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第35話 昇格試験2

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 訓練場に向かうとカカシが立っていた。

 カカシは1本脚、というよりホッピングするサスペンション付きの棒がついた手抜きゴーレムだ。
 カカシは同じ品質で作られ全国に配られている。
 こうする事で全国でムラの無いランクアップ試験を受けられるようになっている。
 右手には刃を潰した剣を持ち、左手には杖を持っている。
 腕には銃がつけられており、ファイター・ウィザード・ガンナーすべてを再現できる。

「武器は何にしますか?」

 刃を潰し、金属で出来た様々な近接武器、デチューンした杖、リミッターを取り付けたハンドガンから選べる。
 ステータスを開いた。



 ユウヤ 男
 ジョブ ????
 レベル ????
 体力  ????
 魔力  ????
 速力  ????
 スキル:『生活魔法』『バリア魔法』『剣術』『剛力』『疾風』『魔力循環』


 俺はファイターなのか?ウイザードなのか?
 バリア魔法はウイザードの能力だけど、剣術・剛力・疾風はファイターのスキルだ。
 どっちでもいい。
 ファイターにしておくか。

 俺は剣を手に取った。
 素手の方が戦いやすいんだけどな。

「これにします」

「カカシの胸に表示された点数が100からゼロになるまで攻撃を当てる事が出来ればEランクファイターに昇格出来ます」

 何度も同じ説明を受けて落ち続けた。
 でも、今なら行けると思う。

「仙道、見物客が集まって来た!緊張せずいつも通りに戦えば余裕だ」

 大河さんが俺を励ます。
 だが見物客はユキナとあかり、そしてきゅうを見ている。

「いや、俺じゃなくてあかりとユキナを見に来てるんですよ」

 あかりも目立つが、雪女のような見た目をしたユキナは特に目立つ。

「あのー、初めていいですか?」
「大丈夫です」
「試験開始!」

「2人の彼女が見ているんだ!頑張れよ!」
「それを言ったら駄目ですよ!みんなを敵に回します!」
「仙道さん!カカシが行きましたよ!」

 カカシがサスペンションのついた棒を伸縮させながらジャンプして迫って来る。
 俺は剣ではなく、拳でカカシを殴ってしまった。

「あ!」

 ドッコーン!

 カカシが吹き飛んで地面に落下し、轟音を鳴らす。
 手加減をせず、普通に殴ってしまった。

「……」
「……」

「ご、合格です。仙道さん、今度は手加減をしてDランクの昇格試験を受けましょう」
「や、やめておきます」
「でも、カカシはDランク試験までしか使用しません。Cランク以上の方が戦えばカカシを破壊してしまうからです。Cランク、いえ、Bランクを目指せますよ!」

「やめておきます。カカシが整備不良で壊れました。僕が壊してしまったみたいになって気まずいです」
「整備不良!え?仙道さんが殴り飛ばしましたよね?」
「は、はははははは、まさかあ。あ、弁償ですか?」

「それは大丈夫です。仙道さんの力をもっと見たいです」
「次の機会にしますね」

「やるやる詐欺ですか?」
「買い物があるんです」
「買い物なんてどうでもいいですよ!」
「いえ、早く買い物を終わらせて帰らないと!」

「え?え?急に急いでいる感じを出しても駄目ですよ」
「駄目とかそういうのは無いでしょう」

 受付嬢が俺の前に来た。
 そして満面の笑みを浮かべた。
 距離が近い。

「仙道さん、私の目を見てください」
「美人のお姉さんに見つめられると緊張します」
「仙道さん、目を逸らさないでください。私は仙道さんの本当の力が知りたいんです」

「この角度だと丁度胸元が見えてしまいます」
「せ・ん・ど・う・さん!ごまかしは駄目ですよ。目を見てください」
「あの、胸が当たってます」
「ごまかしは駄目ですよ」

「周りの男性冒険者に嫉妬されてしまいます。本当に!」
「仙道さん、力を隠したままだと、更に背びれと尾びれがついた噂が流れますよ?Dランク、受けてくれますね?」

「買い物が」
「仙道さん、受けましょう」
「仙道、受けとけ!」
「お兄ちゃん!受けようよ!」

「ユウヤ、受けましょう。でも、Dランクまでで終わりでいいわよね?」
「はい、それ以上は強要しません」
 
 ユキナが機転を利かせてくれた。

 外野から声が上がる。

「受けろって!」
「全部さらけ出しちまえよ!」
「俺達の受付嬢にくっ付くなよ!」

 俺は圧力に屈した。

「Dランクファイターへの昇格試験、開始です!」

 カカシの胸には100の文字が浮かび上がっている。
 攻撃を当ててゼロに出来れば昇格試験は合格だ。

 俺は苦戦する感じで時間を掛けて戦う。



 カカシのポイントをゼロにした。

「はあ、はあ、何とか、倒せ、ました」
「合格です。仙道さん、嘘っぽい動きでしたよ」
「嘘っぽいって何ですか!」

「ぷくっくくくく」
「大河さんまで笑ってる!」
「すまん、くく、くっくっくっく、嘘っぽかった」

 みんなが笑う。

「仙道さん、Dランクファイター合格です。おめでとうございます」

 魔道スマホをタップして冒険者ランクを表示させると、Dランクファイターと表示される。
 魔道スマホにマイナンバーも冒険者資格も免許も保険証の機能もパスポートも全部ついているのだ。
 
 ランクが上がると性能のいい武具を優先的に売って貰えるなどの得点はある。
 でも、剣はバリア魔法で出せるし、杖は使うと逆にやりにくかったし、銃を使ってもガンナーの能力がないため遠くまで飛ばないからショットを使っている方がマシだ。

 防具はユキナに余裕が出来たら作って貰える事になっている。
 メリットは、モンスターを多めに納品しても怪しまれなくなる事くらいだ。

「仙道さん、Cランクへの昇格」
「受けませんよ!帰ります!」

 俺はギルドを出た。



【大河視点】

 受付嬢の機嫌がいい。

「楽しそうだったな」
「楽しかったですよ。仙道さんと話していると楽しいです」

 受付嬢と仙道は相性が良いのかもしれない。

「ですが、もうすぐみんなとはお別れです」
「ん?」
「B市に移住しますから」

「ここよりB市の方が評判が良い。俺も移住を考えている」
「そうなんですよ。B市の評判がいいんです」

「仙道の亜人支援が終わったら、仙道に声をかけてみよう。仙道なら引っ越すかもしれない」
「ぜひぜひ、所で大河さんは、すぐに移住しないのですか?」

「色々調べ物を頼まれててな。用事が済んだら引っ越す」
「それって深く聞かない方がいい感じですよね?」
「そうだな……ただ、1つ言える事は、移住するなら早めの方がいいだろう。ここの治安は良くない」

「早めに動きます。ありがとうございました」
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