ハルの家を乗っ取って私に反旗を翻すようなことはないでしょう」
なるほど、たしかにそれはそうか。
元子爵さんと同調した人たちを雇うわけにいはかないし、雇おうとも思わないからなぁ。
「もし、そういう事態になるとしたら、預かったご子息とハルの関係が修復不可能なほどに悪くなった場合ですが……。
まあ、これはハルでしたら問題ないでしょう」
えっと……期待に応えられるように頑張ります。
「一応お伝えしておきますと、なかなか可愛い子ですよ、ご子息……いえ、エミールくん」
それは必要な情報なのかな?
……僕の場合必要か。
極力近寄らないように……いや、預かっている身としてはそれはだめか。
惚れっぽいからなぁ、僕。
間違いを起こさないようにしよう。
……頑張る。
「乗っ取りの心配が薄いことはわかりましたが、それだと乗っ取られることが利点という話と食い違いが出ます。
どういうことなのでしょうか?」
それかけた話をメファートくんが戻してくれる。
「そこがイヴァンの案の肝でして。
スカルドーニ家に乗っ取られることはありませんが、確実に家の中のスカルドーニ色は強くなります。
その事によって、後々エミールくんが家を再興する助けとなります」
スカルドーニ家の家臣さんやら使用人さんやらが集まってるんだからそりゃそうか。
なるほど、スカルドーニ家を再興することまで盛り込んで僕にエミールくんを預けようっていうのか。
「そして、これが2つ目にして最大の利点です。
サクラハラ家イコール、スカルドーニ家に近い状態を作ることで、ハルが男爵をやめたくなった場合エミールくんを養子にすることでハルは引退することが出来ます。
完全に平民と同じとはいえませんが、引退すれば少なくとも貴族のしがらみからは開放されますよ」
お、おおう?
イヴァンさんの言葉で頭が冷えたので、ユニさんとイヴァンさんに頭を下げて座りなおす。
「いえ、私も酷いことやってるなーとは自分で思いますから」
濃い苦笑いを浮かべながらそういうユニさん。
そうだよな、ユニさんだってやりたくてやってるわけじゃないよな。
ほんと、ごめん。
「しかし、それでなぜ当家でご子息を預かることになるのでしょう?
一応、話は解決しているように聞こえますが……」
自分の考えの至らなさにションボリしてしまった僕の代わりに、話を引き継いでくれるメファートくん。
ありがとう。
そして、情けないところ見せてごめん。
「まず、サクラハラ家に預けるひとつ目の理由ですが、ご子息の待遇改善の為です」
待遇改善?
遠いとは言え親族に預けられてるって言ってたけど……。
「……あー……厄介者扱いされてるとか?」
苦笑しながらうなずくユニさん。
ユニさんの怒りを買っている家の子って状況だからなぁ。
「今後のことを考えて私への忠誠心の高い家に預けたのですが……。
預けた家自体遠縁とは言え反逆者扱いされている家の親族であることと、私への忠誠心が変なふうに作用しちゃってみたいで、ご子息は今ほぼ軟禁状態だそうです」
あらら。
それはまた可哀想なことに。
ただでさえとばっちりに近いのに、いくらなんでもそれは……。
「ええ、私もそう思います」
顔に出ていたのかユニさんも頷いてる。
「確かに反逆を企てた者の一族と考えれば軟禁も妥当ではあります。
ただ、取り潰し自体私の本意でなかったことですし、流石に心苦しくって……」
スカルドーニさんちについてはちょっと話が悪い方に転がりすぎてるもんなぁ。
「そこで我らの救世主、愛するハルの出番です。
ご子息の待遇改善のために、サクラハラ家で預かってください。
お願いします」
テーブルに手をついて頭を下げるユニさん。
その子のことは可哀想だし、ユニさんも困ってるみたいだし、引き受けるよ。
そう言おうとしたところをモレスくんに手で制された。
どしたの?
「モノケロス卿にお伺いします。
スカルドーニ家のご子息をお預かりするのは、当家にとっても負担が大きいですが、その補填はどうお考えでしょうか?」
そ、そうか、このままじゃ僕はユニさんに厄介事を押し付けられるだけだ。
僕個人としてはそれで全然問題ないけど、サクラハラ家としてはそうはいかない。
厄介事を引き受けるからにはなにか対価を貰わないと、迷惑をかける家臣たちにお詫びも出来ない。
さすがモレスくん、ありがとう。
「まずは十分な額の養育費をお約束いたします」
なるほど、養育費か。
当然色々お金がかかることになるからそれはありがたい。
……ユニさんの言う『十分な額』がちょっと怖いけど。
額次第では、もう対価はこれだけでもいい気がする。
「そして、ご子息を預かることはサクラハラ家にとっても利点のあることだと思います」
「利点?」
「まずひとつ目の利点として、スカルドーニ家の跡取りと忠誠心あふれる家令であったクラウスを擁することで、元スカルドーニ家の家臣や使用人を集める名分が立ちます」
あー、ご子息とクラウスさんいるからうちで働かない?って誘うのか。
なるほど、人手不足のうちとしてはありがたい。
「しかし、それではサクラハラ家がスカルドーニ家に乗っ取られてしまうのではないですか?」
……確かにメファートくんの言うことも一理ある。
人数の少ないサクラハラ家に、スカルドーニ家の人ばっかり集めたら実質的にスカルドーニ家になっちゃうような……。
「ある意味それが狙いであり、2つ目の利点でもあります」
はぇ?
乗っ取られるのが狙いで利点ってどういう事?
僕と4人衆全員が不思議な顔でユニさんを見てる。
「いや、これはイヴァンの発案なんですけどね」
なるほど、イヴァンさんの案なのか。
愛する家臣たちの顔を見回す。
みんなおんなじ意見のようでうなずき返してくれる。
「「「「「分かりました」」」」」
「いや、話くらい聞いてからにしてくださいよ」
苦笑しているユニさん。
えー、だってイヴァンさんの案だよ?
問題があるはずがない。
「いや、まあ、私もいい案だと思いますけど、一応話は聞いてください」
そこまで言うってことは相当大事な話なんだろう。
「それじゃ……。
乗っ取られるのが狙いで利点ってどういうことですか?」
たしかに不思議な話ではある。
「まず乗っ取りに関してですが、実のところそれほど心配は有りません。
雇うのは当主を諌めた者たち……私に対する忠誠心の厚い者たちですから、ハルの家を乗っ取って私に反旗を翻すようなことはないでしょう」
なるほど、たしかにそれはそうか。
元子爵さんと同調した人たちを雇うわけにいはかないし、雇おうとも思わないからなぁ。
「もし、そういう事態になるとしたら、預かったご子息とハルの関係が修復不可能なほどに悪くなった場合ですが……。
まあ、これはハルでしたら問題ないでしょう」
えっと……期待に応えられるように頑張ります。
「一応お伝えしておきますと、なかなか可愛い子ですよ、ご子息……いえ、エミールくん」
それは必要な情報なのかな?
……僕の場合必要か。
極力近寄らないように……いや、預かっている身としてはそれはだめか。
惚れっぽいからなぁ、僕。
間違いを起こさないようにしよう。
……頑張る。
「乗っ取りの心配が薄いことはわかりましたが、それだと乗っ取られることが利点という話と食い違いが出ます。
どういうことなのでしょうか?」
それかけた話をメファートくんが戻してくれる。
「そこがイヴァンの案の肝でして。
スカルドーニ家に乗っ取られることはありませんが、確実に家の中のスカルドーニ色は強くなります。
その事によって、後々エミールくんが家を再興する助けとなります」
スカルドーニ家の家臣さんやら使用人さんやらが集まってるんだからそりゃそうか。
なるほど、スカルドーニ家を再興することまで盛り込んで僕にエミールくんを預けようっていうのか。
「そして、これが2つ目にして最大の利点です。
サクラハラ家イコール、スカルドーニ家に近い状態を作ることで、ハルが男爵をやめたくなった場合エミールくんを養子にすることでハルは引退することが出来ます。
完全に平民と同じとはいえませんが、引退すれば少なくとも貴族のしがらみからは開放されますよ」
お、おおう?
1
お気に入りに追加
1,078
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる