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第173話

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【アオイ視点】

 エリスとサミスが銃を撃って前に出るドリルをけん制する。

「は!チクチクうぜえんだよ!」

 ドリルがエリスに迫った瞬間ファルナが庇うように大楯を構えて立ちふさがる。
 ドリルが右腕を繰り出す瞬間、ドリルの腕が回転し、ファルナの大楯に穴をあけて止まった。

「中々良い盾じゃねえか。だが邪魔だ!」

 ゴムのような柔軟な腕を振り、腕の先端は岩を砕くドリルで大楯が削り取られていく。
 私は死角から槍で攻撃する。

「ソニックタイム!ショートスティング!ロングスティング!」

 ソニックタイムでスピードを強化し、アーツ攻撃で連撃を加え、更に通常攻撃を繰り返す。

「いてえな!」

 そう言って右腕で私にドリル攻撃を繰り出した。
 槍で受けると、私の突進を返され、それでも衝撃を殺しきれず私は5メートルほど後ろに吹き飛んだ。
 地面に私の足で踏ん張る跡がついた。

 ドリルの視線が私に向いた瞬間ファルナが下がり、入れ替わるようにシルビアが前に出た。

「ソウルスキル、ファイナルスラッシュ!」

 大きな三日月型の斬撃がドリルを襲い、ドリルの胸からお腹にかけて斜めに切り傷が入った。

「ちび!いてえじゃねえか!殺すぞ!」

 シルビアの剣は粉々に砕け、後ろに走りながらリペアカードを手の甲に押し付ける。

 シルビアに狙いを変えたドリルに私と大楯を失ったファルナが攻撃して足止めをする。
 その瞬間にドリルが口角を釣り上げた。

「なあんてな!」

 ドリルは両腕のドリルで私とファルナの防具だけを狙うように攻撃を繰り出した。
 私とファルナの防具が削り取られていく。

 私とファルナが後ろに下がろうとすると足を払って転ばせて、ひたすら防具だけを狙われる。
 サミスとエリスが銃を撃とうとすると、私かファルナを盾にするように立ち回る。

「ははははは!攻撃出来ねーよなあ!味方に当たっちまう!アオイ!ファルナ!良い眺めになって来たじゃねえか!おい!」

 武器の耐久力を回復させたシルビアがドリルに斬りかかるが、ドリルは両手のドリルで大剣と打ち合う。

「はははははは!せっかく回復させた剣の耐久力も俺のドリルですぐボロボロじゃねえか!ちびが無理してんじゃねえ!全部無駄なんだよ!」
「無駄じゃないのです!」

 そう言って私達は後ろに下がった。
 その瞬間エリスのバズーカがドリルに直撃した。

「まだ!後2発行くよ!」

 エリスは連続でバズーカを発射し、更にアサルト銃で攻撃を続ける。
 サミスもハンドガンを撃ち尽くすように攻撃する。

 砂煙が止むと、私達はファルナの周りに集まっていた。

「ソウルスキル・エンジェルサークル!」

 ファルナの背中に光の翼が発生し私達を癒していく。
 そして、リペアカードで武具の耐久力を回復させていく。

「は、ははははははは!そうか!都合がいい!多少傷つけても回復するか!スタミナを削り、生まれたままの姿に削り取ってやる!」
「わたくし達は簡単にはやられませんわよ!」

 私は槍を投てきした。
 ドリルの腕に弾かれる。

「いい!希望をすべて砕き!絶望に染め上げてやる!はははははははははは!」




【ハヤト視点】

 俺はヒメをおんぶしてファングの元に向かった。

 ファングはショップ地帯で、魔石の入った袋をから魔石を出してぼりぼりと食らっていた。

「ハヤトか、お前は殺すが、おい!ヒメから離れろよ」

 俺はヒメを下ろして刀を構え、斬りかかるがファングは笑いながら魔石を食べつつ走って防壁の方に下がっていく。

「ぎゃはははははは!追いつけねえよなあ!どんどん距離を離されてるじゃねえか!」

 ファングの方が速い!
 全力で走っても追いつけない!

「待て!」
「は!待たねえよ!ドリルと闘って来るんだな!勝ち残ったら相手をしてやるよ!」

 そう言って防壁を飛び越えて走って遠ざかって行った。
 あいつはハイエナだ。
 ドリルと俺達が戦い、生き残った方を殺す気か?

 ファングの気配が遠くに離れ、感知できなくなる。
 俺はヒメの元に戻った。

 あいつはヒメだけ攫って行く可能性も捨てきれない。

 俺が居なくなった瞬間また魔石を奪いに来る可能性もある。

 だが、俺はヒメを無言でおんぶしてみんなの元に戻った。



 アオイの元に戻ると、皆ボロボロになっていた。
 特にアオイとファルナは防具がボロボロになり、スタミナも奪われ、限界が近い。

 俺はヒメを下ろして刀で斬りかかった。
 ドリルの回転する腕と打ち合い、刀の耐久力がどんどん削られていく。
 刀を太ももにヒットさせるが、ネコがひっかいたような薄い傷がつくだけで決定打にならない。

 そこにファングが現れた。

「ぎゃははははは!ずいぶんとレベルの低い戦いだな!おい!弱すぎて笑えてくるぜ!」

 ドリルは無言で後ろに下がった。
 両手を合わせて高速で回転させる。

 両手の先端を大型のドリルに変え、そのドリルの後ろは船のプロペラのように見えた。

 ドリルは急にファングの方を向いて走り、両手ドリルを回転させ加速してファングに迫る。

「うわ!へへ!危ねえな!」

 そう言って素早く下がりドリルの攻撃を避ける。

「ぎゃはははははは!当たらねえよ!」
「ち!ハイエナが!」

「勝った方と相手をしてやるよ!」

 そう言ってファングは感知の範囲外まで走って離れて行った。
 ドリルが戻って来る。

「ドリル、ファングと闘わないのか?」
「後にする。それに、お前は許せん!」

「ん?」
「俺を倒し、アオイの処女を奪った!許せん!」

 ドリルは合わせていた両腕を離し、手をドリルに変えてドリルを高速でひねり、ぴたっと止めた。

 まずは俺からって事か。
 ドリルが俺に向かって走って来る。

 俺は構えた。

「超強化弾丸!未来を掴む者!」
 
『武具の性能が2倍にアップしました』

『超強化弾丸の残り時間は1200秒です』

 俺の目が青く光り、数秒先の未来を予測する。

 ソウルスキルを3つすべて使う!

 そうしなければ奴は倒せない!

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