10 / 140
第1章 異世界で暮らそう
10話 お風呂
しおりを挟む
とりあえず一通り僕の身の回りの話が終わった後、明日以降の僕の予定については2刻後の夕食の時に話をする、ということになってお茶会はひとまずお開きとなった。
明日以降、どうすればいいか……何をされるのかわからない僕としては生殺しもいいところだけど、ユニさん含めてみんな夕食までに済ませなければいけない用事もあるんだろう。
後半、真面目な打ち合わせになってしまったせいで日本のものを触り足りないユニさんがまだもう少しとぐずっていたけど、イヴァンさんにやんわりと叱られて諦めていた。
なにか貸そうかと――全て献上するっていう僕の意見はユニさんに強硬に却下された――少し思ったけど、説明役でつきあわされる面倒くさい未来が目に見えていたので思いつかなかったことにした。
仲良くなるチャンスだとは思ったけど、あのテンションのユニさんに付き合うのは今日はもう無理だ。
今日のところは夕食まで寝室で大人しくしていよう。
「それではハル、また後ほど……」
なんか目に見えて沈み込んでいるユニさんの姿を見ると、もう少し付き合ってあげようかなという気もしてくる。
だけど、今日のところは僕も色々限界なので申し訳ないけどまだ後日にしてもらおう。
「はい、また夕食の時に……あ」
ユニさん一行を見送ろうとしたところで、思いつく。
「あの、そういえば、お風呂って入るわけにはいかないのでしょうか?」
夕食の前にせめて汗だけでも流せたらなと思ってイヴァンさんに問いかける。
と言うか、そもそもこの世界にお風呂ってあるんだろうか?
「ご入浴ですか?
大変申し訳無いのですが、まだ替えのお召し物のご用意ができておらず……。
夕食後までには当座のものをご用意いたしますので、大変申し訳ありませんがそれまでお待ちいただけないかと……」
あー、そういえばそうだった。
でも、流石にいい加減体を洗いたい。
「あー、服に関してはまたこの制服を着るってことでは駄目でしょうか?
いい加減、気持ち悪くなってきてしまっていて……。
服はともかく体を洗わせてもらえるだけでだいぶ違うのですが……」
「そういうことでしたら、当方では何も問題ありません。
なにかと不自由な思いをさせてしまい申し訳ありません」
「いえいえ、僕は皆さんにお世話になっている身ですから。
色々と良くしてもらって感謝しています」
曲がりなりにも僕がこの世界で苦痛を感じることなく生きていられるのはユニさんたちのおかげだ。
それに関しては本当に感謝しか無い。
……対価が怖いけど。
「それでは、案内をするものをすぐにご用意しますので少々お待ちください」
案内なんてしてもらわなくても、と一瞬思ったけれどこの世界のお風呂がどんなものなのかそもそもわからない。
僕の思い描くお風呂とはかけ離れたものである可能性が高い以上、教えてくれる人は必要だな。
「お手数をおかけしてすみません」
「それ私がやりましょうか?」
イヴァンさんに頭を下げてお礼を言っていると、それまでイヴァンさんの後ろで黙っていたユニさんが話に入ってくる。
「え?『それ』ってお風呂係のこと?」
「はい。
かまいませんよね?イヴァン」
「…………」
問いかけるユニさんに無言のイヴァンさん。
無表情のままだけど、いつもポンポンと打てば響くように返事をするイヴァンさんが黙っているということはかなり悩んでいるということだろう。
「あの……」
「坊ちゃまにできますか?」
別の方で……と言おうとして口を開いたタイミングで、イヴァンさんがユニさんに問いかけた。
「もちろんですっ!」
自信満々といった感じで胸を叩くユニさん。
なんか不安だ……。
「…………サクラハラ様はそれでよろしいでしょうか?」
イヴァンさんも不安なのか、少しの沈黙の後、僕に話を振ってきた。
話を振られても、ユニさんが期待に満ちた表情でこちらを見ている以上、たとえ嘘は見抜かれてるとしても僕はこう言うしか無い。
「ぜ、ぜひお願い致します……」
不安だ……。
――――――
「ふいー……」
久しぶりのお風呂に思わずおっさんみたいな声が出てしまった。
結局あの後、僕とイヴァンさんの不安をよそにユニさんはお風呂の案内という任務を完璧にやり遂げた。
考えてみればユニさん自身もいつも入っているのだから説明できて当然だったのだろう。
不安に思うのが失礼な話だった。
驚いたのは、寝室にあったドアのもうひとつが脱衣室でその先が浴室だった――ちなみに、談話室にあるドアはキッチンと従者の控室らしい――ことと……。
「まさか普通にお湯が出てくるとはなぁ」
浴室の中には日本のものとはちょっと違うけど陶器製のバスタブが置いてあって、そのそばの壁から生えているライオン?の顔の右目についている赤い宝石を撫でるとライオン?の口からお湯が出てきた。
左目についている青い宝石を撫でると水が出るらしい。
数年前に開発された魔法を使った最新技術で、このお屋敷にも去年導入されたってユニさんが興奮気味に自慢……説明してくれた。
日本から持ってきたものの説明の時といい、こういう技術系が好きなのかもしれない。
男の子だな。
液状じゃないけれど石鹸もあって、しかも、体洗う用と髪を洗う用で分けられていた。
一通りの説明とバスタオルの場所を教えてくれてユニさんは出ていった。
洗いますって言われたけど、自分で洗えると言ったら素直に引き下がってくれた。
裸を見られるのもそうだけど、さすがに体を洗ってもらうのは恥ずかしすぎるので助かった。
久しぶりのお風呂だし、のんびりさせてもらうとしよう。
明日以降、どうすればいいか……何をされるのかわからない僕としては生殺しもいいところだけど、ユニさん含めてみんな夕食までに済ませなければいけない用事もあるんだろう。
後半、真面目な打ち合わせになってしまったせいで日本のものを触り足りないユニさんがまだもう少しとぐずっていたけど、イヴァンさんにやんわりと叱られて諦めていた。
なにか貸そうかと――全て献上するっていう僕の意見はユニさんに強硬に却下された――少し思ったけど、説明役でつきあわされる面倒くさい未来が目に見えていたので思いつかなかったことにした。
仲良くなるチャンスだとは思ったけど、あのテンションのユニさんに付き合うのは今日はもう無理だ。
今日のところは夕食まで寝室で大人しくしていよう。
「それではハル、また後ほど……」
なんか目に見えて沈み込んでいるユニさんの姿を見ると、もう少し付き合ってあげようかなという気もしてくる。
だけど、今日のところは僕も色々限界なので申し訳ないけどまだ後日にしてもらおう。
「はい、また夕食の時に……あ」
ユニさん一行を見送ろうとしたところで、思いつく。
「あの、そういえば、お風呂って入るわけにはいかないのでしょうか?」
夕食の前にせめて汗だけでも流せたらなと思ってイヴァンさんに問いかける。
と言うか、そもそもこの世界にお風呂ってあるんだろうか?
「ご入浴ですか?
大変申し訳無いのですが、まだ替えのお召し物のご用意ができておらず……。
夕食後までには当座のものをご用意いたしますので、大変申し訳ありませんがそれまでお待ちいただけないかと……」
あー、そういえばそうだった。
でも、流石にいい加減体を洗いたい。
「あー、服に関してはまたこの制服を着るってことでは駄目でしょうか?
いい加減、気持ち悪くなってきてしまっていて……。
服はともかく体を洗わせてもらえるだけでだいぶ違うのですが……」
「そういうことでしたら、当方では何も問題ありません。
なにかと不自由な思いをさせてしまい申し訳ありません」
「いえいえ、僕は皆さんにお世話になっている身ですから。
色々と良くしてもらって感謝しています」
曲がりなりにも僕がこの世界で苦痛を感じることなく生きていられるのはユニさんたちのおかげだ。
それに関しては本当に感謝しか無い。
……対価が怖いけど。
「それでは、案内をするものをすぐにご用意しますので少々お待ちください」
案内なんてしてもらわなくても、と一瞬思ったけれどこの世界のお風呂がどんなものなのかそもそもわからない。
僕の思い描くお風呂とはかけ離れたものである可能性が高い以上、教えてくれる人は必要だな。
「お手数をおかけしてすみません」
「それ私がやりましょうか?」
イヴァンさんに頭を下げてお礼を言っていると、それまでイヴァンさんの後ろで黙っていたユニさんが話に入ってくる。
「え?『それ』ってお風呂係のこと?」
「はい。
かまいませんよね?イヴァン」
「…………」
問いかけるユニさんに無言のイヴァンさん。
無表情のままだけど、いつもポンポンと打てば響くように返事をするイヴァンさんが黙っているということはかなり悩んでいるということだろう。
「あの……」
「坊ちゃまにできますか?」
別の方で……と言おうとして口を開いたタイミングで、イヴァンさんがユニさんに問いかけた。
「もちろんですっ!」
自信満々といった感じで胸を叩くユニさん。
なんか不安だ……。
「…………サクラハラ様はそれでよろしいでしょうか?」
イヴァンさんも不安なのか、少しの沈黙の後、僕に話を振ってきた。
話を振られても、ユニさんが期待に満ちた表情でこちらを見ている以上、たとえ嘘は見抜かれてるとしても僕はこう言うしか無い。
「ぜ、ぜひお願い致します……」
不安だ……。
――――――
「ふいー……」
久しぶりのお風呂に思わずおっさんみたいな声が出てしまった。
結局あの後、僕とイヴァンさんの不安をよそにユニさんはお風呂の案内という任務を完璧にやり遂げた。
考えてみればユニさん自身もいつも入っているのだから説明できて当然だったのだろう。
不安に思うのが失礼な話だった。
驚いたのは、寝室にあったドアのもうひとつが脱衣室でその先が浴室だった――ちなみに、談話室にあるドアはキッチンと従者の控室らしい――ことと……。
「まさか普通にお湯が出てくるとはなぁ」
浴室の中には日本のものとはちょっと違うけど陶器製のバスタブが置いてあって、そのそばの壁から生えているライオン?の顔の右目についている赤い宝石を撫でるとライオン?の口からお湯が出てきた。
左目についている青い宝石を撫でると水が出るらしい。
数年前に開発された魔法を使った最新技術で、このお屋敷にも去年導入されたってユニさんが興奮気味に自慢……説明してくれた。
日本から持ってきたものの説明の時といい、こういう技術系が好きなのかもしれない。
男の子だな。
液状じゃないけれど石鹸もあって、しかも、体洗う用と髪を洗う用で分けられていた。
一通りの説明とバスタオルの場所を教えてくれてユニさんは出ていった。
洗いますって言われたけど、自分で洗えると言ったら素直に引き下がってくれた。
裸を見られるのもそうだけど、さすがに体を洗ってもらうのは恥ずかしすぎるので助かった。
久しぶりのお風呂だし、のんびりさせてもらうとしよう。
22
お気に入りに追加
1,078
あなたにおすすめの小説
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
雪狐 氷の王子は番の黒豹騎士に溺愛される
Noah
BL
【祝・書籍化!!!】令和3年5月11日(木)
読者の皆様のおかげです。ありがとうございます!!
黒猫を庇って派手に死んだら、白いふわもこに転生していた。
死を望むほど過酷な奴隷からスタートの異世界生活。
闇オークションで競り落とされてから獣人の国の王族の養子に。
そこから都合良く幸せになれるはずも無く、様々な問題がショタ(のちに美青年)に降り注ぐ。
BLよりもファンタジー色の方が濃くなってしまいましたが、最後に何とかBLできました(?)…
連載は令和2年12月13日(日)に完結致しました。
拙い部分の目立つ作品ですが、楽しんで頂けたなら幸いです。
Noah
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したから継母退治するぜ!
ミクリ21 (新)
BL
継母から虐待されて死ぬ兄弟の兄に転生したダンテ(8)。
弟のセディ(6)と生存のために、正体が悪い魔女の継母退治をする。
後にBLに発展します。
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。
みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。
生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。
何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。
謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません
柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。
父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。
あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない?
前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。
そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。
「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」
今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。
「おはようミーシャ、今日も元気だね」
あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない?
義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け
9/2以降不定期更新
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる