90 / 115
きつね族
しおりを挟む
ベリーは俺達を置いてきつね族と一緒に歩き出す。
「待て待て!俺も行くぞ!」
こうして俺達4人はきつね族の元へと向かった。
城下街の防壁を出てすぐにきつね族の集落があった。
城下街と違い、何度もつぎはぎした小屋のような家が並ぶ。
木で出来ていればまだ良い方で、布の撒いたテントのような家も見受けられる。
俺はストレージにあるすべての食料を出した。
「使ってくれ」
その瞬間全員が頭を下げた。
「こ、こんなに!」
「ありがとうございます!」
「何で城下町の中に住まないんだ?場所には余裕があるように見えるぞ」
きつね族の顔が曇った。
ベリーが代わりに答える。
「きつね族はキュウビの影響で城下町のみんなに怖がられているのよ。キュウビはきつね族のような見た目をしているから。買い出しの為に街に入ることは出来ても、住むことは出来ないわ」
「タケル様には食料を恵んでもらっていますが、周りの多くの者がそれにも反対しているのです。立場が悪くなってもタケル様は私達に食料を恵み続けています」
ヤマトは食料も足りないんだったな。
余裕が無くなると立場の弱い者に恵む余力も無くなる。
タケルは弱い者を助けるたびに立場が弱くなるだろう。
いや、だからこその救援要請か。
すべての原因はキュウビか。
ベリーが怖がられるのはベリーとキュウビの顔が似ているから。
きつね族が城下町に入れないのもキュウビの姿がきつね族に似ているから。
キュウビに住処を追われた魔物が城下町に迫ると食料の生産量が減る。
だが、キュウビを倒して平和になればすぐに食料が手に入るわけではない。
荒れた土地を耕し、種を撒いて野菜を収穫する。
船を造って魚を取る。
家畜はもっと時間がかかる。
家畜は増えるまで待つ必要がある。
短期的には魔物を狩ってその肉を食うのが手っ取り早いが、倒すべき名前持ちはキュウビだけじゃない。
ヤマトだけでも【キュウビ】と【オロチ】、2体の名前持ちが居る。
更にデイブックに侵攻するバグズがどう出るか分からない。
この地に長居することも出来ない。
アーサー王国やディアブロ王国のように魔物を狩りまくる時間は取れないだろう。
「移民」
「え?」
「なあ、きつね族をアーサー王国とディアブロ王国に移民させることは出来ないか?」
「確認したいのですが、きつね族の数は分かりますか?」
ルナが質問する。
「正確には分かりませんが、10万前後だと思います」
ルナが渋い顔をした。
エムルはすぐに答えを言う。
「働く能力の無い者をそこまで受け入れるのは無理だよ。デイブックの移民を受け入れたばかりなのが痛いね」
「両国で食料生産量のギリギリまで受け入れ済みって事か」
「ギリギリまでは行かないよ。でも、今そこまでの余裕は両国に無いはずさ」
「戦える者の割合は分かりますか?多ければ多いほどいいのですわ!」
ルナが訴えるように聞く。
戦えるなら魔物の肉を取ってこれる。
「1割も居ないと思います」
ルナは唇をかんだ。
数が少なすぎるのだ。
恐らく魔物からみんなを守る為に多くの者が命を落としている。
「俺の全財産を国に寄付する。これでも無理か?」
「それでも足りないよ」
「と、その前に大事な事を忘れていた。みんなは移民に賛成か?」
今まで黙っていたベリーが泣きながら答える。
「皆を助けて!みんなを移民させて!」
ベリーが泣き崩れる。
ベリーときつね族には何かの縁がある。
ベリーの泣き方は普通じゃない。
出来る事をしよう。
他のきつね族も答える。
「連れて行ってください!」
「このご恩は後で必ずお返しします!」
「子供だけでも助けてください!」
みんなが叫び、誰が何を言っているか分からなくなる。
「ルナ、エムル、出来るだけの移民の受け入れに集中して欲しい」
「分かりましたわ」
「すぐにタケルと話を詰めるよ」
ルナとエムルは城に向かって行った。
まだ足りない。
キュウビの討伐だ。
ルナとエムルは討伐に参加できない。
キュウビは俺が倒す。
移民の受け入れはルナとエムルがやってくれる。
キュウビを倒せば、ヤマトの兵は余裕が出来、魔物を狩る余裕が出てくるだろう。
逆を言えば、キュウビの討伐を失敗すれば、きつね族が死んでいく。
だが問題もあった。
キュウビは炎耐性を持っている。
それは俺の切り札を潰されるに等しい。
「キャンプファイアのスキルは、使えない」
「待て待て!俺も行くぞ!」
こうして俺達4人はきつね族の元へと向かった。
城下街の防壁を出てすぐにきつね族の集落があった。
城下街と違い、何度もつぎはぎした小屋のような家が並ぶ。
木で出来ていればまだ良い方で、布の撒いたテントのような家も見受けられる。
俺はストレージにあるすべての食料を出した。
「使ってくれ」
その瞬間全員が頭を下げた。
「こ、こんなに!」
「ありがとうございます!」
「何で城下町の中に住まないんだ?場所には余裕があるように見えるぞ」
きつね族の顔が曇った。
ベリーが代わりに答える。
「きつね族はキュウビの影響で城下町のみんなに怖がられているのよ。キュウビはきつね族のような見た目をしているから。買い出しの為に街に入ることは出来ても、住むことは出来ないわ」
「タケル様には食料を恵んでもらっていますが、周りの多くの者がそれにも反対しているのです。立場が悪くなってもタケル様は私達に食料を恵み続けています」
ヤマトは食料も足りないんだったな。
余裕が無くなると立場の弱い者に恵む余力も無くなる。
タケルは弱い者を助けるたびに立場が弱くなるだろう。
いや、だからこその救援要請か。
すべての原因はキュウビか。
ベリーが怖がられるのはベリーとキュウビの顔が似ているから。
きつね族が城下町に入れないのもキュウビの姿がきつね族に似ているから。
キュウビに住処を追われた魔物が城下町に迫ると食料の生産量が減る。
だが、キュウビを倒して平和になればすぐに食料が手に入るわけではない。
荒れた土地を耕し、種を撒いて野菜を収穫する。
船を造って魚を取る。
家畜はもっと時間がかかる。
家畜は増えるまで待つ必要がある。
短期的には魔物を狩ってその肉を食うのが手っ取り早いが、倒すべき名前持ちはキュウビだけじゃない。
ヤマトだけでも【キュウビ】と【オロチ】、2体の名前持ちが居る。
更にデイブックに侵攻するバグズがどう出るか分からない。
この地に長居することも出来ない。
アーサー王国やディアブロ王国のように魔物を狩りまくる時間は取れないだろう。
「移民」
「え?」
「なあ、きつね族をアーサー王国とディアブロ王国に移民させることは出来ないか?」
「確認したいのですが、きつね族の数は分かりますか?」
ルナが質問する。
「正確には分かりませんが、10万前後だと思います」
ルナが渋い顔をした。
エムルはすぐに答えを言う。
「働く能力の無い者をそこまで受け入れるのは無理だよ。デイブックの移民を受け入れたばかりなのが痛いね」
「両国で食料生産量のギリギリまで受け入れ済みって事か」
「ギリギリまでは行かないよ。でも、今そこまでの余裕は両国に無いはずさ」
「戦える者の割合は分かりますか?多ければ多いほどいいのですわ!」
ルナが訴えるように聞く。
戦えるなら魔物の肉を取ってこれる。
「1割も居ないと思います」
ルナは唇をかんだ。
数が少なすぎるのだ。
恐らく魔物からみんなを守る為に多くの者が命を落としている。
「俺の全財産を国に寄付する。これでも無理か?」
「それでも足りないよ」
「と、その前に大事な事を忘れていた。みんなは移民に賛成か?」
今まで黙っていたベリーが泣きながら答える。
「皆を助けて!みんなを移民させて!」
ベリーが泣き崩れる。
ベリーときつね族には何かの縁がある。
ベリーの泣き方は普通じゃない。
出来る事をしよう。
他のきつね族も答える。
「連れて行ってください!」
「このご恩は後で必ずお返しします!」
「子供だけでも助けてください!」
みんなが叫び、誰が何を言っているか分からなくなる。
「ルナ、エムル、出来るだけの移民の受け入れに集中して欲しい」
「分かりましたわ」
「すぐにタケルと話を詰めるよ」
ルナとエムルは城に向かって行った。
まだ足りない。
キュウビの討伐だ。
ルナとエムルは討伐に参加できない。
キュウビは俺が倒す。
移民の受け入れはルナとエムルがやってくれる。
キュウビを倒せば、ヤマトの兵は余裕が出来、魔物を狩る余裕が出てくるだろう。
逆を言えば、キュウビの討伐を失敗すれば、きつね族が死んでいく。
だが問題もあった。
キュウビは炎耐性を持っている。
それは俺の切り札を潰されるに等しい。
「キャンプファイアのスキルは、使えない」
1
お気に入りに追加
946
あなたにおすすめの小説
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
転生したら死んだことにされました〜女神の使徒なんて聞いてないよ!〜
家具屋ふふみに
ファンタジー
大学生として普通の生活を送っていた望水 静香はある日、信号無視したトラックに轢かれてそうになっていた女性を助けたことで死んでしまった。が、なんか助けた人は神だったらしく、異世界転生することに。
そして、転生したら...「女には荷が重い」という父親の一言で死んだことにされました。なので、自由に生きさせてください...なのに職業が女神の使徒?!そんなの聞いてないよ?!
しっかりしているように見えてたまにミスをする女神から面倒なことを度々押し付けられ、それを与えられた力でなんとか解決していくけど、次から次に問題が起きたり、なにか不穏な動きがあったり...?
ローブ男たちの目的とは?そして、その黒幕とは一体...?
不定期なので、楽しみにお待ち頂ければ嬉しいです。
拙い文章なので、誤字脱字がありましたらすいません。報告して頂ければその都度訂正させていただきます。
小説家になろう様でも公開しております。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
異世界で魔法が使えるなんて幻想だった!〜街を追われたので馬車を改造して車中泊します!〜え、魔力持ってるじゃんて?違います、電力です!
あるちゃいる
ファンタジー
山菜を採りに山へ入ると運悪く猪に遭遇し、慌てて逃げると崖から落ちて意識を失った。
気が付いたら山だった場所は平坦な森で、落ちたはずの崖も無かった。
不思議に思ったが、理由はすぐに判明した。
どうやら農作業中の外国人に助けられたようだ。
その外国人は背中に背負子と鍬を背負っていたからきっと近所の農家の人なのだろう。意外と流暢な日本語を話す。が、言葉の意味はあまり理解してないらしく、『県道は何処か?』と聞いても首を傾げていた。
『道は何処にありますか?』と言ったら、漸く理解したのか案内してくれるというので着いていく。
が、行けども行けどもどんどん森は深くなり、不審に思い始めた頃に少し開けた場所に出た。
そこは農具でも置いてる場所なのかボロ小屋が数軒建っていて、外国人さんが大声で叫ぶと、人が十数人ゾロゾロと小屋から出てきて、俺の周りを囲む。
そして何故か縄で手足を縛られて大八車に転がされ……。
⚠️超絶不定期更新⚠️
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった〜
霞杏檎
ファンタジー
「使えん者はいらん……よって、正式にお前には戦力外通告を申し立てる。即刻、このギルドから立ち去って貰おう!! 」
回復術士なのにギルド内で雑用係に成り下がっていたフールは自身が専属で働いていたギルドから、何も活躍がないと言う理由で戦力外通告を受けて、追放されてしまう。
フールは回復術士でありながら自己主張の低さ、そして『単体回復魔法しか使えない』と言う能力上の理由からギルドメンバーからは舐められ、S級ギルドパーティのリーダーであるダレンからも馬鹿にされる存在だった。
しかし、奴らは知らない、フールが【魔力無限】の能力を持っていることを……
途方に暮れている道中で見つけたダンジョン。そこで傷ついた”ケモ耳銀髪美少女”セシリアを助けたことによって彼女はフールの能力を知ることになる。
フールに助けてもらったセシリアはフールの事を気に入り、パーティの前衛として共に冒険することを決めるのであった。
フールとセシリアは共にダンジョン攻略をしながら自由に生きていくことを始めた一方で、フールのダンジョン攻略の噂を聞いたギルドをはじめ、ダレンはフールを引き戻そうとするが、フールの意思が変わることはなかった……
これは雑用係に成り下がった【最強】回復術士フールと"ケモ耳美少女"達が『伝説』のパーティだと語られるまでを描いた冒険の物語である!
(160話で完結予定)
元タイトル
「雑用係の回復術士、【魔力無限】なのに専属ギルドから戦力外通告を受けて追放される〜でも、ケモ耳少女とエルフでダンジョン攻略始めたら『伝説』になった。噂を聞いたギルドが戻ってこいと言ってるがお断りします〜」
妹が聖女の再来と呼ばれているようです
田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。
「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」
どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。
それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。
戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。
更新は不定期です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる