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第3章 学園に通おう

63話 使用人

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 談話室の中にいるみんながなんとも言えない顔をしている。

 例外は、苦笑いしているアッキーと、訳がわかってない顔をしてるミッくんのエルフ2人とイヴァンさんだけだ。

「ところで、我、この件の話一切聞いてないんだが?」

 アッキーの言葉を聞いたミッくんが視線をそらす。

「……だって、兄上、めったに里にいないし……」

「いや、それにしたって我もハルの関係者だ。
 少しは相談があってもよかろう?」

「…………長老様方が『あいつには話さんでいいだろう』って……」

「……あの爺ども……」

 ミッくんの言葉を聞いて宙を睨んで悪態をつくアッキー。

 アッキー大丈夫?ハブられてない?

 里から出歩いてばかりいるらしいし、引きこもり気質らしいエルフさん達からはアッキー変人扱いなのかもしれない……。

「と、とりあえず、エルフの里からの提案はひとつの案として聞いておきましょう。
 他に案のある方はいませんか?」

 エルフ2人にまで流れ出した何とも言えない空気を払拭するために、ユニさんがみんなに声をかける。

 次に手を上げたのはミゲルくんだった。

「まず最初に、主さまの男爵位については無いものとして扱ってかまわないというのは本当でしょうか?」

「そうですね、すぐにとはいきませんが可能だと考えています。
 ハルのお陰で弟との関係も修復できそうですから、そうすればモノケロス家嫡男としての責務からも降りることが出来ますし、そうなれば煩わしいことに気を使わずに大っぴらにハルと付き合うことが出来ますから」

 ミゲルくんの質問に真摯に答えるユニさん。

 元々僕の男爵叙爵はユニさんの愛人として正式に付き合うにはある程度の地位が必要だったという意味合いが大きい。

 でも、今後ユニさんとスレイくんの仲が良くなって、お家の跡取りをスレイくんに変えることが出来るようになればここらへんの縛りは大分ゆるくなるはずだ。

「では、それを前提としてボクたちからの案です。
 主さまを含めて、ボクたち全員をこの家の使用人として雇ってもらえないでしょうか?
 自分で言うのもなんですが、我々含めて全員それなりに優秀な人材だという自負はあります」

 そんなことを言い出すミゲルくん。

 まあ、ミゲルくんたち自身はちょっと前までそれこそユニさんちの使用人だったし、僕んちの家臣に転属してからまだ日が浅くてユニさんちに補充の人が来ている様子もないし、戻っても問題ないだろう。

 問題は優秀だけど奴隷のヴィンターさんとツヴァイくんたちと、そもそもなにも出来ない僕だよなぁ。

 ミゲルくんの話を聞いたユニさんは、少し思案を巡らせた後口を開く。

「まず、ミゲルたちについては問題ありません。
 ハルについても、今後色々勉強してもらうことが前提となりますが、まあ問題ないでしょう」

 そこまで言ったところで、ユニさんはやっぱりヴィンターさんやツヴァイくん達を見る。

「問題はヴィンターとツヴァイたちです。
 申し訳ありませんが、いくら彼らと言っても当家では奴隷を使用人にすることは出来ません。
 下働きや下僕という形になってしまいますが、それでもよろしいのですか?」

 奴隷を買うって話になったときにも言ってたからなぁ。

 ユニさんちの使用人は貴族の子弟や平民でも富裕層出身ばかりなのでそこに奴隷を混ぜるって訳にはいかないだろう。

 しかし、ユニさんの言葉を聞いたヴィンターさんは少し考えた後にちらっと僕を見てから頷いた。

 ユニさんの言葉を通訳したツヴァイくんたちも、『お館様の側にいられるのなら』と気にした様子はない。

 返事を聞いたユニさんは、ひとつ頷く。

「そういうことでしたら、私としては皆さんを受け入れることになんの問題もありません。
 しかし、彼らはもちろん私を含めてハルハーレム全体に大きな変化が出ますが、そこまでするメリットを教えてください」

 ユニさんのハーレム発言に引っかかっているのは僕だけのようだ。

 みんな全く気にした様子がないし、真面目な話の最中なのでここは僕も聞き流すとしよう。

 ユニさんの言う通り、ミゲルくんの案だと色んな人に影響が出る。

 ユニさんは跡取りから降りることになるけど、まあ、これは本人の希望でもあるからまあいいとしとこう。

 その他にもミゲルくんたち自身も家臣から使用人にまた戻ることになるけど、それはいいんだろうか?

 家臣になれたって喜んでたし、張り切っていたけど……。

 何より問題なのはヴィンターさんやツヴァイくんたちだ。

 下働きや下僕っていうのがどういう仕事なのか分からないけど、響きからしてもあんまりいい仕事とは思えないなぁ。

 全く影響がないのはエルフの2人くらいだろう。

 これだけ大きな影響を与えてもミゲルくんたちがやりたいことってなんなんだろう?

 みんなの視線を集めているミゲルくんが口を開く。

「この案のメリット……狙いは主さまを市井の人にすることにあります。
 『この世界に慣れる』という主さまの目的を考えると、貴族でいるより庶民として一般市民に触れ合って生きていくことが1番だと思います。
 可能であれば、通いの使用人にしてもらえれば言うことないと思います」

 なるほど。

 たしかに貴族として上流階級の人たちとばっかり付き合っているより、一般人の中にいたほうがこの世界のことは分かりそうな気はするなぁ。

 僕がこの屋敷から殆ど出ていないせいっていうのはもちろんあるけど、今の僕の周りにいるのは僕の恋人か、僕にかしずく人たちばかりだからなぁ。

 本格的に男爵の仕事を始めたあとはどうなるかはまだよく分からないけど、今の状況に社交辞令の付き合いが増えるだけな気もする。

 そう考えると、使用人になるのも有りだ。

 ……とは思うけど、やっぱり、影響出る人が多いのは問題だよなぁ。

「なるほど、わかりました。
 そうなると、通いが認められたらみんなで共同生活といったところですか?」

「はい、それを想定しています」

 なるほど、そういう事もできるのか。

 それは毎日楽しそうだな。

 みんなと一緒にお屋敷に通って、一緒に仕事して、帰りにどっか寄って帰ったりとか。

 うん、楽しいな。

 ちょっと日本での日常を思い出す。

「……私だけお屋敷暮らしですよね、それ」

 あ。
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