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ルナのスイーツコロシアム
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ルナの頭を撫でていると、兵士の男が宿屋にやってきた。
「スイーツ対決の審査員について相談があるようです。なにやら困っているようです。何やらスイーツ界の今後を左右すると大臣が言っていました」
ルナがシュタっと立ち上がる
「すぐに向かいます」
「ベリー!一緒に行かないか?」
「わ、私は行かないわ」
「ベリー殿にもご参加をお願いしたいのです」
「分かりました。みんなで出かけましょう」
ルナはベリーの手を引いて先頭を進むように歩き出す。
ベリー、完全に逃げ切る事は不可能だと知るがいい。
ベリーの顔に影が宿っていたが、逃げるのは無理だろう。
【円卓会議室】
「ご足労いただきありがとうございます。」
大臣が出迎えた。
「ルナのレベルを上げたいっていう連絡は届いているか?」
「届いています。しかし本当に困っているのです。その連絡をいただく前からルナ様参加の前提でスイーツ大会の場所を押さえ、宣伝もして、国費を使ってしまっているのです。入場料を取れなければ大幅な赤字になってしまいます。今後の内政に影響を与える懸念まであります。ルナ様には国の内政とお菓子業界の発展のため是非ともご参加いただきたいのです!」
「おほん、そこまで内政に影響を及ぼすようでしたら、参加しないわけにはいきませんね。それが王女たるわたくしの務めでもありますわ。それで今回のテーマは決まってるのですか?」
ルナはスイーツ大会に興味深々だった。
「まだ決まっておりません」
「俺は帰る」
「お待ちください!ウイン殿とベリー殿にも審査員や主催としてご協力をお願いしたいのです。ぜひ一緒にご参加を!」
「分かった」
「……わかったわ」
ベリーは嫌そうな顔をしていた。人前に出るの嫌がるもんな。
「今回のテーマについて、ルナ様から何かありませんか?」
「やりつくした感がありますね。ベリーの好きなお菓子は何ですか?」
「イチゴのショートケーキね」
ルナはふむふむと頷いた。
「今回はイチゴのショートケーキ対決にしましょう。今期はイチゴの収量が少ないので、イチゴを使う分量に制限を設け、さらに国民のみんなに親しんでもらえると言うテーマも盛り込みましょう」
「なるほど、分かりました。大会日は15日後の午前10時、コロシアムで行います。前日までには王都にお戻りください。今日はご足労ありがとうございました」
俺たちは余った時間に魔物狩りをしてスイーツ大会の当日を迎えた。
当日コロシアムに着くとベリーが固まる。
「人多くね?」
コロシアム内部には1万人の観客が動員され、垂れ幕には目を引くようなキャッチフレーズがずらっと並んでいた。
色々おかしい。
この国の人口は10万人だよな?
今はそれより少し少ないかもしれない。
国民の1割が集まって来るのか!
ベリーとルナはコロシアムの中心に座る。
客寄せか。
ルナは人気があるし、ベリーは歩いているだけで多くの者が振り返る美人だ。
よく考えると、ベリー後援会の事もあるからベリーを表に出すのは良くないんじゃないか?
俺とホープ大臣は観覧席の個室部屋にいた。
「大臣、ベリーを表に出すとベリー後援会に場所がバレて狂信的なベリーファンが押し寄せてくるかもしれない」
「問題ありません。この国からデイブックに行く者は居ないのです。そして新聞記事もチェックして情報が漏れないよう気を配っております。バレるとしたらスパイですが、現状デイブックの周りに魔物が多くなりここに来ることは今困難でしょう」
確かにデイブックは最近不況だ。
魔物被害や老人の多さもあるが問題の根本は違う。
1番の問題は寛容さに欠ける国民性だろう。
金持ちの成功者を叩き、新しい事をする者を叩き、制度の改正をしようとすると叩き、少しでも問題があるとただ叩いて人や産業を潰す。
デイブック南部の被害で前から高かった税金がさらに高くなった。
デイブックはマスコミの動きも特殊だ。
この国の国民もそれは分かっているだろう。
ディアブロ王国とアーサー王国はデイブック近辺の住民を移住させ、デイブックに行くのも来るのも大変になっている、か。
コロシアムの中心にはルナ・アーサー王。ベリーが審査員として座り、魔道オーブンなどの料理機器も運び込まれていた。
「静粛にお願いします!これより、スイーツコロシアムを開催します!」
美人のお姉さんが司会をするが、何故かバニーガールの格好をしている。
大歓声が鳴り響いた。
「司会は私クロノが務めさせていただきます。そして今回の審査員は」
進行は順調に進み、今回のテーマが発表された。
テーマは
・イチゴのショートケーキ
・イチゴの分量を制限
・国民に親しんでもらえる
と、発表されるたびにテーマを書いた大きな垂れ幕が降ろされた。
演出にこだわりを感じた。
「戦いを始める前に、三大スイーツ店からルナ様に謝罪があります」
3人の男性が前に出る。
月のお姫様ケーキ・ムーンプリンセスプリン・スイーツ姫のタルト
をこれ見よがしに見せびらかすように前に出た。
「ルナ様を模したスイーツを無断で販売し。誠に申し訳ありませんでした」
そういって頭を下げ、ルナに謝罪の為お菓子を渡した。
そう、ばれたのだ。
結局ルナに隠ぺいがバレてこの場でオープンにする方針に決まった。
ルナの斥候レベルが上がり、気配を消したまま三大スイーツ店に入る事ですぐにばれた。
ルナは王都に帰ると絶対にスイーツ店に入る。
時間の問題でバレる定めだったのだ。
ルナは渡された月のお姫様ケーキ・ムーンプリンセスプリン・スイーツ姫のタルトを渋い顔で見た。
「まったく!、いけませんよ!いくら商品が売れるからって、勝手にルナ様の許可なくこういう物を販売するのはいけません!」
司会がかなり大げさに話す。これも演出だな。
観客から笑い声がどっと起こった。
「ルナ様は許してくださるでしょうか?コメントをお願いします」
「ゆ、許します」
あの状況じゃ許すって言うしかないよな。
「次は、王家にきっちり相談してくださいよ!」
3人の男はまた深く謝罪をした。
「それではスイーツコロシアム、スタートです!」
三大スイーツ店のパティシエがショートケーキを作り始めた。
さっき謝罪していたスイーツが売り子によって売られていた。
宣伝うますぎるだろ!司会も商品を売ることをさりげなく観客に伝えた。
ホープ大臣はその様子を見てにやりと笑ってる。
策士か。
計算通りって顔してるな。
クロノは審査員全員にコメントを求めたが、ルナの話だけは長かった。
「今回AチームからCチームに分かれて三大スイーツ店の戦いが始まりますが、私が今回注目しているのは元パン屋からスイーツ業界に進出した、Ⅽチームのパン・デ・ケーキ店です。最も規模が小さく、経営体力はありませんが、最近一気に評判を上げています。こういう新星には目を光らせていきたい所です」
まだ続くのか、ルナのコメントが長い。
クロノは客席にもコメントを求めると、今度はこっちに向かってきた。
来るなよ!来るなよ!こっちじゃないよな!
こっちに来た!
クロノは室内に入ると俺の所に最短距離で歩いてきた。
「今後の大会について一言お願いします」
「今回この大会を開くことが出来たのはルナと大臣、後は裏方の功績が大きいからそういう人の話が聞きたいな」
「なるほど、ウインさんはどんなお菓子が好きですか?」
こいつ、あっちに行けアピールを無視したぞ!分かっててわざと無視してるな!
「お菓子なら何でも食べる。大臣の話は聞かないのか?」
「分かりました。大臣、お話をお聞かせください」
「私はあくまで裏方、どうぞウイン殿とお話を続けてください」
「大臣!ありがとうございます!ウインさん、今後の方針として国内の魔物狩りを優先するとのことですが、その心をお聞かせください?」
「ん?どっから仕入れたんだ?ほとんど話してないはずだぞ?」
魔の森の魔物が居なくなってきたから国内の魔物を狩る予定だった。
「私の本業はマスコミです。情報は集めますよ。それで、その心は?」
「ルナのレベル上げだ」
「なるほど、目先の利益よりも国の長期的な発展を見ていると、今日のパンではなくもっと先の未来の展望を見渡していると、そういう解釈でよろしいですか?」
「そこまで言ってないけどな!」
俺ととクロノの話は魔道マイクで拡散され、観客は笑っていた。
「おい!お菓子作りが終わるぞ!クッキングの実況してないよな?」
「クッキングなんて飾りです!要は食べた時の評価が大事なんですよ!」
「ここでクッキングすることを全否定する発言だぞ!良くない!そういう発言はだめだわ!後早く戻れって!」
俺は強引に司会を中央に戻す。
審査が始まった。
Aチームは飴細工やチョコレートをふんだんに使用した豪華なデザイン。
Bチームは上のイチゴの飾りに目を引いた。
Cチームは、地味な見た目だった。
俺の所にも同じものが届いたが、Aチームのケーキが一番おいしかった。
「審議が終わりました。結論から言います。優勝はCチームです!」
だがAチームとBチームは納得できない様子だった。
「俺たちのケーキの方が旨いに決まってる!」
「あんな地味なケーキには負けない!」
「お静かにお願いします!ルナ様、続きをどうぞ!」
「確かにAチームのケーキはおいしかったです。味だけで言えば一番でしょう。Cチームの見た目は確かに地味です。ですが今回のテーマを思い出してほしいのです」
皆が一斉に垂れ幕を見た。
・イチゴのショートケーキ
・イチゴの分量を制限
・国民に親しんでもらえる
「Aチームにお聞きします。このケーキの値段はいくらですか?その値段は国民の皆さんに親しんでもらえる値段ですか?」
「そ、それは……」
言葉に詰まり何も言えなくなる。
「Aチームの技量は素晴らしかったです。ですが今回のテーマは国民に親しんでもらえるという物でした。この大会だけでなく普段のケーキ作りでも同じです。私は国民の皆さん全員が普通にお菓子を食べられる国にしたいと思っています。私からのお願いですが、Aチームはそのことを頭に入れて日々のケーキ作りを行ってほしいのです。素晴らしい技量を持った皆さんに期待しています」
Aチームのパティシエは倒れこむように膝をつき、叫びながら両手で地面を何度も叩いた。
「うぉーーーーーー!!!」
悔しさを吐き出すように地面を何度も叩く。
そして立ち上がって涙を流しながら言った。
「ルナ様の言う通りです!私は、もう一度原点に立ち返り、初心を忘れずにケーキを作ります!」
観客の中にはもらい泣きをする者もいた。
「期待しています。さて、Bチームですが、確かにCチームよりきれいな見た目です。ですが、ショートケーキの主役は上に乗ったイチゴですか?」
「そ、それは、違います」
「そうです。主役はケーキです。ショートケーキはスポンジの間にイチゴ。生クリームがはさまりこの3つが口の中で混ざり合う瞬間こそがおいしさの要と言えます。Bチームは間に挟むべきイチゴを飾りに使ったのです。今期はイチゴの収量が少なく、十分なイチゴを確保できませんでした。こういう時でも工夫しておいしいお菓子を作ってほしいのです。もちろんBチームの飾りの方が見た目は良いので最初は売れるでしょう。ですがしばらくするとみんなが気付きます。Cチームのケーキの方がおいしいと。私は皆さんに長く愛されるお菓子を作ってほしいと思っています」
解説長すぎ!そして説明が的確過ぎる!
Bチームは悔しそうに黙り込む。
「Cチームの皆さん、おめでとうございます。今回は皆さんの勝利です!」
「今回のスイーツコロシアムはCチームの優勝です。これにて閉幕とします。皆さんありがとうございました!」
……
何なんだこの勝負。みんなガチじゃないか。
観客席で泣いてる人もいる。
娯楽だと思って参加したけど、思ってたのと違う。
しかし、ルナ、さすがスイーツ姫!
スイーツ道に関しては威厳すら感じる。
俺より1才年下だよな?
威厳が半端ない。
「スイーツ対決の審査員について相談があるようです。なにやら困っているようです。何やらスイーツ界の今後を左右すると大臣が言っていました」
ルナがシュタっと立ち上がる
「すぐに向かいます」
「ベリー!一緒に行かないか?」
「わ、私は行かないわ」
「ベリー殿にもご参加をお願いしたいのです」
「分かりました。みんなで出かけましょう」
ルナはベリーの手を引いて先頭を進むように歩き出す。
ベリー、完全に逃げ切る事は不可能だと知るがいい。
ベリーの顔に影が宿っていたが、逃げるのは無理だろう。
【円卓会議室】
「ご足労いただきありがとうございます。」
大臣が出迎えた。
「ルナのレベルを上げたいっていう連絡は届いているか?」
「届いています。しかし本当に困っているのです。その連絡をいただく前からルナ様参加の前提でスイーツ大会の場所を押さえ、宣伝もして、国費を使ってしまっているのです。入場料を取れなければ大幅な赤字になってしまいます。今後の内政に影響を与える懸念まであります。ルナ様には国の内政とお菓子業界の発展のため是非ともご参加いただきたいのです!」
「おほん、そこまで内政に影響を及ぼすようでしたら、参加しないわけにはいきませんね。それが王女たるわたくしの務めでもありますわ。それで今回のテーマは決まってるのですか?」
ルナはスイーツ大会に興味深々だった。
「まだ決まっておりません」
「俺は帰る」
「お待ちください!ウイン殿とベリー殿にも審査員や主催としてご協力をお願いしたいのです。ぜひ一緒にご参加を!」
「分かった」
「……わかったわ」
ベリーは嫌そうな顔をしていた。人前に出るの嫌がるもんな。
「今回のテーマについて、ルナ様から何かありませんか?」
「やりつくした感がありますね。ベリーの好きなお菓子は何ですか?」
「イチゴのショートケーキね」
ルナはふむふむと頷いた。
「今回はイチゴのショートケーキ対決にしましょう。今期はイチゴの収量が少ないので、イチゴを使う分量に制限を設け、さらに国民のみんなに親しんでもらえると言うテーマも盛り込みましょう」
「なるほど、分かりました。大会日は15日後の午前10時、コロシアムで行います。前日までには王都にお戻りください。今日はご足労ありがとうございました」
俺たちは余った時間に魔物狩りをしてスイーツ大会の当日を迎えた。
当日コロシアムに着くとベリーが固まる。
「人多くね?」
コロシアム内部には1万人の観客が動員され、垂れ幕には目を引くようなキャッチフレーズがずらっと並んでいた。
色々おかしい。
この国の人口は10万人だよな?
今はそれより少し少ないかもしれない。
国民の1割が集まって来るのか!
ベリーとルナはコロシアムの中心に座る。
客寄せか。
ルナは人気があるし、ベリーは歩いているだけで多くの者が振り返る美人だ。
よく考えると、ベリー後援会の事もあるからベリーを表に出すのは良くないんじゃないか?
俺とホープ大臣は観覧席の個室部屋にいた。
「大臣、ベリーを表に出すとベリー後援会に場所がバレて狂信的なベリーファンが押し寄せてくるかもしれない」
「問題ありません。この国からデイブックに行く者は居ないのです。そして新聞記事もチェックして情報が漏れないよう気を配っております。バレるとしたらスパイですが、現状デイブックの周りに魔物が多くなりここに来ることは今困難でしょう」
確かにデイブックは最近不況だ。
魔物被害や老人の多さもあるが問題の根本は違う。
1番の問題は寛容さに欠ける国民性だろう。
金持ちの成功者を叩き、新しい事をする者を叩き、制度の改正をしようとすると叩き、少しでも問題があるとただ叩いて人や産業を潰す。
デイブック南部の被害で前から高かった税金がさらに高くなった。
デイブックはマスコミの動きも特殊だ。
この国の国民もそれは分かっているだろう。
ディアブロ王国とアーサー王国はデイブック近辺の住民を移住させ、デイブックに行くのも来るのも大変になっている、か。
コロシアムの中心にはルナ・アーサー王。ベリーが審査員として座り、魔道オーブンなどの料理機器も運び込まれていた。
「静粛にお願いします!これより、スイーツコロシアムを開催します!」
美人のお姉さんが司会をするが、何故かバニーガールの格好をしている。
大歓声が鳴り響いた。
「司会は私クロノが務めさせていただきます。そして今回の審査員は」
進行は順調に進み、今回のテーマが発表された。
テーマは
・イチゴのショートケーキ
・イチゴの分量を制限
・国民に親しんでもらえる
と、発表されるたびにテーマを書いた大きな垂れ幕が降ろされた。
演出にこだわりを感じた。
「戦いを始める前に、三大スイーツ店からルナ様に謝罪があります」
3人の男性が前に出る。
月のお姫様ケーキ・ムーンプリンセスプリン・スイーツ姫のタルト
をこれ見よがしに見せびらかすように前に出た。
「ルナ様を模したスイーツを無断で販売し。誠に申し訳ありませんでした」
そういって頭を下げ、ルナに謝罪の為お菓子を渡した。
そう、ばれたのだ。
結局ルナに隠ぺいがバレてこの場でオープンにする方針に決まった。
ルナの斥候レベルが上がり、気配を消したまま三大スイーツ店に入る事ですぐにばれた。
ルナは王都に帰ると絶対にスイーツ店に入る。
時間の問題でバレる定めだったのだ。
ルナは渡された月のお姫様ケーキ・ムーンプリンセスプリン・スイーツ姫のタルトを渋い顔で見た。
「まったく!、いけませんよ!いくら商品が売れるからって、勝手にルナ様の許可なくこういう物を販売するのはいけません!」
司会がかなり大げさに話す。これも演出だな。
観客から笑い声がどっと起こった。
「ルナ様は許してくださるでしょうか?コメントをお願いします」
「ゆ、許します」
あの状況じゃ許すって言うしかないよな。
「次は、王家にきっちり相談してくださいよ!」
3人の男はまた深く謝罪をした。
「それではスイーツコロシアム、スタートです!」
三大スイーツ店のパティシエがショートケーキを作り始めた。
さっき謝罪していたスイーツが売り子によって売られていた。
宣伝うますぎるだろ!司会も商品を売ることをさりげなく観客に伝えた。
ホープ大臣はその様子を見てにやりと笑ってる。
策士か。
計算通りって顔してるな。
クロノは審査員全員にコメントを求めたが、ルナの話だけは長かった。
「今回AチームからCチームに分かれて三大スイーツ店の戦いが始まりますが、私が今回注目しているのは元パン屋からスイーツ業界に進出した、Ⅽチームのパン・デ・ケーキ店です。最も規模が小さく、経営体力はありませんが、最近一気に評判を上げています。こういう新星には目を光らせていきたい所です」
まだ続くのか、ルナのコメントが長い。
クロノは客席にもコメントを求めると、今度はこっちに向かってきた。
来るなよ!来るなよ!こっちじゃないよな!
こっちに来た!
クロノは室内に入ると俺の所に最短距離で歩いてきた。
「今後の大会について一言お願いします」
「今回この大会を開くことが出来たのはルナと大臣、後は裏方の功績が大きいからそういう人の話が聞きたいな」
「なるほど、ウインさんはどんなお菓子が好きですか?」
こいつ、あっちに行けアピールを無視したぞ!分かっててわざと無視してるな!
「お菓子なら何でも食べる。大臣の話は聞かないのか?」
「分かりました。大臣、お話をお聞かせください」
「私はあくまで裏方、どうぞウイン殿とお話を続けてください」
「大臣!ありがとうございます!ウインさん、今後の方針として国内の魔物狩りを優先するとのことですが、その心をお聞かせください?」
「ん?どっから仕入れたんだ?ほとんど話してないはずだぞ?」
魔の森の魔物が居なくなってきたから国内の魔物を狩る予定だった。
「私の本業はマスコミです。情報は集めますよ。それで、その心は?」
「ルナのレベル上げだ」
「なるほど、目先の利益よりも国の長期的な発展を見ていると、今日のパンではなくもっと先の未来の展望を見渡していると、そういう解釈でよろしいですか?」
「そこまで言ってないけどな!」
俺ととクロノの話は魔道マイクで拡散され、観客は笑っていた。
「おい!お菓子作りが終わるぞ!クッキングの実況してないよな?」
「クッキングなんて飾りです!要は食べた時の評価が大事なんですよ!」
「ここでクッキングすることを全否定する発言だぞ!良くない!そういう発言はだめだわ!後早く戻れって!」
俺は強引に司会を中央に戻す。
審査が始まった。
Aチームは飴細工やチョコレートをふんだんに使用した豪華なデザイン。
Bチームは上のイチゴの飾りに目を引いた。
Cチームは、地味な見た目だった。
俺の所にも同じものが届いたが、Aチームのケーキが一番おいしかった。
「審議が終わりました。結論から言います。優勝はCチームです!」
だがAチームとBチームは納得できない様子だった。
「俺たちのケーキの方が旨いに決まってる!」
「あんな地味なケーキには負けない!」
「お静かにお願いします!ルナ様、続きをどうぞ!」
「確かにAチームのケーキはおいしかったです。味だけで言えば一番でしょう。Cチームの見た目は確かに地味です。ですが今回のテーマを思い出してほしいのです」
皆が一斉に垂れ幕を見た。
・イチゴのショートケーキ
・イチゴの分量を制限
・国民に親しんでもらえる
「Aチームにお聞きします。このケーキの値段はいくらですか?その値段は国民の皆さんに親しんでもらえる値段ですか?」
「そ、それは……」
言葉に詰まり何も言えなくなる。
「Aチームの技量は素晴らしかったです。ですが今回のテーマは国民に親しんでもらえるという物でした。この大会だけでなく普段のケーキ作りでも同じです。私は国民の皆さん全員が普通にお菓子を食べられる国にしたいと思っています。私からのお願いですが、Aチームはそのことを頭に入れて日々のケーキ作りを行ってほしいのです。素晴らしい技量を持った皆さんに期待しています」
Aチームのパティシエは倒れこむように膝をつき、叫びながら両手で地面を何度も叩いた。
「うぉーーーーーー!!!」
悔しさを吐き出すように地面を何度も叩く。
そして立ち上がって涙を流しながら言った。
「ルナ様の言う通りです!私は、もう一度原点に立ち返り、初心を忘れずにケーキを作ります!」
観客の中にはもらい泣きをする者もいた。
「期待しています。さて、Bチームですが、確かにCチームよりきれいな見た目です。ですが、ショートケーキの主役は上に乗ったイチゴですか?」
「そ、それは、違います」
「そうです。主役はケーキです。ショートケーキはスポンジの間にイチゴ。生クリームがはさまりこの3つが口の中で混ざり合う瞬間こそがおいしさの要と言えます。Bチームは間に挟むべきイチゴを飾りに使ったのです。今期はイチゴの収量が少なく、十分なイチゴを確保できませんでした。こういう時でも工夫しておいしいお菓子を作ってほしいのです。もちろんBチームの飾りの方が見た目は良いので最初は売れるでしょう。ですがしばらくするとみんなが気付きます。Cチームのケーキの方がおいしいと。私は皆さんに長く愛されるお菓子を作ってほしいと思っています」
解説長すぎ!そして説明が的確過ぎる!
Bチームは悔しそうに黙り込む。
「Cチームの皆さん、おめでとうございます。今回は皆さんの勝利です!」
「今回のスイーツコロシアムはCチームの優勝です。これにて閉幕とします。皆さんありがとうございました!」
……
何なんだこの勝負。みんなガチじゃないか。
観客席で泣いてる人もいる。
娯楽だと思って参加したけど、思ってたのと違う。
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